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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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訓練と来客

 翌日も早朝から戦闘訓練に参加した。

 今日は昨日よりも若手の数が多く、昨日から団長が参加しはじめたという話を聞いて、自分も団長の実力を知っておこうと、そんな思いを抱いて訓練に参加した者も居るようだ。

 昨日に引き続きリトキスと、手の空いたレオシェルドが教官役となって、訓練が始まった。

 寝る前に筋力の回復を助ける回復薬を飲んでおいたおかげもあって、筋肉痛にならずに済んだ。


 若者達がやや()()()()した顔をしているのは、朝食に出された暗生草の生野菜料理サラダをたっぷり食わされた所為せいだった。

 調味酢ドレッシングが残り少なかった事もあり、あの毒草を食っているのではと思ってしまうような草を、薄味で大量に食べる事になったのである。

 いくら薬になると分かっていても、生のままドクダミ草を口にする者が居るとは思えない。──そんな感じで彼らの奮闘を眺めていた俺。


 魔法を使えない者であっても、この先どんなひらめきが訪れて、魔法を使用できるようになるか分からない。

 カーリアやヴィナーなどは文句を言わずに食べていた。

 暗生草による魔力の増加など微々(びび)たるものでしかないが、それでも徐々に魔力総量が増えるのなら、無理矢理にでも口に詰め込み、飲み込むのだ。──そのうち慣れてくるのだろう。今では呼吸を止めて咀嚼そしゃくし、後味を他の料理を口にする事でなんとか対応していた。



「お相手、お願いします」

 そう言ってきたのはセブだった。

 少しでも早く冒険に出たいと望んでいるらしく、訓練に積極的な態度を見せる。まだまだ若い少年の冒険者候補だが、その意気は大したものだ。

「よし、いいだろう」

 俺は木剣と革の盾を手にし、相手にも剣と盾を持つよううながす。

 少年は逆らわずに木剣と革の盾を手にし身構えた。



 基本となる動きは学んでいるようだった。

 こちらの攻撃に対応し盾で防ぐと、お手本のような反撃を打ってくる。

 盾で隠した角度からの突きを打ち、手首を回して横斬りを振るってきたセブ。

 普段から戦い方を考えているのだと感じさせる。──若いながら、なかなか創意にあふれた戦い方をする。

 その後も少年の戦い方を観察しつつ、こちらもどういった剣と盾の使い方があるかを見せ、時間を使って相手をしてやった。


 セブ以外にも数人の新米相手にした。──こちらは以前に入った三人の内の二名だったが、名前が出てこない。

(ええと、なんて名前だったかな?)

 そんな事が気になって訓練に身が入らない。

 戦場に出ていた為に、彼らの相手をあまり出来なかったのが原因だろう。顔は覚えているんだが……




 今日は鍛冶屋に顔を出すのは少しだけにし、午後も訓練に時間を使おうと考えていたが、正午になる前に俺を訪ねてメリッサがやって来たのだった。


「おぅ、久し振りだな」

 そう声を掛けると、彼女は珍しく盛大な溜め息を吐き出して「お元気そうでなによりです」と口にした。

「本当に心配したんですよ」

「すまん。──手紙は読んだか?」

「ええ」

「んで、今日はなんだ? 様子を見に来ただけではないだろ」

 そう言うと彼女は真剣な表情でうなずいた。


「実は、リトキスさん達に向かってもらった『古びた城塞都市』の新たな領域なんですが。そこにあった書物などを調べてみると、その──とんでもない事が分かってしまったのです」

「ほう。ではあの翡翠の卵も解読できたんだな?」

 無言で頷くメリッサの表情は見た事がないくらい固かった。

 その表情から、これは思いも寄らない事を発見したのだと思い、宿舎の中で話を聞くことにした。


 宿舎に入ると、ちょうどレーチェとリーファが階段から下りて来た。

「レーチェ、ちょっといいか」

 俺は彼女も一緒に話を聞くべきだと思い、念の為にメリッサの方を見て確認してみた。

 彼女は少し考えたが、すぐに頷き返し、俺はレーチェに客間に来るように言う。


「……分かりましたわ」

 こちらの真剣な様子を見て、彼女も何かを感じ取ったようだ。俺とメリッサは小走りに応接室へと向かい、部屋の中に入って行く。

 テーブルをはさんで長椅子ソファーに腰掛けると、メリッサは手帳を取り出した。

「翡翠の卵について解読できた事をお話しします」

 その声には言い知れない緊張がにじみ、室内に静寂せいじゃくを運んできた。

次話で「翡翠の卵」から解読された内容が明らかに。そこにはこの世界の根幹に関わる重大な内容が書かれていた……!


明日の昼に次話投稿予定! お楽しみに!

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