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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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オーディスワイアの危機

 俺やリゼミラやレオシェルドは前線を支えようと懸命に戦った。アディーディンクも俺達だけでなく、猫獣人フェリエスやフォロスハートの兵士達に強化魔法を掛け、誰もが奮戦していた。


 にもかかわらず敵の攻撃は止む気配がない。

 一度後退し治癒師に回復してもらうと、回復薬を口にし、もう一度戦いに加わろうと戦列に向かう。


 仲間達は戦狗バルガンに苦戦しているようだ。

 大きい体を持つ相手に恐怖を感じ、致命傷を与える攻撃に入れないのだ。

 冒険での戦いに慣れた俺達なら相手の攻撃をギリギリでかわし、敵に深手を負わせる攻撃を狙う覚悟があるが、彼らにはそうした気迫がない。

 どうしても危険な攻撃を振るう相手にたじろいでしまうのだ。本能的なものが恐れを感じさせ、踏み込む一歩が踏み出せない。

 勇気と言えば聞こえはいいが、それは無謀でもある。

 だが攻撃をギリギリで避けるというのは、冷静な判断力と決断力が必要だ。一瞬で決まる命のり取り。


「生き残りたければ躊躇ためらうな!」

 俺は後ろから声を上げ仲間を鼓舞する

「脇腹や手首を狙え!」

 指示を出しつつ、彼らだけで戦狗を倒せるよう周囲から襲い掛かる犬亜人ババルド共を倒していく。


 ぶうん、と大きく剣を薙ぎ払った相手に接近し、一人の猫獣人の戦士が手にした槍で戦狗の脇腹を突き刺した。

 槍は鎧を貫通し深々と肉体をえぐる。

「グオォアァッ!」

 戦狗は吠えて片膝を突いた。

「今だっ、首を狙え!」

 俺が声を上げると飛び出して行った猫獣人の剣士が戦狗の喉を切り裂き、その巨体を地面に叩き伏せた。

「うぉおぉおおっ!」

 周りからも歓声が上がる。




 戦狗はその後も数体あらわれた。

 危険で──危険な。引くに引けない戦いだった。

 辺りが暗くなり始めた頃、俺達の疲労は頂点に達しようとしていた。誰もが二度から三度の治療を受ける為に後方に下がり、腕の筋肉に疲労を感じながらも懸命に戦い続けている。


(これは──ここが、この戦いの分水嶺ぶんすいれいになりそうだ)


 俺自身の疲労も限界に近づいている。

 剣を握る力も徐々にだが弱まりつつあった。

 衆寡不敵しゅうかふてき──そんな言葉が頭をぎる。


(やめろ、迷うな。戦い続けろ!)


 俺は仲間が前方で戦うのを見守りながら、己の頬を平手打ちする。

 ここで退くなどあり得ない。前進あるのみ。

 犬亜人の群れも無限ではない。


(元気が無くても、気合いがあればなんでも出来る!)


 俺は心の中で自分自身をそう鼓舞こぶした。

 元気だけが取りそうなレスラーも言っていたではないか。「気合いだ、気合いだ」と。


 我ながら無茶苦茶な理屈だと思いながら、武器を握る手を下げ始めた猫獣人を下がらせる。

「交代だ! 下がれ!」

 うにゃぁ……という、弱々しい声を上げながら下がって行く戦士。

 俺は裂帛れっぱくの気合いと共に斬破を放ち、並んでいた犬亜人を三体、その一撃で斬り裂いた。

「ウラァアァァッ‼」

 さらに斬破で敵を引き裂きながらどすん、どすんと音を立てて迫って来る戦狗に、渾身の力で破砕撃を浴びせ掛ける。


「グァゥウッ!」

 大きな剣で防御し、堪える戦狗。

(浅かったか⁉)

 破砕の威力が弱かったか……、奴は剣を振り上げて反撃してきた。それを避けるつもりだったが……


「ガシュッ」

「ぐわぁっ⁉」

 横に避けたつもりだった。

 しかし疲れていたももの筋肉が義足を重いと感じ、地面を蹴った右足を引き戻すのが遅れ、義足の下の部分を一部破壊されてしまった!

「ちぃっ……!」

 倒れる訳にはいかない。その思いでなんとか──折れてしまった義足の足板を地面に突き刺し踏み留まる。


「グォアァァッ‼」

 戦狗は猛然と襲い掛かってきた。

「あめえんだよ‼」

 俺はまだ戦える!

 闘志は魂から消えていない。

 例え足がもげようとも──それだけで敗北を認めたりはしない!

 左足に体重を乗せて腰を落とし、手にした魔剣に集中して横薙ぎに斬破を放つ。


「ハアァァッ!」

 鋭い一閃。

 空気が引き裂かれるような音がして、巨体を持つ戦狗の胴体が上半身と下半身に切断された。

「グギィャァアッ!」

 その後方に居た犬亜人も引き裂かれ次々に倒れていく。


「どうだっ!」

 俺は気合いを込めて声を張り上げる。……しかし義足を直さなければ。

 義足に使う足板の予備は持って来ているが戦いの最中だ。早く後退し拠点の天幕まで戻らなければ……!

 俺の焦りを感じたのか、犬亜人は仲間の死体を物ともせずこちらに突撃して来た!


「英雄殿を守るにゃっ!」

 そんな声がして、後方に居た猫獣人の戦士が敵に向かって突撃する。

 だが──敵の数が多い。

 敵は猫獣人を押し戻す勢いで俺に迫り次々に攻撃してくる。


(やべぇっ……!)


 右足を引いてしまい、地面に踏み留まる事が出来ずに俺は地面に倒れ込んでしまった。

「ギュアァァッ!」

 二体の犬亜人が剣を振り下ろしてくる。

 俺はなんとか耐えしのごうと魔剣で身体を守ろうとした──

衆寡不敵=(「衆寡敵せず」とも)少人数では多人数に勝てない、の意。


ピンチに陥るオーディスワイア。義足を破壊された彼は──

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