新たな領域で発見された物
誤字報告ありがとうございます。
「あの翡翠の卵。あれが光の中に映し出す文字。それを解読するのに、卵の発見場所にあったいくつもの書物が役に立ちました。
私達の研究員は総動員でそれらを解析し、この文字が、フォロスハートが分かれる前の大地。『ロズアノール』に関するものだと理解しました」
「ロズアノール」とは俺の理解からすると、惑星の名前──つまりフォロスハートが惑星の一部だった頃の世界を表す言葉。だと考えているが、人によっては受け取り方が分からずに、集団(団体)の名称だと考える者も居るらしい。
「俺の考えだと、ロズアノールというのは、フォロスハートが分解する前の、大きな大地の総称だと思うが」
「ええ、実は私もそう思うのですが。今回の情報で、それが確実なものになると思われます。つまりロズアノールとは国の名前ではなく、人が世界に付けた名前だった」
俺は頷く。
その時ドアが叩かれ、俺はレーチェに入るよう声を掛けた。
「お待たせしましたわ」
彼女にも長椅子に腰掛けるよう言い、ロズアノールについての話を聞かせてやった。
「ロズアノールについては管理局の図書館にある『世界断編叢書』という書物で見ましたわ。国の名前と勘違いしている人も居るようですけれど」
「まあそれは仕方がない。何しろフォロスハートには『国家』という概念すら曖昧なんだからな」
パールラクーンとの交流が深まる頃になって初めて「国」という言葉が、フォロスハートに浸透したらしい。
それくらい集団の形態について単純な語彙しか持っていなかったのだ。
俺とレーチェの会話を聞いていたメリッサがこんな事を言ってきた。
「……たまに思うのですが、オーディスワイアさんって達観したような、傍観者のような発言をします。──まるで、フォロスハート以外の世界を知っているみたいな……」
俺とレーチェはぎくりとしてしまった。
さすがに態度には出さなかったと思うが、俺は軽く受け流し、コンコンとドアが叩かれた音を聞きつけ立ち上がる。
ドアを開けると、リーファが三人分の紅茶を煎れて持って来てくれていた。
俺は礼を言って銀の盆を受け取ってドアを閉め、テーブルまで盆を運ぶ。
「それで、例の卵について何が分かったんだ?」
俺は紅茶を茶碗に注ぎ入れながら話題を振る。
「ええ、実は──あの翡翠の中にある文字が表すのは、歴史的な事件が起きた時の記録のようなのです」
歴史的な事件? そう俺とレーチェが返すと、メリッサは重々しく頷く。この話は他言無用だぞと、その険しい表情に書かれていた。
「信じがたい内容なのですが──それは、混沌を世界に解き放ったのは、ロズアノールにあった一つの国家だというのです」
「────なに?」
俺は耳を疑った。
何故そんな事を……というのが感想だったからだ。
「待て待て、いったいどういった事が書かれていたんだ。全て話してくれ」
そう訴えると、レーチェは口元に運ぼうとしていた茶碗を硬直させたまま頷き、震える手で紅茶を口へと運ぶ。
「分かりました。──この件は、くれぐれも内密に、分かっていますね?」
メリッサは管理局実務長としての顔をして言う。
俺達は無言で頷き、話を聞く前に、紅茶を飲んで落ち着こうとした。
手帳を取り出すメリッサ。──少しくすんだ茶色の皮表紙の、小さな手帳。
ぺらぺらと頁をめくり、こほんと咳払いする。
{私はロズアノールにあるアルディニス王国の××魔導師。世界に破滅が迫っている。
始まりは隣国アゾーラの起こした魔導災害だった。彼の国は闇の世界との繋がりを求め、その力を行使して他国を支配しようと目論んだ。
しかしその巨悪の力は彼らに制御できるものではなかった。
およそ人の手に余るそれは”完全なる闇”であり、そこから現れる存在は、人間は疎か、あらゆる生物にとって危険な異形の敵性体だった。
私達は周辺にある全ての国と連合を組み、あらゆる魔導の知識を駆使して、彼の国との接点を封じる結界を張り巡らせた。
しかし、それも長くは持ちそうにない。
あの禁忌の地へ多くの戦士や魔術師を送り込み、魔導災害の根源を消滅しようとしたが、数年経っても成功の兆しすら見えぬ(ああ、神はなぜ我々を助けてはくださらないのか)。
アゾーラの城から暗き天空へと怪しい光の柱が延び続け、そこから異形が絶え間なく発生するのだ。
あの闇は”深淵”と呼ぶに相応しい、禍々しい光を放つ異空への入り口なのだ。
誰か、あの恐るべき深淵の口を閉ざし、これ以上世界に闇が広がらぬようにしてくれ。
あの深淵さえ閉じる事が出来れば、世界の破滅を食い止められるに違いないのだ。}
混沌に呑まれた世界の秘密が~⁉




