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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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風呂場でリトキスと

誤字報告ありがとうございました。

 夕方を過ぎた頃に訓練を終えた。

 冒険に出ていた仲間達が帰って来たのを合図に、風呂場に汗を流しに行こうと宿舎へ向かう。

 だが最近の冒険者の流行はやりは、冒険から帰って来てそのまま公衆浴場に向かい、大きな湯船に浸かるのだそうだ。



 転移門のある広場近くに建設されたその施設は、広い敷地を有効に使った豪奢な建物で、大きな談話室や会議室、併設へいせつされた小さな図書館があり、そこには冒険者に必要な知識について選別された本が集められているそうだ。

 その建物は「冒険の館」などと呼ばれているらしい。──冒険支援施設(けん)管理局素材買取施設──などという長ったらしい名前があるらしいが、誰も使っていない名称だ。


 冒険者のいこいの場を提供する目的で造られた施設であり、管理局が用意した「サロン(応接間)」といったところか。


 冒険に必要ないくつもの施設が配備され、今まで使用されていた管理局の「素材買い取り場」も、その館の中に取り込まれている。

「便利な世の中になったもんだなぁ」

「なんですか、年寄り臭い。──管理局の職員から聞きましたけど、その施設を建設する案はだいぶ前から出ていたそうなんですが、資材などの手配が間に合わないと判断されていたそうです。

 最近──特に、西海の大地を接合した事で、食料問題も解決され、人手を増やして建築資材を集める事に注力していたそうですよ。……その職員が言うには、()()()()()()()のお陰だそうで」

 と、リトキスが含んだ笑いを口元に作る。


「……誰の事だ?」

「おや? 胸に手を当てて考えてみるとよろしいのでは?」

 奴はそう言うと宿舎に入って行く。

 管理局の職員がそんな事を言っているのか。──末端の者までが口にするようになると、これはいよいよ大量の仕事が舞い込んでくるぞ。そんな不安を感じつつ、リトキスの後を追って宿舎に入った。



「例の『古びた城塞都市』で発見した翡翠ひすいの卵。僕は内容を聞けなかったんですが、解読されたそうですよ。──管理局で噂になっていました。

 一部の職員しかその内容が明かされていないという話で……おや、何かご存じなのですか?」

「まあ、そんな話があるのは聞いているよ。内容については……俺も知らん」

 俺はそう誤魔化した。


「ん? そういえばリトキスはなぜ翡翠の卵の文字を理解できなかったんだ? お前は文字に強かったじゃないか」

「ああ、それなんですが、管理局の研究員に尋ねたところ、古代の中でも小さな国の言葉で書かれていたらしいですね。工房の錬金術師は推測ですが、異国の人物だったんじゃないかと言われてました。──僕もすべての言語を理解している訳じゃありませんから」


 なるほど、翡翠の卵にあった文字は、その錬金術師の母国語だったという事か。

 アルディニス王国の魔導師だったそうだが、どこか別の国からやって来た人物だったのだろう。

 あるいは強制的に連れて来られたのかもしれないが。




 そんな話をしながら風呂場にやって来た。

 リトキスと共に脱衣所に入り、風呂場に向かうと──そこには先客が居た。……カムイだ。

「お──早いな、カムイ」

 そう声を掛けながら義足を脱いで、風呂場で使用する、滑り止め付きの簡易義足に履き替える。

「『冒険の館』を利用しようかと思ったんですが、新しい装備品を買う為に貯金しようかと思って」

「小さな出費を抑えるのも大切だが、大きな仕事を達成するのが一番だな。──もちろん、実力に見合った仕事の範囲内での話だが」

「そうですね。そこでゲーシオンへの遠征をしようと考えているんですが」

 カムイの言葉にうなずきつつ、経験豊富な仲間と一緒に行く事を勧めた。


「ゲーシオンの転移門に詳しいと言えばエアネルとレンネルの二人ですから。ゲーシオンでの効率的な金策である鉱物採取を俺に勧めてきたのも、あの双子です」

「なぁるほど」

 金鉱山以外にも、真紅鉄鋼アウラバルカム黒銀鉄鋼グラズアルドが採掘できる鉱山で採掘し、一晩でかなりの稼ぎを出した一団パーティも多いと聞く。……もちろん、ほとんどの者が空振りを経験する訳だが。



「ぁ──そうだ」

 俺はカムイの顔を見ていて思い出した。

「改めてだが、武闘大会ではよくやったな。準優勝とはスゴいじゃないか」

「あ、はい」カムイはあっさりと返事する。

「ヴォージェスも感心していたぞ」

 そう言うと、カムイの横で湯船に浸かるリトキスが声を上げた。

「僕は優勝したんですが」

「おぉ──、スゴいスゴい」

 俺は拍手する真似まねをして古くからの友人の功績を称える。


「なんか、対応に差がありません?」

「それはお前……、旅団に加入した時の実力が違うだろ。お前は金色こんじき狼の元団長。カムイは素人しろうとに毛が生えた程度の冒険者だったんだぞ。短期間でよくこれだけ強くなったもんだ」

 そう言ってやると、カムイはまんざらでもなさそうな顔をした。


「オーディス団長には感謝してます。最初は旅団に入らないかと誘われて、正直イヤだったんですけど……」

「イヤだったんか!」

「イヤって言うか、面倒くさいって言うか」

 少年は照れ笑いとも、困った様な笑顔ともとれる表情をする。

「けど、誘ってくれてありがとうございます。──こっちも改めてなんですけど、俺もヴィナーもウリスも。みんな団長には感謝していると思いますよ。この旅団に入ったお陰で強くなれたし、なんと言うか……強くなりたいという目標がはっきりと見えてきた、って感じで」

「目標が無かったからこそ、お前は半人前のままくすぶっていた訳だ」

「はっきり言いますね」

「お前はもう、目標もやる気も持たない若造じゃないからな。これからは旅団の若手を引っ張るつもりで励めよ」


 俺がそう発破はっぱをかけると、カムイはこう言った。

「そう思うなら、準優勝したご褒美で何か、強力な装備品を作ってくださいよ」

「一応、お前に与えた魔剣がその褒美なんだが」

 俺は真顔でそう返す。

ここで言う「サロン」には「社交場」といった意味もある言葉なのですが、中世の頃の「サロン」を表す適切な言葉が見当たらない……いっそ「社交場」か「社交広間」などとした方がいいのかな。とか考えたりもしましたが、結局英語の意味のままで通してしまいました。

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