訓練、訓練、訓練!
気づけば七人の若者達がへばっていた。
俺も多少息が上がってしまってはいたが、まだまだやれそうだ。
「どうしたどうした。そんなんじゃ全国──いや、冒険先で命を落としちまうぞ」
すっかり一昔前の部活動のノリになっていた。
ここに居た七人はその若さに相応しく、打たれてもへこたれない気概を示そうと、俺に対して果敢に打ち掛かってきた。
さすがに団長を相手に無様な戦いぶりは見せられない、と血気のあるところを見せてくれる。
だが──実力はまだまだだ。
一対一の、駆け引きの必要な戦い方を理解するには、冷静な判断力といったものを培う、実戦経験が足りていない。
頭で理解している事と実戦での行動判断は、経験の中で身につけていかないと、上手く機能しないものだ。──何より咄嗟の反射で戦うというのは、際どい場面で必ず出るものだ──
どんなに素晴らしい戦術を描けても、実戦となった時の緊張感で体が固くなり、冷静さを失えば、本領を発揮する前に倒れる。
訓練とは遊びではない。
実戦を想定した、本気の取り組みなのだ。
六人がへばっている中、一人の若者がまだやる気のようだ。
確か名前は──エクスダイン、だったか。
七人の中でもかなり訓練を重ねた男で、すでに冒険にも出ている冒険者だ。同期のローレンキアやリグザミト達は冒険に出ているのだろう。
エクスダインは、滅多にない団長との訓練に意欲を燃やしている様子で、なんとか団長に認めてもらおうと気炎を吐いている。
「いいぞ、こい!」
木剣を手にかなり強引に攻めてくる。
だが以前よりも変則的な動きが出来ていると感じた。直線的な攻撃が減り、横へ回り込むなどの動きが増え、さらに反撃の為の体の使い方も身につけていた。
……とはいえ今の俺の戦闘姿勢は、完全に反撃主体に慣らしたものなのだ。──それはレーチェの鋭い攻撃に対し、確実に勝てるだけの一撃を打ち込む動き。
その動きを多用していると、ついにエクスダインは二歩後退し、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら「ぜんぜん当たらねぇ」と不満げに言う。
「ああ、悪い悪い。自信を無くすなよ? ──二週間後には副団長との再戦があるもんだから、反撃の練習をしておきたくてな。お前の攻撃は重く鋭いが、それでも攻撃の瞬間は読めるし、大振りに頼り過ぎだ。もっと偽攻を混ぜるなどして、本命の攻撃を悟らせないようにしないとな」
あまりに反撃を受け過ぎて、腕や肩に痣が出来ているかもしれない。エクスダインは「うす」と返事をしながら、痛めた腕を気にしつつ下がった。
「よぉ──し、次は?」
そう声を掛けると、入ったばかりの新人が立ち上がった。
線の細い優男といった風貌だが、どこか闘志に溢れた瞳を持つ若者だ。
「新人だな。名前は──ええと」
「セブです」
「よし、こい」
入ったばかりの三人の新人の一人。
どうやら彼は速度に重点を置いた、手数の多い戦い方をするようだ。リトキスに習った戦い方なのか、なかなかに鋭い打ち込みをしてくる。
わざと空振りをして反撃を誘い、その一撃を躱しながら反撃するという技も見せてくる。なかなか飲み込みの早い若者だ。
「えいっ」
俺はその反撃に対する反撃を、さらに上半身だけの動きで回避し、相手の胴体に軽く突きを入れた。
ぐいっと押された格好で尻餅を突きそうになるセブ。
なんとか軸足を下げて転倒を回避したが、それでは追撃を回避できない。
「後ろに足を下げて踏ん張る時も、さらに追撃がくるのを想定し、横や前に動ける準備も必要だぞ。そんな爪先を馬鹿正直に真正面に向けて、真後ろに下がっていては駄目だ」
それでは次に動く方向が限られてしまう。
「肩幅くらいに足を開くのを意識して足を引くんだ。次の攻撃に対する回避や反撃も頭に入れて。斜に構えるのも忘れずにな」
爪先を少し外側に向けるようにしてな。そんな風に助言し、こうして七名を相手に繰り返し訓練を重ねる。
さすがに仲間達が冒険から帰って来る頃には、俺の息も上がってしまう。
「ふぅ──よし、今日はここまでだ」
リトキスも頷きながら、武器の手入れと片づけを命じる。
「最後の子ですが、なかなか早熟だと思いませんか」
「ああ、そうだな。戦いの技術に関する変な先入観がない為、飲み込みが早いんだろう。おかしな癖がつかないよう注意しつつ、伸ばせるところを伸ばしてやろう」
俺の言葉にリトキスは頷き、また今度もお願いしますと言ってきた。
「俺には一応、鍛冶の仕事もあるんだがな」
しかし当分は訓練に身を入れようと考えている。そう告げ、その日の訓練を終えた。
体力が無ければ鍛冶作業にも支障が出てしまう。
柔軟体操をしつつ、宿舎へと戻って行った。
あくまで人数が多いのは「旅団」の形式をもっているためで、メインキャラ的な扱いを受けられない子も……。たまに名前が出るくらいかなぁ。
新人三名の名前はもう少し先で。




