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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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義足を壊した犯人

義足を壊した犯人が居る⁉


実は……という展開。

 自室に戻ると、寝台ベッドそばに置いた軽硬合金フラウレグムの義足を調べる事にした。

「どこが破損したんだ?」

 金属の足首部分が沈み込み、膝を押さえ込む革製の覆い(カバー)部分は問題がなさそうだ。

 長靴状の金属部分を調べる為、義足の中を発光結晶の指輪で照らして覗いて見る。

 すると中にある足と足首部分を支える、革製の紐などが切れているのを見つけた。

 ゴムもよれよれになっている。


「ん────? なんだ、これ……」

 革紐を調べていると、指に何かが付いた。

 義足の奥にあった物を取り出してみると、それは細い糸の様な物だった。

「あん? これは……」

 青みのある白い糸……いや、これは毛だ。

「子猫達だな、犯人は」

 革紐を取り外して調べると、革紐が千切れているのを発見した。そこには明らかにかじられた跡があった。


「んにゃろぅ……俺の義足で遊んでやがったな」

 義足の中に入って遊んでいる子猫達の姿が思い浮かぶ。

 まあ、この金属の義足を止めて、戦闘用義足のような新たな板バネを作るつもりだったから、これもいい機会だと考える事にした。

「猫は狭い場所がほんと好きだな」


 猫か……

 ふと、猫の肉球を思い出す。

 猫はほとんど横に移動したりはしないが、あの足で機敏な動きをする。もしかすると、猫科の獣の足から、新たな義足を作る示唆ヒントが得られるかもしれない。そんな風に考え、部屋を出て階段の方に向かう。


 階段横の空間にはライムや三匹の子猫がそろっていた。

 子猫は俺の顔を見ると近寄って来て、にゃぁにゃぁと鳴き声を上げる。

「おまえかぁ? 俺の義足を壊したのは」

 青毛の混じった白猫を抱き上げると「ゥニャァ~」と、まるで「自分じゃない」と言ったみたいな鳴き声を出す。

 二匹の子猫は俺の右足がいつもと違うというので、警戒しながら匂いを嗅ぎに来る。


「板バネは齧るなよ」

 ぺしぺしと子猫の頭を指先で叩いてやる。

 そうした後で抱えた子猫のあしを触って、肉球や指の感じなどを確認する。

「そうか、指や肉球で地面をしっかりとつかめれば……。足の向きを外側に向けられたら、足を横に広げた時にも対応できるかな」

「ぃニャァ~~」

 足をにぎにぎされているのが嫌だったのか、子猫が不満をにじませた鳴き声で訴える。


「ああ、悪い悪い」

 青毛の子猫を放してやると、二匹の兄妹の所に逃げ込んで行く。

「何をしてるんですか」

 階段から降りて来たエウラにとがめられる。

「いやぁ、新しい義足を作る着想を得ようと思って。動物の足の構造を取り入れた義足なら、普段使いでも戦闘でも、両方に対応した物が作れるかもしれないからな」

 そう弁明すると彼女は「もう夕食の時間ですよ」と言い残し、廊下を歩いて行く。──そのエウラを追い掛けて行く子猫達。

 食事を用意してくれると思っているのだろう。

 すると寝床からゆっくりした動きで起き出したライムが、俺の足にすり寄って来た。


「おう、お前も夕飯か」

「ニャァ」

 欠伸あくびまじりに母猫は返事をし、身体を伸ばして廊下を歩く。

 板バネが床を踏む硬い音を立てながら食堂に向かった。




 夕飯を口にしながら新しい義足について考えていた為、何を口にしたか覚えていない。

 レーチェの妹が実家から持って来たという食材を使った、と言っていた気がする。

 ……そうだ、蜂蜜漬けの牛肉を使った料理だった。肉は軟らかく、独特の甘い風味がある味付けになっていた。

 果物を使った液状調味料ソースとよく合った味付けだ。


「だんちょ──」

 と夕餉ゆうげについて思い出そうとしていると、メイが声を掛けてきた。

「ぉう? なんだ」

「団長。今度わたしと訓練しよう」

「ぇえ……」

 俺は顔には出さなかったが、嫌そうに返してしまった。

 正直この少女との訓練は怖い。

 加減をしてくれない事がままあるからだ。


「ぎ、義足を修理したいから、また今度な……」

 そう言ってなんとか辞退しようと試みる。

 すると少女はへの字口になって不満をあらわにする。

「なんで嫌そうなの」

「メイは手加減を知らないからだよ」

「ええ~、平気だよ。手加減してるもん」

「その加減がなってないんだよ。寸止めしろ、寸止めを」

 小柄な彼女に接近され、フックをもろに脇腹に喰らった事がある。──踏み込んでの一撃で、内臓の位置が変わってしまったかと思えたほどだ。

 それ以外にも何度も、メイには痛い思いをさせられてきた。


「新入り相手にそんな訓練をしていたら、先輩冒険者として嫌われるぞ」

「だから~加減してるってば。団長は……頑丈だから平気でしょ?」

「んな訳あるか! めちゃくちゃ痛いんだぞ!」

 俺はそう叫んで立ち上がると、食堂から逃げるようにして自室に戻って行く。

「あ、逃げたぁ!」

 そうなげくメイの声を背中に受けながら。



 部屋のドアを開けると、足の間をさっと白い物が駆け抜けた。──ライムだった。

「脅かすな。危ないだろ、足下でちょろちょろと」

「ニャゥ──」

 寝台に跳び乗ったライムが不満げな声で鳴き、その場で横になる。

 もう子猫に乳を与える必要もなくなり、子育てから解放されたライムは、だらしなく白いシーツの上に寝転がって欠伸をしている。


「お前の子供に義足を壊されたんだぞ」

 そう文句を言うと、白い母猫は「なんの事だ」と言わんばかりにこちらを見て、尻尾でぺしぺしとシーツを叩き、また欠伸をした。


 義足の部品は作り置きがあるので、それを使ってさっと修理する。

 そうしながらこの普段使い用の義足も、横に足を広げた時に、足が地面を噛むように作れないかと思案する。──要は太股が傾いた時に、地面に接する足の裏が、地面に平行になるような動きをすればいいのだが。

 足先の部分が太股との位置関係で、自動的に可動する仕組みについて考え、もっとも単純で、錬金術の応用で作れそうな物を考えた。

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