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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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新たな客層

疲労からぶっ倒れてしまったオーディスワイアについて、仲間が話してくれる。

 気づけば翌朝になっていた。

 昨日、夕食を食べたあたりはなんとなく覚えているが、いつ眠ったのか分からなかった。気を失ってしまったらしい。


 朝食を食べていると、昨日の事をリトキスが説明してくれた。

「昨日? 覚えていないんですか?

 夕食後にお風呂に入って、それから階段横の猫達の居る場所で、うつ伏せになって眠っていたんですよ」

「一瞬、死んでいるのかと思いました」

 そう言いながらカムイが「ぷっ」と吹き出す。


「おい、なんだその笑いは。死んでいればよかったとでも言うのか」

「いやいや、そうじゃなくて。──うつ伏せに倒れていた姿があまりにも間抜けで……、しかも背中に子猫達が乗っかってて……」

 そこでまた笑い出すカムイ。

 釣られてリトキスやユナまで笑い出す。

「けど、子猫達に乗られて楽しそうだった」

 そうつぶやいたのはメイ。

 俺の背中に三匹の子猫が乗って、体を丸めて集まっていたらしい。

「俺の体温で暖まろうとしていたのだろう」

 メイは寂しそうにしている。猫などの小動物に愛されない彼女には体験できない事なのだ。




 朝食を食べ終えて鍛冶屋まで出向くと、ケベルから昨日来た客について説明された。

「新しく、鎧を造って欲しいという人が昨日来ました。なんでもラティフィスという人から聞いたらしく、昇華錬成をした鍛冶師に作製を頼みたい、という事でした」

 ラティフィスが誰だったかを思い出すのに時間が掛かったが、昇華錬成をした客という事でなんとなく思い出す。


「しかし──昇華錬成など狙って出来るものではない、と説明したか?」

「ええ」

 ケベルは偶然の産物だと説明したのだが、何度も昇華錬成を成功させた錬金鍛冶師として、ゲーシオンでは有名になっていると言うのだ。

「うぇえ……面倒な事にならなければいいんだが」

「仕事が増えるのはいい事だったんじゃないんですか?」そう言ったのはサリエ。

 俺は物事には限度があると言って、作製を希望する内容が書かれた紙を見る。

 素材は持ち込むと書かれており、そこに記された素材を見ると、どうやらなかなかの熟達した(ベテラン)冒険者のようだ。


「ゲーシオンか……そろそろ別の都市にも、旅団の拠点を作るべきかな」

 カムイが遠征に行きたいと言っていた。拠点があると道具や装備を置いておけるし、入手した素材を集めて置けるので便利なのだ。──何より拠点があれば、いつでも遠征に行けるようになる。

 拠点を各都市に持つ旅団など、よほど大所帯のところしかないだろう。

 新たに新人を迎え入れ、このままさらに旅団を拡大していくとなれば、今からでも拠点の準備を始めた方がいいかもしれない。


 だがまずは、俺が出来る錬成強化の仕事に取り組み、その後に宿舎に戻って訓練をしようと考える。

 そうしていくつかの作業に取り組んだが、まだ鍛冶作業は行えない。あくまで錬成台を使っての強化錬成だけをおこなった。

 強化錬成の結果を鑑定魔法で数値化し、それを図表グラフに書き込む。

 最近めきめきと腕を上げている二人の徒弟。

 彼らの強化錬成の結果を見ると、俺の行う錬成と大した差は出ていない。

 俺が教えた理論を実践し、それが結果として図表に表れていた。

「もう錬成に関しては一人前だな」

 俺は図表を前にそう呟いたが、徒弟達のさらなる成長を願い、新たな試験を用意する事にし、難易度の高い強化錬成に取り組むよう指示書を残して宿舎に戻る。




 その道中、何やら見覚えのある人物を見かけた。

 宿舎の門の前で立ち尽くす三人の後ろ姿。

 その頭からは猫の耳が生えている。

 小柄な二人の格好は神殿の関係者であるようだ。──その衣服はフォロスハートの物ではなく、パールラクーンの神殿。つまり中央神殿アーカムから来た、女神アヴロラにつかえる神殿関係者であり、その二人の間に立っているのは……


「お、ナンティルじゃないか。久し振りだな」

「ゥんニャァアァァァッ⁉」

 俺が後ろから声を掛けると、猫獣人フェリエスのナンティルが大きな悲鳴を上げて跳び上がった。

オーディスワイアが目覚めてから初めてナンティルと再会する。

次話はその再会話が中心です。

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