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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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犬狼の王の正体

「ぉぉおぉおおおおぉ────っ‼」

 大軍から発せられる声は左右の山脈から聞こえ、さらには互いの山に木霊こだまし合って、巨人の歩みが起こす地響きを思わせる様な、凄まじい反響で戦場を包み込んだ。


「仲間の到着だッ! 西と東の部隊も合流して来たぞ! これで勝てる‼」

 うおおおおお────っ! と、駆けつけた援軍に応えるようにして咆哮ほうこうする仲間達。

「さあッ! 全力で敵を叩き潰すよ‼」

 リゼミラが吠えると、彼女の後方に居る戦士達がそれぞれの武器を振り上げて、まるで勝利の雄叫おたけびをするかのように声を張り上げる。


 三方向から俺達は襲い掛かった。

 恐るべき敵の頭上に閃光弾が次々に打ち上げられ、暗かった戦場の中央を明るく照らし出す。

 もはや一匹たりとも逃がしはしないという勢いで、俺達は混沌こんとんの手勢を斬り倒しながら突き進む。


 そして俺は犬狼の王(バロンレガルム)へと迫る。──奴との決着をつけなければ……!




 三体の戦狗バルガンに似た化け物を倒した時、前方から駆け寄って来る敵の姿を目視した。──犬狼の王は閃光弾の光が降り注ぐ中を、黒い極光気オーラを噴き上がらせながら突進して来る。

 俺を標的にしているのか、一直線にこちらへと向かって来た。

「上等だ‼ いくぞ‼」

 俺も突撃すると、周囲に居た混沌の化け物共が、俺と犬狼の王の邪魔をしないようにと下がって行った。


「ガキィインッ‼」

 正面からぶつかり合う剣。

「ガンガンッ、カシィイィンッ、ギイイィィンッ」

 互いに繰り出す高速の斬撃。

 俺は全身の気を集中し、体中を駆け巡らせ、肉体の限界ギリギリまで力を出して戦った。


(こいつ……っ! この速度にまでついてこられるのか⁉)


 一瞬で四回から五回放たれる攻撃を受け流し、かわす。

 ここまで全力を出し切るのは久し振りだ。

 奴の剣を腰を落として躱しながら、魔剣を一閃させる。

「ズバッ」

 引き裂かれたのは奴の被っていた狼の仮面。

 下から斬り上げられた攻撃をすれすれで躱したが、肩当てと首回りの毛皮が吹き飛び、奴はその人間の肉体をさらした。


 ────人間の姿形をしたその肌は、青白いまでの白い色。いや、灰色だった。

 犬狼の王の顔は今や、あのブサイヌの顔ではなく、黒い渦を囲む様に燃え上がる朱色に輝く炎のかたまり

 上半身を巻き込んでメラメラと燃える炎を噴き上げると、まるでブラックホールの様な頭を晒したのだ。

「おまえはいったい、なんなんだ」

 渦巻く炎の中の暗闇が俺を見つめる。

 周囲では西と東の部隊が攻め込んで来て、次々に混沌の魔物を駆逐している。


 もはや勝敗は決した。

 そして今、奴らを支配している混沌の支配者が本当の姿を現そうとしつつあった。

 地面に膝を突いた犬狼の王は上半身を燃やしながら、大きな黒い火柱を噴き上げた。




「もう終わりにしてくれ────」

 俺は剣を振り上げ、犬狼の──()()()()──の頭上から胴体を真っ二つにするつもりで、黒い火柱に魔剣を振り下ろそうとした。



「「ギュビイイィイィィィ────ンン」」



 そんな奇妙な音が響き渡った。

 燃え盛る黒い炎が揺らめき、そいつから周囲を震わせる音波の様なものが放たれたのだ。

 俺は発せられた異質な波動を浴びてしまった。──すると体から力が抜けていき、よろよろと後退して地面に膝を突く。

 背中に回していた剣を握る力もなくなり、魔剣を落としてしまう。


「ぬぅぁぁ……ッ! なんだぁっ──⁉」

 体の中を流れる気が乱れ、波打つみたいに体中で異変を起こして暴れている。

 力が入らない……!

 なんとか立ち上がろうと腹筋や足に力を入れ、気の流れを安定させようとするが、俺は力なく尻餅をつくように倒れ込む。

「オーディス!」

 俺の異変に気づいたリゼミラとアディーディンクが駆け寄って来た。



「「ゥォアヴァァアァァアァッ‼」」



 混沌の王は暗闇に変化していた。

 人間の形状を捨て、上空で輝く閃光弾の光を浴びながらも、まったくその色を示さない──完全なる暗黒。

 それは深淵しんえんそのもの。

 ごうごう、ごうごうと音を立てて膨れ上がった深淵は、四メートルを優に超える巨大な柱に変化していった。


 アディーは俺に「聖霊の祝福(プレアルカーマ)」を掛けて、異様な虚脱感を取り除いてくれた。

「ありがとう──って、なんじゃぁこりゃぁ⁉」

 目の前に広がったのは黒い空間であり、黒い柱だったものは球体に形を変えて、さらに横や縦にぶくぶくと広がった縮んだりしながら、黒くうごめく闇の中から、様々な色を取り出し始める。

「こんな気味の悪い、意味のわからん物は見た事がない」

「あたしもだよ」

 それはぶるぶると震え、ガチガチとぶつかり合い、石と石。金属と金属がぶつかり合う様な音を響かせながら、何かの形を作り始めたのだ。


「そろそろこの不気味な物を、なんとかした方がよくない?」

 アディーがやけに自信たっぷりに言う。


「「賛成」」


 俺とリゼミラが笑いながら言った。

 俺とリゼミラが剣を構え、その後ろでアディーが魔法の準備をする。

「懐かしいね、この感じ!」

「そうだなぁ!」

「いくよっ‼」

 小さな大魔法使いが声を上げると、目の前にある混沌の中から、黒や赤や青や紫の羽を放射状に広げた魔物(?)が現れた。

 大きな翼と胴体を持つそれは、前屈みになった獣人を思わせた。

 しゃがんでいるので分からないが、かなり大きな奴だろう。それはゆっくりと上体を起こし、黒い体に様々な色の宝石を埋め込んだかの様な姿を晒す。

 人型であるようにも見えるし、まるで痩せ細った熊の様でもあった。


「「ウォアァァアァァァ────」」


 奇怪な叫び声。


 そこにアディーの強化魔法を受けたリゼミラが突っ込んで行く。

「ウララララァアァァッ‼」

 体中の気を駆け巡らせながら、鋭い攻撃を何度も浴びせる攻撃。

 あまりの素早さに目で追うのが困難なほどだ。反撃しようと黒い腕を伸ばしてきた相手に対し、真っ向から立ち向かって腕や翼を斬り裂いていくリゼミラ。


「「ヴォォオオォオォアァァァアァッ」」


 黒い飛沫しぶきの様な物を噴き上がらせながら、後ろに一歩後退する。

 そこへリゼミラは接近し、足首を深々と斬りつけ、その場に膝を突かせた。

「オーディス! いきますよぉっ!」

 次に俺の剣に魔法の力を注ぎ込むアディー。

「おうよ‼」

 魔剣に重なる白く光る刃。

 バチバチとうなりを上げる光。

 俺は輝く刃をかざし、リゼミラに声を掛けた。



「退け! リゼミラ!」

次話(日曜日に投稿)で第十一章も終幕です。

予想外の結末になるでしょう。(ニヤリ)

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