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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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神々の心配

 仲間と一緒に風呂場に行き、簡単に汗を流すと自室へ戻ろうと廊下を歩く。

 子猫達の様子を見るともう三匹は眠っていて、母猫のライムは目をつむり、うとうとしているのだった。


 自室に入ると俺は机に腰掛け、手紙などを引き出しにしまい込む。

 髪を乾かしながら今後についてざっくりと、予定を立てようと考える。

 眠っている間に起きたいくつかの新しい情報について考え、これから何を優先するかを決めようと思ったのだ。


「まずは体力づくり、筋力の回復だな」

 そしてレーチェとの再戦を果たし、今度こそ彼女に勝利する。

 そういえば彼女の妹リーティスは、今度闘えば姉は俺に勝てないと予言したそうだ。

 なかなか鋭い判断力を持つ娘だ。

 飄々(ひょうひょう)とした感じで姉を手玉に取るあたり、なかなかの策士であると思ってはいたが、観察力もかなりのものがあるのだろう。


 彼女リーティス自身は体が弱かった為に、物を見て判断する機会が多かったのが原因かもしれない。

 むしろ彼女のような人材が管理局の「旅団統合支援課」に入り、新人冒険者をどの旅団に預けるかを決定した方がいいのではないか──そんな風に考えた。


 しばらくすると眠気が襲ってきて、俺は寝台ベッドに横になる。

 ──するとあっと言う間に、意識が眠りのとばりの向こう側へと落ちていった。



 * * * * *



 よほど疲れていたのか……とか考えている自分に気づき、これは眠りの時間ではないぞと思う。

 目を開くと、そこは部屋の中ではなく、青空の見える平地に寝転んでいた。

「ここは精神世界か」

 上半身を起こすと、草原の先から誰かがこちらに向かって歩いて来ているところだ。──それは火の女神ミーナヴァルズだ。


「オーディスワイアぁ──‼」

 彼女は途中から駆け出して来て、俺が立ち上がった所に駆け寄ると、大きく腕を広げて抱き締めてくる。

「お久し振りです」

「まったくじゃぁ! 馬鹿者めぇ」

 赤い衣を着た女神はわんわんと耳元でわめいて、俺はひとまず彼女が落ち着くまで背中を抱き締めてやる。

 そこへ別の足音が聞こえて来て、急にぐいっと引き寄せられた。


「ミーナヴァルズ。騒々しいです」

 背後から現れ、俺を引き寄せた水の女神アリエイラ。

 そう言いながらも俺をしっかりと、後ろから両腕で抱き締めている。

「無事でよかった……」

 小声でアリエイラが言う。

「そうじゃぞ! まさか他郷の女神に蘇生させられるとは──なんたる不覚。我らに力さえあれば……!」

「ミーナ」

 アリエイラが強い口調で言葉を発する。


「あちらの女神が居たからこそ、オーディスワイアが助かったのです。ここは感謝しておくべきでしょう」

「何を言う! 元はと言えばあの女神の力を強く受けた、ナンティルとか言う猫獣人フェリエスの力を封じられなかった所為せいではないか!」

 するとそこへ、パタパタと羽撃はばたく羽の音が聞こえてきた。

「まあ待ちたまえ」

 風の神ラホルスは鳥の姿で現れた。

 青い鳥は岩の上に着地し、片方の羽を広げる。


「今回のあらゆる事柄が、混沌こんとんという不吉な力によって引き起こされたのだ。これはいかな我々であっても、万全な対策など取りようもない」

 彼はそう言うと、俺の方を向いて「ともかく、こうして再会できたのは何よりだ」と優しい声で言ってくれる。

「はい」俺はそう返事し、後ろから抱きつく女神の手を優しく撫で、そっと握り締めた。


「これ、いつまで抱きついておるのか」

 ミーナヴァルズの不機嫌な声が響く。

 しんと静まり返った土地に、大地を駆ける獣の足音らしきものが聞こえてきた。

 そちらを振り向けば、そこには銀色の毛を持つ大きな狼に似た獣が走ってきていて、そいつが宙に飛び上がって宙返りし、一瞬で屈強な大男に変形する。


「久し振りだなぁオーディスワイアよ! 我らの勇敢なる子供よ! 無事で何よりだ!」

 地の神ウル=オギトは太い腕を上げて軽妙に挨拶し、がっはははと磊落らいらくな感じで笑い出す。




 四大の神々が揃った。

 俺は右手にアリエイラ。

 左手にミーナヴァルズを座らせる格好で、二人に寄り添われていた。

「とにもかくにもお前を失わずに済んだのだ。これはフォロスハートにとっても我々にとっても、喜ばしい事である」

 ウル=オギトはそう言って、座り込んだ岩の上で膝を叩いて喜びをあらわにする。

「ともかく、君の魂は失われる事なく、今ここにある。()()()()()()


 どうやら女神アヴロラよりも風の神ラホルスの方が、俺の霊的な実在について敏感なようだ。──それは彼が、ここフォロスハートで多くの人間の死を受け入れ、その魂を新たな生命に吹き込むような役目を負ってきたからだろう。

 肉体的な還元をウル=オギトが、霊的な還元をラホルス──時にはミーナヴァルズらが手を貸しておこなっているそうだ。


「オーディスワイアはフォロスハートのものじゃ。余所よその大地で命を落とし、そちらに誘魂されては困る」

 ミーナヴァルズが言った。

 ──彼女が口にした「誘魂」とは、きっと死亡した場所で土へと還り、その肉体に宿っていた魂が死亡した大地に還元される。といった意味なのだろう。


 だが俺の魂はすでに、フォロスハートの神々との強い結び付きを得ているとも言っていた。仮に別の大地で死んだからといっても、その繋がりが失われるとは思えないのだが。

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