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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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戦闘用義足作り

おはようございます。

毎週更新、継続中です。

 夕暮れが近くなると、俺は鍛冶屋で義足の板バネを加工し、いくつかの部品を作ってから義足を組み立てた。

 軽硬合金フラウレグムと革も使い、膝や太股と繋ぐ覆い(カバー)部分と、足首と足先の──一番の改良点──部分の構造をもう一度考えてみる。


 足首の内部構造は錬金加工した金属で囲み、足先と繋がる重りとの均衡バランスを計る。

 この金属部分は錬金鍛冶で術式を組み込んだ物だ。

 術式に組み込む数値を変更し、足の傾きに合わせて足首の角度が変わるのを確かめる。

 そうしてある程度の形が完成した。足先の板バネ部分は、今までの運動選手アスリート用の義足を想起させる物とは違い、短くて幅広の物になった。

 言わば靴の部分が板バネになった形である。

 板バネの先は広がっており、外側にいくほど軟らかくなっている。地面と接地する面を大きくし、さらに滑り止めも猫の肉球から示唆ヒントを得た、円形の柔らかなゴム質の物を三つ、その周りに小さな滑り止めをいくつもくっつけた。


 円形の物にも小さな滑り止めにも、目に見えないほど細かな突起が付けてあり、それが滑るのを防止する。

 しかもこの突起。実は再生するのである。

 再生する事で、摩耗まもうする滑り止めが交換せずに長期間使い続けられる訳だ。


 ゴムに設定した術式の中に植物細胞の様な、傷ついた部分を自動修復する設計を盛り込んでいるのだ。

 これは混沌こんとん結晶の研究などで得た、反発力から別の活動力エネルギーを得るような、奇妙な働きについて模倣したもので、一度組み込んだ術式の効果はかなりの期間──推定では三年前後──保つと考えている。


 これからはゴム製品にはこの修復能力を付けるといいかもしれない。──さっそく管理局に報告書を書こう──

 元々ガゥレン樹液という植物由来の物から作られたので、この術式が万全の効果を発揮したのだった。


 さらにこの戦闘用の板バネには骨から作った爪も取り付けた。

 まるで獣の爪の様に地面に突き刺し、前に踏み出す時にしっかりと地面を蹴れるはずだ。

 それほど大きな爪ではないので、攻撃には使えないが。




「あの、そろそろ鍛冶屋を閉めますが」

 そう言って来たのはケベル。

 どうやらもう夕方を過ぎてしまったようだ。

 義足が形になった時にはかなりの時間が経過してしまっていた。


「もうそんな時間か」

 俺は新しい戦闘用義足を履いてみた。

 膝下を覆う革と金属の部分に違和感は無く、すぐに立ち上がる事が出来た。

 足首の辺りも違和感は無い。──試しに足を広げてみると、横にも後ろにも、以前の物よりもしっかりと床を足が踏み締め、腰や上体にも負荷があまり掛からない。

 太股から足先まで、感覚は無くても不安無く足を動かせると感じた。


「完成ですか?」

「うん。悪くない感じだ。重さも前の物より軽いくらいだし、何より自由に足を引いたり、低い姿勢を取れる」

 足首から先の小さな板バネ部分が可動して地面を踏むのを、感心した様子で見守るケベル。

「体重を掛けても滑らなさそうですね。濡れた地面の上でも平気なら、きっとどこでも使える物になるんじゃないでしょうか」

「だな」

 俺は得意になって、その新たな義足を履いて宿舎に戻る事にした。


 足音も静かで、まるで猫の様だ。

 むしろ左足の音だけ聞こえるので妙な足音だった。間が空いて聞こえるのだ。


 混沌結晶から得た知識をこんな形で利用できる事に驚きつつ、まださらに混沌を研究する事で、別の活動力の利用法を考え出せるような気がしていた。

 危険かもしれないが、混沌の研究はまだまだ続ける必要がありそうだ。




 宿舎に戻ると薄暗い中、庭で誰かが訓練を続けていた。──エウラが一人で金属の剣を振るっている。

「もう飯時だぞ」

 彼女が斬破を使った後で声を掛けると、ふう、と一呼吸おいて「はい」と答えた。

 彼女もまだまだ剣気の扱いに慣れていないのだろう、加減を知るのに必死のようだ。


 爆発的な力を剣から放つか、それとも切れ味鋭い斬撃として繰り出すか。

 そうした気の練り方を学ぶのは割と大変だった記憶がある。──特に最初の頃は、その扱いに集中しながら行動するので、戦闘の度に疲弊ひへいしてしまいそうになる。


「体に覚えさせるようなやり方でいいと思うぞ。いつかは自然と扱えるようになるものだ」

「皆さんそうおっしゃいますけどね」

「あのリトキスでさえ、最近やっと破砕撃を使えるようになったと言っていただろ? そういうもんなんだ。使い手によって得手不得手ががあるんだよ」


 普通に剣を振っただけでは斬破は撃てない。──当然だが。

 武器を振った先に何を飛ばすか。

 そこに加える気の力──流れが、その人の個性と直結しているのかもしれない。

 自分が「扇爪斬破」などを使うと、ほぼほぼ斬撃だけでなく、破砕するような力も加わり、「斬る」よりも「引きちぎる」ような結果になってしまう。


「エウラは切り裂くような斬撃が得意だから、きっとレオシェルドのような、正確な斬撃による一点突破のような戦い方が向いていると思うぞ」


 群れなす敵を相手にした時も、一体一体を正確な攻撃で、しかも一撃で倒していく戦闘姿勢(スタイル)

 それはたぶんエウラの戦い方にも合っているはずだ。


「レオシェルドさんのようにですか。──そうですね、あんな風に一撃で敵を倒せるような剣士になりたいです」

 俺はうなずきつつ、食事を取ろうと言って、一人で宿舎へと戻って行った。

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