新たな客層
疲労からぶっ倒れてしまったオーディスワイアについて、仲間が話してくれる。
気づけば翌朝になっていた。
昨日、夕食を食べたあたりはなんとなく覚えているが、いつ眠ったのか分からなかった。気を失ってしまったらしい。
朝食を食べていると、昨日の事をリトキスが説明してくれた。
「昨日? 覚えていないんですか?
夕食後にお風呂に入って、それから階段横の猫達の居る場所で、うつ伏せになって眠っていたんですよ」
「一瞬、死んでいるのかと思いました」
そう言いながらカムイが「ぷっ」と吹き出す。
「おい、なんだその笑いは。死んでいればよかったとでも言うのか」
「いやいや、そうじゃなくて。──うつ伏せに倒れていた姿があまりにも間抜けで……、しかも背中に子猫達が乗っかってて……」
そこでまた笑い出すカムイ。
釣られてリトキスやユナまで笑い出す。
「けど、子猫達に乗られて楽しそうだった」
そう呟いたのはメイ。
俺の背中に三匹の子猫が乗って、体を丸めて集まっていたらしい。
「俺の体温で暖まろうとしていたのだろう」
メイは寂しそうにしている。猫などの小動物に愛されない彼女には体験できない事なのだ。
朝食を食べ終えて鍛冶屋まで出向くと、ケベルから昨日来た客について説明された。
「新しく、鎧を造って欲しいという人が昨日来ました。なんでもラティフィスという人から聞いたらしく、昇華錬成をした鍛冶師に作製を頼みたい、という事でした」
ラティフィスが誰だったかを思い出すのに時間が掛かったが、昇華錬成をした客という事でなんとなく思い出す。
「しかし──昇華錬成など狙って出来るものではない、と説明したか?」
「ええ」
ケベルは偶然の産物だと説明したのだが、何度も昇華錬成を成功させた錬金鍛冶師として、ゲーシオンでは有名になっていると言うのだ。
「うぇえ……面倒な事にならなければいいんだが」
「仕事が増えるのはいい事だったんじゃないんですか?」そう言ったのはサリエ。
俺は物事には限度があると言って、作製を希望する内容が書かれた紙を見る。
素材は持ち込むと書かれており、そこに記された素材を見ると、どうやらなかなかの熟達した冒険者のようだ。
「ゲーシオンか……そろそろ別の都市にも、旅団の拠点を作るべきかな」
カムイが遠征に行きたいと言っていた。拠点があると道具や装備を置いておけるし、入手した素材を集めて置けるので便利なのだ。──何より拠点があれば、いつでも遠征に行けるようになる。
拠点を各都市に持つ旅団など、よほど大所帯のところしかないだろう。
新たに新人を迎え入れ、このままさらに旅団を拡大していくとなれば、今からでも拠点の準備を始めた方がいいかもしれない。
だがまずは、俺が出来る錬成強化の仕事に取り組み、その後に宿舎に戻って訓練をしようと考える。
そうしていくつかの作業に取り組んだが、まだ鍛冶作業は行えない。あくまで錬成台を使っての強化錬成だけを行った。
強化錬成の結果を鑑定魔法で数値化し、それを図表に書き込む。
最近めきめきと腕を上げている二人の徒弟。
彼らの強化錬成の結果を見ると、俺の行う錬成と大した差は出ていない。
俺が教えた理論を実践し、それが結果として図表に表れていた。
「もう錬成に関しては一人前だな」
俺は図表を前にそう呟いたが、徒弟達のさらなる成長を願い、新たな試験を用意する事にし、難易度の高い強化錬成に取り組むよう指示書を残して宿舎に戻る。
その道中、何やら見覚えのある人物を見かけた。
宿舎の門の前で立ち尽くす三人の後ろ姿。
その頭からは猫の耳が生えている。
小柄な二人の格好は神殿の関係者であるようだ。──その衣服はフォロスハートの物ではなく、パールラクーンの神殿。つまり中央神殿アーカムから来た、女神アヴロラに仕える神殿関係者であり、その二人の間に立っているのは……
「お、ナンティルじゃないか。久し振りだな」
「ゥんニャァアァァァッ⁉」
俺が後ろから声を掛けると、猫獣人のナンティルが大きな悲鳴を上げて跳び上がった。
オーディスワイアが目覚めてから初めてナンティルと再会する。
次話はその再会話が中心です。




