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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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野郎達の風呂場会議

「魔剣もありがたいんですが、できれば防具ももらえると……」

ただで貰おうなどとは生意気な。──素材と金を用意しろ。俺は職人なんだぞ」

「それはそうなんですが」

 俺が湯船の中でそう告げると、カムイは湯船のお湯で顔を洗いながら「これからは積極的に上級難度の転移門にも参加したいので」と言って、まるで水を浴びた犬みたいにぶるぶると顔を振って、髪についた水を飛ばす。

 床屋に行っていないのだろう、最近のカムイは髪が伸びていた。


「湯船に髪をつけるなよ」

 俺が文句を口にすると、カムイはそれよりも防具に付ける効果はどんなものがいいのか、と尋ねてくる。

「剣気の威力を上げるような効果を付けたり、あるいは気の回復速度を高めたり──そういった効果がいいな。

 前にメイに作ってやった『飛竜の手袋』に近い性能が、魔剣とも相性がいいだろう」

「ああ、あの──。メイもあの手袋のお陰で、大きな生物とも戦えるって言ってました」

 竜狩りには気軽に参加させる訳にはいかないが、メイの事だから、親友のユナが竜狩りに行きたいと言ったら、まったく躊躇ためらわずに「行く」と言い出すだろう。

 そういえばわに革が倉庫に保管されたという紙を見かけた。あれはもしかするとメイの手柄かもしれない。

「メイの強さは重々承知の上だが、少しあやういな。お前達も注意してやってくれよ」

 カムイとリトキスに言うとそれぞれが返事を返したが、あまり実効性はなさそうだ。


「個人的には胸当てを新調したいんですが」

 カムイは話題を変えてくる。

「胸当てかぁ……なら、ゲーシオンで何か鉱石を手に入れてくるんだな」

 あとは素材次第だ。そんな風につぶやくと、カムイは真剣な表情になって何やら思案を始める。

 向こうで何日過ごすか、そんな事を考えているのだろう。


「まあ、製作費用については一考しよう。だが素材はお前持ちだからな。特に霊晶石とかはすぐに無くなってしまう。できればゲーシオンの『霊山』のある転移門に行って、って来てほしいところだ」

 霊晶石かぁ……と呟くカムイ。

「ミスランの『神座す山脈』なら霊晶石も採掘する可能性は高いし、運良く神結晶が採掘できれば、管理局で高額買い取りしてくれるぞ。

 ゲーシオンなら『ヒゥスカバル霊山』のある『微睡まどろみの山脈』という転移門があるが……」

 そこまで言って、俺は言葉を区切る。


「『微睡の山脈』はまだカムイには危険かもしれませんよ」

 そう言ったのはリトキスだった。


「なんですか? その『微睡の山脈』って」

「ゲーシオンの中でも不可思議な転移門先の事さ。四方を山に囲まれた盆地に転移門があって、そこから山に向かって行くんだけれど……」

「盆地にある森を抜けるのも大変だが、山脈の一つには常に霧が掛かっていて、その山に近づくと、急に眠気に襲われるんだ」

「精神防御とか、睡眠抵抗といった効果を付けた装備品を身に付けていても、どんどん眠くなっていく──そんな、いわくつきの場所でね。

 眠りにいたまま死んでしまった、なんて話もあるくらいで」

「まあそれは誇張された作り話だろうが。──ともかく近寄る事もできないんで、霧のある山は未踏の地になっているんだ。

 その山以外の場所では危険な生物や魔物が出現するし、ゲーシオンにある上級難度の転移門の中でも、謎に満ちた場所ではある」


 ヒゥスカバル霊山は採掘だけでなく、そこに出現する「霊魔」と呼ばれる存在を倒す事でも霊晶石を入手可能で、それを狙った冒険者がよく向かう場所だった。

「霊魔は通常の武器では損害ダメージを与えられず、それでいながら並の攻撃魔法では強力な魔法抵抗にはばまれる難敵だ。

 武器に『対霊体攻撃特化』などの効果を付与しないと厳しい相手でな」

「そういえば」とリトキスが俺の言葉を引き継ぐ。


「霊魔に対して魔法の剣が通用するか確かめていませんね。今度僕もゲーシオンに行こうかな」

「ああ、そうか。魔法剣による攻撃ならもしかすると、霊魔の魔法抵抗をある程度無力化できるかもしれないな。……とはいえ、やはり『対霊体攻撃特化』の武器を用意していくといいだろう」

「霊体の敵なら『斬破』などの剣気を利用した攻撃でも、効果があるんじゃないんですか?」

 カムイの疑問にリトキスが答える。

「もちろん他の霊体の敵なら剣気の技でも十分に渡り合えるけど、霊魔が相手となると厳しいかもしれない。──というのも、剣気の攻撃に対しても抵抗してくるからだ」

「霊魔は死霊の様な存在とは違い、霊的な魔物、みたいなものらしいからな。生命力に似た力も持ち、それゆえに気の力にも抵抗してくるらしい」


 死者の霊とか、そういったものとは違う存在なので、通常なら効く剣気による攻撃も、霊魔にはその効果がにぶる。

 強力な敵という訳ではないが、攻撃の手段が限定される為に、厄介な相手として有名だった。


「対霊体攻撃特化ですか、そうした武器も必要なんですね」

「霊的な存在の多くは魔法抵抗も強かったりするからな。霊魔は中でも、魔法の『霊撃の光刃』を使用しても抵抗されるし。

 アディーと冒険していた頃は、あいつの強力な魔法で薙ぎ払っていたからなぁ。思えばそうした敵に遭遇すると、アディーの火力を頼っていた時期があったな」

 対霊体攻撃の効果を持たない武器しか所持していなかった頃だ。


「いずれにしても剣気による攻撃はある程度は有効だから、新入り達にも身につけさせるべきだな」

「そうですねぇ──けど、今度入った三人に関しては、たぶん問題ないと思いますよ」

 リトキスが言うには、レオシェルドのおすみ付きを貰った三人であるらしい。

 気を練る事に適性があると早くも判明した三人に対し、以前に入った新米冒険者達も焦りを感じているとか。

「俺もですけど、新米も含めて操気術の訓練を始めてます。これが使えると使えないとでは、雲泥うんでいの差ですから」


 カムイやエウラも斬破や破砕撃を訓練し、威力の底上げや、使用回数を増やせるように、気の総量を上げようとしているそうだ。

「日々の訓練と、実戦での連続使用など、経験を積む事が何より大切だと思うぞ。使えば使うほど身体が慣れてくるものだからな」

 俺はカムイに助言アドバイスをすると湯船からあがった。

たくさんの読者様がつき、感謝感激です。ありがとうございます。

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