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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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メイとフレジアの戦闘訓練

毎週更新が厳しくなりそう……

小柄な二人の少女の闘いの結末は──

 宿舎の庭──訓練場に戻って来ると、メイとフレジアの二人が激しい闘いを繰り広げていた。

 手斧型の棍棒こんぼうを双方の手に持つフレジアと、革の手袋をしたメイの闘い。メイは腕に革の籠手を付けている。


 二本の斧型棍棒を振り回すフレジアの猛攻を、足捌あしさばきによる身のこなしだけで回避するメイ。

 少女達の闘いを見守る周囲の冒険者達は息を飲み、凄まじい闘いの行く末を見ている。

 メイが的確な反撃を返すと、フレジアはそれを読んでいて、肘打ちをメイに返したりする。──彼女も接近戦にいて、姉譲りの戦闘能力を発揮しているようだ。


「おいおい、大丈夫なんだろうな」

 俺は近くに居たユナに声を掛けた。

「ええ……たぶん。いつもの事なので」

「まじか」

 あまりの激しい闘い振りに、喧嘩けんかをしているのではと思い違いしてしまう。

 だが、二人からは殺気は感じない。

 あくまで訓練なのだ。



「やあっ!」

 フレジアが下から斬り上げるような攻撃を繰り出し、それをかわしたメイに向かってさらに体を回転させて、もう一方の斧型棍棒で追撃する。

 ぐるぐると体を回転させ、上半身で軌道を変えながらの連続攻撃でメイを追い詰めるフレジア。

 少女の乱暴な攻撃は、いつもおどおどしている彼女からは考えられないほど大胆な、反撃を怖れない──まるで北欧神話の狂戦士ベルセルクの様に、戦いとなれば死をいとわずに戦うつわものの様だ。


 ……こちらの世界にはベルセルクに類する言葉は無いと思うが、フレジアには狂戦士の事は言わないでおこう。──泣いてしまうかもしれないからな。



 フレジアの攻撃を避けるだけだったメイは後方に下がるどころか、フレジアの素早い回転に合わせて前に踏み込み、回転する彼女の腕を抱え込むと、その勢いを利用してフレジアの体を宙に浮かせる。


「──だめだッ!」


 強引な一本背負いの様な格好になり、フレジアが地面に叩きつけられると思った俺は、二人の間に飛び込もうとする勢いで前に出た。


 ……ところが、メイはフレジアの腕を引いて勢いを殺し、地面に少女の体を置くような優しさで着地させたのだ。

「……おどかすなよ」

 溜め息を吐いた俺を見て、メイが首を傾げる。

「どうしたの? 団長……」

 さも当たり前のように言うが、彼女ならあのまま地面に叩きつけるのではないかと考えたのだ

──俺相手なら、彼女はそれくらいやりかねない。


 回転の勢いを利用して投げられ、遠心力が加わった状態で地面に叩きつけられたら、下手をすると骨折するかもしれなかった。まして、頭から落ちでもしたら──そう考えると肝が冷える。


「二人とも、ちょっときなさい」

 俺は二人を呼びつけた。

「いいか? 訓練でも真剣にやるのはいい事だ。けどな、ちゃんと相手と自分の力量を計った上でだな……」

「わかってるよ?」

 メイはあっさりと答え、フレジアは俺の剣幕に怯えながらも、頭を何度も縦に振って同意している。──メイの後ろに隠れながら。

「分かっているならいい。ともかくだ……あまり、その──ひやひやさせるな」

「?」

 メイは「何が?」と言いたそうな顔をして小首をかしげた。少女達は顔を見合わせている。



「それより、今日はわたしの勝ちだったよね。団長も見てたでしょ?」

「ああ……そうだな」

「団長はわたしとフレジア、どっちが強いと思った?」

「ええ? ──そう言われてもなぁ。俺はフレジアの戦うところを見るのは二回くらいしかないし」

 ()()()()()()()()()()()。そうつぶやくと、メイはにっこりと微笑む。


了解アティー。じゃ、闘ってみようか」

「は?」

 俺の返事も聞かずにメイは周囲で見ていた仲間に声を掛け、木剣と革の盾を受け取った。

「団長もフレジアの実力が知りたいよね?」

「それはそうなんだが」

 フレジアはまだおどおどしているが、俺との戦闘訓練には興味があるらしい。

「よ、よろしくお願いします……」

 そう言われてしまった。


 俺は引くに引けない状況になってしまい、メイから木剣だけを受け取った。

 念の為に革鎧と革の籠手も身に着ける。

「盾はいらない?」

「まあ、盾があった方が攻撃を防げるが、……ちょっと考えてる事があってな」

 メイは俺の返答を聞くと盾を持ったまま下がって行く。


 盾で手斧の攻撃を防いでも二本の手斧が相手となると、交互に攻撃を受ける事になり、反撃もままならなくなりそうだ。

 フレジアの戦闘技術を見極め、それを踏まえてさらに彼女が強くなれる可能性を引き出せれば。そんな風に考えつつ、俺は広場の真ん中で少女と対峙する。


「よし──じゃ、始めるか」

「よろしくお願いします」

 フレジアはぺこりと頭を下げたのだった。

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