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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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二人の弟子の成長

 鍛冶屋に行くと、二人は一所懸命に働いていた。

 二つの炉の火が激しく燃えている様子から、ケベルとサリエの二人が、多くの仕事をこなしているのが分かる。──俺の居ない間に、しっかりと実力をつけていたのだ。


「よぉ」

 俺が声を掛けると、完成した剣を鞘納めているサリエが驚いた顔をして、俺を出迎えた。

「オーディスさん!」

 装飾を施した鞘を見ると、彼女が彫り上げた物だと分かる。顧客の要望で剣の手入れをするついでに、鞘に装飾を彫る依頼を受けていたのだ。

「よかった……」

「心配掛けたな」

 ごうごうとうなりを上げる炉の前に居るケベルはまだ気づかない。

 俺はケベルのそばに行き、剣を打つ手伝いをする事にした。


「手を貸そう」

 そう声を掛けると、少年はびくっと身体を震わせてからこちらを見上げ、にっこりと笑顔を作ると「お願いします」と返事をした。

 こうして久し振りに二人で剣を打つ作業に取り組んだ。

 ケベルは剣を金鎚で打ち、炉の中に剣を入れたりする作業の中で、小声で「おかえりなさい」と口にした。



 長い時間を掛けて作業に集中し、気づけばかなりの時間が経過していた。

 長い昏睡状態で体力が回復していなかったのだろう、作業が終わる頃には足元がふらついてしまう。

「平気ですか」

「ああ、少し疲れただけだ」

 魔法のつちを置き、手慣れた様子で刃を磨いているケベルに後を任せる。


 サリエが心配して回復薬を持って来てくれた。

 俺はそれを口にし、俺の居ない間二人が鍛冶の仕事に懸命に取り組んでくれた事に礼を言った。

 鎧の作製や武器の手入れだけでなく、その他の様々な作業でも多くの客の依頼を受け、かなりの成果を上げたようだ。


「さすがに魔法の剣の作製依頼には応えられませんが」

 ケベルによると、いくつかの魔法の武器の注文が入っているのだという。

「魔法の武器かぁ、──しばらくは造れそうにないな」

 俺は自分の体調を思い、そう返答した。

「一種類の属性付与を希望する依頼ですが、やはり材料とか、高額な報酬が必要になると説明したら、それらは全て用意できる、という返答をいただきました」

「どこの旅団からの依頼だ?」

 するとサリエが「魔法の武器注文依頼」と書かれた紙を持って来てくれた。


「ん……、聞き慣れない旅団からだな。他の都市を拠点にする旅団か」

 そこにはシャルファーやゲーシオンから来た冒険者の依頼だと書かれている。

 依頼者の名前と連絡先が書かれ、そこには旅団の名前や住所が書かれていた。

「造れる人が昏睡状態なので、と断ったんですが……」

 まさか俺が戦場に立っているとは知らなかったのだろう。武器の発注者達は。


「他の鍛冶屋では断られたそうですよ。──まだまだ魔法の剣の作製が出来る職人は現れないみたいですね」

 などとケベルが言う。

「おいおい、他人ひと事みたいに言うんじゃない。そろそろお前も魔法の武器を造る事に取り組むべきだな」

 作製方法について書いた帳面ノートは彼らに開放している。後は素材を用意して、それらが失われる危険を少なくし、完成にまで筋道をつける事だ。

 それには各自が取り組まなければならない。

 真剣な取り組みの先にのみ、やっと完成に辿り着け、さらにはより質の高い物を作り出せるのだ。


 確かに魔法の武器作製には、通常の武器を作り出すのとはまったく違う、洗練された技術が必要になり、そうした感覚を養うのは一筋縄ではいかない。

 研ぎ澄まされた感覚は、経験なくして作り出せない。だからこそ多くの経験を積み重ねなければならないのだ。

「基礎を学んで、やってみよう」

 俺はケベルの肩を叩き、しばらくは通常の武具の作製を続け、魔法の武器を試験的に作ってみようと提案した。


「はい!」

「俺もまずは、やらなければならない事がいくつかあるから、それをやり終えたら、二人が魔法の武具を作製する練習に付き合うからな」

 そう約束し、鍛冶屋を後にする。


 サリエはどちらかというと魔法の武具について取り組もうとする気持ちは低い。武具を作製するよりも装飾品を仕上げたり、錬金鍛冶で錬成する方が性に合っているのだろう。

 類型タイプの違う二人のこれからに対し、どういった修業を与え、その技術を伸ばしていくか。そうした事についても考えなければならない時期に入ったのだと感じていた。

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