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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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エウシュマージアの精神形態

 一頻ひとしきり四大神と会話し、無事を祝われた俺。

 風の神ラホルスと地の神ウル=オギトが去って行ったが、火の神ミーナヴァルズと水の神アリエイラだけは残っていた。


「ど、どうしました?」

 一向にしがみついた腕を放そうとしないふたはしらの神。

 女神達は無言でにらみ合い、目には見えない火花を散らす。

「のぅ、オーディスワイアよ。身体が癒えたら、すぐにフレイマまで来るのじゃぞ? 我が歓待かんたいしてやるからの?」

 ミーナヴァルズがそう言えば。

「いいえ、オーディスワイアはウンディードにすぐ来るべきです。水の都には、あなたの身体を癒す力にあふれているのですから」


 こういった具合で、彼女らは帰ろうとしない。

 困り果てた俺だったが次第に眠気が襲ってきた。──この領域に留まる限界が近づいてきたらしい。



 遠くから、誰かが俺を呼ぶ声がする。



 ミーナヴァルズでもアリエイラでもない。

 まるで座り込んでいた地面に沈み込むみたいな感覚で、俺は再び眠りのとばりを越えて行く。



 * * * * *



 しかし次の瞬間には、眠気だと感じていた意識のもやが晴れ、自分がまだ精神世界に居るのだと気づく。


「あれれ……いったい、どうなってるんだ?」

 周囲を見回すと、草原の真ん中にある丘の上に居た。

 平地には大きな岩や木々。遠くに青々とした海が見える。

 空の色は水色と濃い青色の濃淡グラデーションのある綺麗な空。

 よく晴れた空には白い雲だけが浮かんでいる。

 丘の上で座り込んでいた俺の背後から、誰かが近づいて来る足音がして振り返った。


 そこには丘を上って来る女性が居た。

 透き通っているかのような白い肌と、銀色の長い髪。

 その瞳は日の光を受けて金色に輝いていた。

 線の細い体を覆う、純白の礼装ドレスを身にまとい、足は素足だった。


「ひさしぶり」

 俺のそばに来た女が言った。

「誰?」

 俺は真顔で聞いてしまった。

 すると彼女は「ふふ」と小さく笑う。

「まあ分からないでしょう。この神性の時は女神の姿であるので」

 そう言った時に、一筋の雲が日の光をさえぎった。

 美しい女性の顔に雲の影が重なり、その金色の目がはっきりと見えた。

 それは──蛇の眼の様だった。


「ぅおっ……まさか、エウシュマージア様ですか」

 そう言うと、彼女は驚いた様子を見せる。

「ええっ⁉ よく分かりましたね。この姿、このしゃべり方で会うのは初めてだと思いますが」

「その眼球ですよ」

 そう言って自分の目を指差すと、地の化身エウシュマージアは首をかしげる。

「蛇の眼みたいになってますよ」

「ああ、なるほど……これでどうでしょう?」

 すると金色の眼球に入っていた縦に伸びた黒い筋が消え、青色と緑色の色違いの瞳(オッドアイ)に変化する。


「元々は女神だったんですか」

「蛇の姿でもあり、女性型でもあり……。神性には性別などは特にありませんので」

 彼女は少し陽気に言う。

 俺は「なるほど」と納得し、お久し振りですとこたえながら立ち上がった。

「ええ、おひさしぶりね。──体の具合はもう?」

 大丈夫なのか? という意味だろう。俺は「ええ、大丈夫です」と返答した。

「それならよかった」

 彼女はそう言いながら、美しい銀色の髪を手で払う。


 その時に金色の腕輪が白い長袖の下からちらりと見えた。

 あの蛇の姿だった地の化身がこのような姿になったのも、神としての力を取り戻した証なのだろう。

 腕に付けた金の腕輪も、そしてこの精神世界の様子も、エウシュマージアが力を取り戻した事による大きな変化なのだと感じた。


「『春迎祭儀』でオーディスワイアの造った象徴武具を使い、多くの力を取り戻せたので、海に囲まれた小さな孤島に過ぎなかった場所も、今では大きな大地へと生まれ変わりました」

 俺は大きく頷いた。

 まさか女神として現れるとは思っていなかったが、考えてみれば、蛇の象徴するものは女性的なものに属するし、心理学的にはなんの違和感もないものだった。


 蛇は錬金術では地の原理の象徴であるし、大地は母胎を意味する地下を備えた、正に母なる大地といった、生命の誕生と成長を司る力の根源そのものなのだから。

蛇の象徴には男性的なものもありますけどね。

蛇の象徴って特異な部分が多い印象。正反対の意味が多かったりするので。

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