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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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手紙と見舞い

 執務室を出ると、多くの仲間達が庭で訓練をしたり、子猫の世話を焼いたり、今後の冒険の予定を話し合ったりしていた。

 俺は彼らと会う度に「目が覚めて良かった」と言われたり、調子はどうですかと心配されたりしながら部屋に戻る。

 部屋の机には手紙が何通か置かれていたので、それに目を通す事にした。


 エウシュマージアからの感謝状に目を通すと、象徴しょうちょう武具を使っての儀式で力を取り戻せた報告と感謝がつづられ、それにより新たな転移門を「西海の大地」に開いた事も書かれていた。

 さらに興味深かったのは、大地の化身としての力を持つエウシュマージアは、他の大地に眠る神々やその力に感応し、上手くいけば転移門先にある大地に眠る神などを目覚めさせたり、大地の活性化させたり出来るかもしれない。とあった。

 そうした話は管理局に報告済みで、もしかすると新たな魔導具の作製を依頼されるかもしれない。そんな事も書かれている。


「転移門先の大地を維持している力に干渉するのか。何が出来るかは分からないが、まだまだやるべき事が残されているな」

 机には他にも見舞いの品が置かれていた。──アラストラからは薬草入りの薬酒の瓶。火の神殿からは、溶岩地帯に咲く生命力にあふれた「紅蓮ぐれん花」を使った紅茶などが差し入れられている。


「紅蓮花。こんな高価な物を」

 それは滅多に手に入る物じゃない。

 溶岩が噴き出す過酷な環境の中でも育つ植物の中でも、もっとも大きな花を付ける植物で、探しに行くだけでも大変な危険をともなうし、何より滅多に生えていない。

 紅蓮花の入った紅茶には、飲んだ者の生命力を高めるという噂がある。──まあ、真実かどうかは怪しいが。


 俺が現役の時に火山の近くで発見した植物は「火煙羊歯(しだ)」や「噴煙(かずら)」くらいだった。

 どちらも熱に強く、煙を取り込んで生長できる植物らしい。噴煙蔓は軟らかく丈夫で、縄の代わりになったりもする。

 そんな事を思い出しながら、俺は部屋を出て洗面所に向かい、歯を磨いてから少し横になろうと思った。


 ……その時、窓の前にある小さなテーブルに目がいった。そこには小鉢植物園テラリウムがあったが、その横に小さな瓶が置かれていたのだ。

 それを手に取ると、その瓶には紙が貼られ、アウシェーヴィアとキャスティのなまえが書かれていた。──どうやら見舞いの品らしく、超高級な魔法薬の小瓶だった。

「あいつらも見舞いに来てくれたのか」

 中身が空になっているところを見ると、昏睡状態の俺に飲ませたのだ。……しかし、この薬でも目覚めなかった訳だ。

 俺は二人の旧友に感謝しながら部屋を出た。



 玄関の前を通る時、冒険から戻って来たリーファ、ウリス、ヴィナー達にばったりと会った。

「ぎゃあっ! オーディス団長! 目が覚めたんだ⁉」

 ヴィナーが驚いて叫んだ。

「なんだ、ぎゃあっ! てのは。幽霊だとでも思ったのか」

 リーファやウリスは庭で出会った仲間から俺が目覚めた、というのを聞いていたらしいが、それをウリスにはわざと話さなかったようだ。


「ともかく目が覚めてくれてよかったですよ」

 リーファはほっとした様子で言う。

 ウリスは「お帰りなさい」と言って、表情の少ない彼女には珍しく、優しく微笑ほほえんでく

れた。

「ああ、ありがとう。心配掛けたな。──二人には戦場にまで参加してくれて、感謝している」

 ヴィナーとウリスの仲は、ただ単に古くからの友人というだけでなく、危険な戦いや冒険を乗り越えた「戦友」として、今まで以上に強い結び付きを得たようだ。


「ところで、メイやユナにはもう会いましたか?」

「ああ」

 リーファは俺の返事を受けて、ほっとした様子を見せる。

「どうかしたのか」

「いえ、メイが団長を心配していたので。あの子も以前の旅団で仲間を失ったりした経験もありますし、気が気ではなかったのでしょう」

 メイのあの喜びようを思い出し、ほっこりした気持ちになりながら洗面所へと向かう。



 鏡を前にして歯を磨いていると、鏡に映る自分が少し細くなったように感じられ、長い昏睡状態だったのがうかがわれた。

 やつれてはいないが──どこか病的な男の姿が映し出されている。

(あ、横になる前に……)

 俺は歯磨きを済ませ、部屋に戻るとすぐ外出する。

 鍛冶屋に行って、弟子達に目が覚めた事を知らせなくては。


「あ、手紙も管理局に持って行かないと」

 するとエウラが声を掛けてきた。

「オーディスさん──よかった。本当に目覚めていたんですね」

 彼女は俺の回復を喜び、もう動いて大丈夫なのかと聞いてくる。

「もちろん。これから管理局の方に行こうと思っていたくらいだ。平気だよ」

 俺が手紙を管理局経由で、神殿やパールラクーンの方へ届けさせるよう考えている事を伝えると、彼女は手紙を管理局へ持って行くと言ってくれた。


「お気になさらず。私も管理局に用事があったので」

 そう言うので彼女に手紙を渡し、届けてもらう事にした。すぐにそれを管理局経由──メリッサを通して届けてもらうよう頼んだ。

 メリッサに直接頼む形を取れば、今日中に各地に届けられるだろう。彼女メリッサはそうした機微きびにはさとい方だった。

超高級魔法薬(RPGで言うエクスポーションみたいな感じ?)──キャスティらは再び小獣人の国に戻ったのかな……

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