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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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神のお告げと頼もしい仲間の到着

 眠りにいてしばらくすると、ぼんやりとした視界の中に誰かが歩いて近づいて来るのを感じた。

 それは大柄な男で、背負った大剣や鎧兜を身に着けた格好をしている。

「──ウル=オギト様ですか」

 もやの掛かる視界の向こうで、「おう」という野太い声が聞こえた。

「こちらではまだまだ多くの力は振るえないから、ここでの会話もそう長くは続けられないだろうな」

 地の神はそう言うと、簡潔に事の次第しだいを語ってくれた。


「お前が以前造った『神威の台座』をパールラクーンに運ばせ、その台座を通じて我らの力を伝えているのだ。──こちらの女神の力も借りてな。それでお前達の体力や気力を回復させたのだ」

 そうだったのか、確かに四大神の力を秘めたあの台座なら、こちらに四神の力を注ぐ事が出来るかもしれなかった。

「まあ──後は、お前達次第といったところだ。健闘を祈る。我らはいつもお前達と共にある──それを忘れるな……」

 神の声が遠くなる。

 俺は白い靄の掛かった精神世界から離れ、再び自分の夢の中に引き戻される、奇妙な感覚に沈んでいった。




 仮眠から目覚めると、夢の中でウル=オギトに言われた言葉が少しだけ頭の中に残っていた。管理局の人間が、こちらにあの台座を持って来ているのだろう。

 フォロスハートの人間を守り、パールラクーンの同士達も守る神々の連携。それを得て俺達はいよいよ、この戦争に終止符を打とうとしているのだ。

 目覚めたばかりだというのに、俺の心の中には微睡まどろみよりも、強い戦意が沸き起こっているのを感じる。それは大地の底を流れる溶岩流の様に、静かに戦いへの想いをたぎらせていた。


 上半身を起こした俺は、寝ているアディーやレオシェルドを起こさぬよう、そうっと天幕テントの外に出た。──時刻は昼手前くらいだろうか。


 山脈の間にある犬亜人ババルドの防衛拠点を崩し、そこにあった岩を運ぶ機動鎧ギガンデルや、岩を載せた荷車が陣の北側に向かっている。

 広原の手前に壁や壁や塹壕ざんごうを作っているのだ。

 もちろん万全の防壁など作れないが、万がいちの足止めくらいにはなる。

 この簡易防衛拠点にも多くの戦士や治癒師などが集まり、戦いの準備が着々と進められていた。

 決戦は近い。誰もがその空気を感じ取っている。


 周囲の山々を見ると、穏やかな斜面の山は少なく、どれも切り立った崖の多い岩山ばかりで、ふもとの部分だけが木々におおわれている状態だった。

 犬亜人の住む洞穴が多くあるという北の山まではかなり距離が離れていて、山裾やますそにある森林の手前には、犬亜人の軍勢が守りを固めていた。

 奴らの数は激減しただろう。昨日見た黒い戦列の規模は、ぱっと見ただけでも消耗しているのがうかがわれる。

 こちらも準備を整え一気に敵を蹴散らしたいところだ。


「あ──、いたいた」

 天幕の間を歩いていると、横から声を掛けられた。

「ん?」

 そこには見覚えのある三人娘の顔。

 三美人の冒険者などと呼ばれているダリア、ラピス、フレジアの三人だった。

「おお──、君らも来てくれたのか」

 そう声を掛けるとダリアは寂しそうに、ラピスは申し訳なさそうな顔をする。

「ついさっき鍛冶屋に行ったら、あんたらがこっちの戦いに参加しているって聞いたから……、ちっくしょ。一日早ければ戦いに参加できたのになぁ」心底悔しそうに言うダリア。

「安心しろ、これから犬亜人との決戦だ」

 そしてフレジアの横には──さらに申し訳なさそうな顔のカーリアの姿があった。


「カーリア! 来ちゃったのか……」

 俺は複雑な表情をしてしまっただろう。彼女は強力な魔法剣が使えるので戦力的には頼りになるが、精神的には未熟な為、こうした戦場に彼女を参加させるのは反対だったのだ。

「だって……メイやユナも心配だったし──団長も、片足だけなのに、大丈夫かなって……」

 彼女は叱られるのではと考えているのか、ビクビクとした様子でフレジアの横に立っている。


「だっ、()()!」と、気弱なフレジアが俺に向かって大きな声を出す。

「カーリアは大丈夫! 戦えるよ! それに危険になったらわたしが守るから!」

 お互い気の弱い者同士、仲がいい二人。

 俺は「分かった。充分注意するように」とだけ告げる。彼女らの戦力が増強されるのは頼もしい事だ。


「あの──それと」と言ったのはラピス。

 彼女が差し出したのは、俺が彼女の為に造っておいた魔法の剣だった。

「造っていただいてたんですね。ありがとうございます。──料金は支払っておきましたので」

「そうか。ならそれを犬亜人との戦いで思う存分使ってもらうとしよう」

 こうして彼女ら三人全員に強力な魔法の武器が行き渡った訳だ。


「レーチェは大人しく留守番しているな?」

 カーリアに尋ねると、少女はこう打ち明ける。

「うん。──けれど、私がパールラクーンに行くって言ったら、すごく止められて……それで『わたくしも行きますわ!』って言い出したんだけど、リーファさんに止められてた」

「だろうな」俺は内心ほっとしながらうなずく。


「にしても、よくこっちへ来られたな。ちゃんとレーチェを説得してからこっちに来たんだろうな?」

 それに対してカーリアはフレジアの方を見ると、旅団の仲間と共に戦うという決意と、旅団の仲間を守りたいというフレジアの想いが強かった訳だ。

 フレジアが戦場に出ると言い出せば、ダリアもラピスも放ってはおかないだろう。

 ともかく強力な助っ人が来てくれたのは間違いない。

 俺は新たに加わった仲間達に、戦場での戦い方や敵の情報について説明する事にした。

三美人とカーリアの合流で戦力アップ。

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