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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第十章 愛する者のために

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レーチェ照れる

本日2度目の投稿~

「そういえば、リーティスが見舞いに来てくれたんだって?」

 ふと気になって尋ねると、レーチェはまた顔を赤くした。

「え、ええ……。父や母も、その──旅団長の意識が戻らない事を心配して、妹を寄越よこしたそうですわ」

 なんだか歯切れの悪い返事だった。もごもごと小さな声で聞き取り辛い。


「なんだ? 何か問題でもあったのか」

「も、問題といいますか……」

 明らかにレーチェは動揺している。

 ライムの背中を撫でていた手が止まり、気分を害した白猫は机に飛び乗ると、今度はこちらに近づいて来た。

 俺はライムを抱き上げると、彼女のもっふもふのおなかを撫でてやり、また甘噛み攻撃や、後ろ足でのかかえ蹴りを喰らってしまう。


「ぉお──よしよし、元気な奴だな相変わらず」

 まだ何か言おうと躊躇ためらっているレーチェ。いったいなんなんだ、俺は彼女の逡巡しゅんじゅんしている理由を考えてみた。

「…………また、妹に何か言われたのか」

「え⁉ ま、まあ……妹と言いますか……」

 そこまで言ってまた口ごもる。

「何かまずい事でもあったのか? いいからはっきり言ってくれ」

 もしかするとリーティスが俺の事を彼女達の両親に話し、旅団長との交際など認めん! みたいな反応を両親にされたのではと考えたのだ。


「え? いえ……別に、まずい事なんて──何も、ええ本当に、何もないんですのよ?」

「いや、絶対に何か隠している」

 俺は断言し、じっと彼女の瞳を見つめる。

「だ、だから、その……」

 もごもごと唇を動かしたが、その口からは一向に言葉が出てこない。

 妹でなければ、やはり彼女の両親が何か言ったのだ。俺は困ったような顔をしていたのだろう。

 彼女はその様を見ると、意を決したように、先程よりも大きな声でこう言った。


「ち、父と母が、あなたを一度、連れて来なさいと、そう──言うものですから」

「え?」

 俺は拍子抜けすると同時に、彼女の真っ赤になった顔を見て、こちらまで顔が熱くなる想いにとらわれる。

 これは……もしかして、ご両親への挨拶参りみたいなお誘いなのだろうか。

 急に具体的な行動に出るよう迫られた気がして、逆に気が引けてしまう。──そんな繊細チキンハートな俺。


「ぉ、おう……」

 こんな感じで、二人してどうしたら良いものかと思案し、部屋の中に静寂せいじゃくが訪れたのである。


「ま、まあ、それは──うん。都合のいい時にぜひ。と──伝えておいてくれ」

 すると彼女は「そうですか」と、平静を装って言った。

 おざなりになってしまったお腹を撫でる手に、がぶりと噛みつくライム。

「いてっ、痛い」

 白猫はぴょんと俺の手から逃れると、机の上に乗って、三つの机の真ん中で丸まると、大きな欠伸あくびをしてみせた。


 レーチェの両親に会う前に、俺にはやっておかなければならない事があるのを思い出す。

 それは先程レーチェが言った「約束」についてだ。

 俺は彼女との戦いに勝ち、彼女と付き合う権利を獲得しなければならなかった。

 前の闘いでは惜敗せきはいをしてしまったが、今度はそうはいかない。


 俺はパールラクーンでの戦場で、かつて持っていた「戦いの感覚」を取り戻したのだ。

 今度は以前のような負け方はしない。

 それだけの手応えを未だに自分の中に感じている。──だが、その前に、少しは身体を鍛え、体力を取り戻さなければならないだろう。



「レーチェ」

 俺はまっすぐに彼女を見つめる。

「な、なんですの」

「今度──そうだな、二週間後に、俺と決闘をしてくれ」

 すると彼女の表情から困った様子が消え、真剣な表情に変わる。

「二週間で寝込んでいた空白ブランクを取り戻せるとおっしゃるの?」

「任せろ」

 実際のところ筋肉よりも、瞬発力と柔軟性の方が、レーチェとの闘いでは大事になるはずだ。

 腕力で彼女にまさっていても闘いともなれば、それだけでは勝てないのだ。


「……分かりましたわ。あなたを信じます」

 彼女はそう言うと、少し哀しげに微笑ほほえんだ。

 彼女の冒険者としての感覚が、俺の勝利への確信を感じでもしたのだろうか。

 その表情にはあきらめにも似た感情が浮かんでいた。


「妹が言うのです」

 急にレーチェが口にする。

「かつて『金色こんじき狼の三勇士』と呼ばれていた団長の実力は、本来なら到底、私の勝てる見込みがないほど、高い技術力や経験の差があると言っていました。──きっと今度闘う時は、私は勝てないでしょうと」

 リーティスの勘の働きは確かなものがあるのだろう。

 姉は妹のそんな言葉を受け、自分の実力にもっと磨きを掛けなければ、と考えているようだ。


わたくしも簡単に負けはしませんわよ」

「おう、望むところだ」

 俺達は拳を軽くぶつけ合い、再戦を誓った。

レーチェが照れていたのは両親への顔合わせの件だけか、それとも……


リーティスは運動できなかった分、鋭い観察力や分析力に長けている、といった話。

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