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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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広原での野営

 犬亜人ババルドを撃退すると、奴らの群れは北にある山の方へと逃げて行った。そのふもとには大きな森林がある。

「あの山にも大きな洞穴があるのです」

 通信機から管理局の職員が説明してくれた。

「あの犬狼の王(バロンレガルム)は今、洞穴の中に入って守りを固めているようです」

「洞穴の中で戦うつもりか?」

「いえ、洞穴の周辺に犬亜人の軍勢で守らせています。もしかすると──洞穴で犬亜人の複製コピーを生産しているのかもしれません」

 その話を聞いていたナンティルの副官的な猫獣人フェリエス達は、今すぐ攻め込みましょうと訴える。


「──いや、今は東と西の部隊が北に進行し、山脈に残る敵を打ち倒しながら、こちらに集まるよう指示を出しているにゃ。決戦は彼らが集まった次の日か、あるいは洞穴から犬狼の王が突撃して来た時にゃ」

 ナンティルは冷静に言う。

「それでいいにゃ?」と、俺に意見を求めてきたので、俺は肩をすくめつつ言う。

「もちろんフォロスハートの神によって体力を回復した今、すぐにでも攻め込んで行きたいところだが──洞穴の前には森があるようだな?」

「うにゃ」

「森に軍隊を進ませるのは危険かもしれない。俺達は先の戦いに勝利し、このまま敵を攻め滅ぼせると考えて、気が緩んでいる者も居るかもしれない。今は仲間の到着を待ち、確実に敵を──犬狼の王を討ち取れる体勢を整えるべきだ」


 洞穴の中に突撃する前に森の中で多くの犠牲者が出るかもしれない。何しろ森の中での戦いに慣れている者は少ないのだから。


「もし左右にある森にも犬亜人が潜伏しているとしたら、こちらから攻めると挟み撃ちを食らうかもしれない。だからまずは攻める振りをして、敵が左右から出て来たら即座に後退し、塹壕ざんごうまで戻って防御を固めよう」

 そう言った俺の意見に反対する者も居たが、ナンティルや数人の部隊長は賛成してくれた。




 こうしてナンティルらと簡単な会議を済ませると、山脈の合間にある広原の手前に陣を張った場所で休憩する事になった。

 空はすでに明るくなり、朝日が山の陰からそっと姿を見せ始める。

 用意された天幕テントに入ると、そこにはアディーディンクとレオシェルドにリゼミラ。そしてカムイやエウラ。レンネルにエアネル。ユナとメイも居た。


「皆、お疲れさん。カムイ──助かった。ありがとうな」

「いえ」と、控え目に言うカムイ。

 遅れてヴィナーとウリスも天幕に入って来た。

「お前たちも来ていたのか」

 そう言うとヴィナーは緊張した面持ちでうなずき、「なんとか後方から攻撃支援してた」と話す。

 ウリスも弓矢で敵の侵攻を食い止めていたのだ(彼女の魔法弓ならかなりの戦果をあげただろう)。俺は彼女らの働きに礼を言い、その勇気を褒めてやる。


「よく危険な戦場まで来てくれた。その勇気に感謝する──。ところでカムイ、エアネル。その武器はどうだった?」

「最高!」

「最高です」

 と二人は元気に言う。

「エアネルは槍の連続突きに魔法の刃を撃ち出す攻撃で、一気に五、六匹の敵を倒したんですよ」

 彼女の弟レンネルは得意そうに言ってカムイを見た。

「俺も──夢中で戦っていたので、何体とか覚えてないけど。たぶん全部で五十体くらい倒したかな……」

 そんな事を話し、ウリスやヴィナーも加わって誰が活躍したかを競い合っている。


「メイもユナも、よく来てくれたな」

「怖かったですけど……私には強力な腕輪もあるし、絶対に参加しなくちゃ駄目だって思ったので」とユナが言うと。

「私も団長にばかり戦わせるわけにはいかないから」とメイが言う。

 二人は異なる力と技で多くの敵を倒し、仲間を救ってくれた。──まさかこうして強力な戦力になってくれるとは。

 旅団の仲間達がこうして強くたくましい戦士に成長してくれたのは俺にとっても、誇らしい気持ちにさせてくれる。


「リトキスはどうした? ここには来ていないのか?」

「あ、リトキスさんは、武闘大会の後にヴォージェスさんに呼ばれて……」

 俺の問いにカムイが答える。──リトキスはどうやら別行動を取らされているらしい。ヴォージェスに依頼され西の守りに回されたと聞かされた。

 西にはヘルフェルト霊山もあり、そこを奪還するのにリトキスの働きが必要になったらしい。




「ところで犬狼の王を見て、オーディスさんは何か叫んでませんでしたか?」

 とカムイが言い出した。

「ああ……それが、狼の被り物の下から姿を現したのは、以前にフォロスハートから放逐され、混沌こんとんに落とされたはずの男だったんだ。──ただ、それは顔がその男であり、戦いの技術とかはまったく別人のものだったが」

「男? 男の顔に見えたんですか?」

 カムイが奇妙な事を口にした。

「俺には()()()()()()()()()()()んですが……」

「へえ──、僕にはただの化け物にしか見えなかったけど。──そう、混沌の尖兵せんぺいみたいな顔だったな」そう言いながら欠伸あくびをするアディー。


 どうやらあの化け物は、見る人によって見える姿が異なるらしい。最初──奴の顔は、黒い闇におおわれている様に見えていた。きっとそれは奴の本質そのものを表した姿で、それを誤魔化すみたいに、見る者によって姿を変える、奇怪な現象を形作っているのだろう。

 奴が混沌そのももであるのは間違いない。


「ひとまず皆、敵が攻めてくるか、こちらの戦力が整うまでは休めるのだから、今は体を休めるようにしよう」

 そう言って俺やアディーはいち早く横になり、仮眠を取る事にした。

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