戦狗の襲撃
予定どおり火曜日に更新。時間は早め!
毎日の戦いに勝利を刻め!(?)
その日はリゼミラやレオシェルド達が、猫獣人の戦士を鍛える為に訓練を行っていた。
俺もそうした訓練に参加したが、猫獣人の戦士の中にもなかなかの手練れが居るのを知った。多くは平均的な武器の扱いや技しか身に付けていないが、強い者は中堅くらいの冒険者に匹敵する技量は持っている。
そうした連中を鍛え上げ上級の冒険者になれるくらいの実力を身に付けさせる。二人の仲間はそういった仕事にも懸命に取り組んでくれた。
アディーディンクの方も魔法使いの猫獣人に戦術的な魔法の使い方を教えたり、仲間の補助をする時機などについて説明したりしている。
俺はというとやはり多くの時間を鍛冶職人の教導に費やし、猫獣人の戦士達を支える職人達を育てる事に取り組んだ。
そんなこんなで夕暮れが近づいて来た頃、鐘が打ち鳴らされた。──敵襲の合図だ。
防衛線の手前で椅子に座って話していた俺達。
「まってました」そう口にしたのはリゼミラだった。
「歓迎してやろうじゃない」続けてそう言う。
殺気立つリゼを無視して立ち上がる。
「アディー。支援を頼んだぞ」
小さな大魔法使いは「まかせて」と笑顔を作って言った。この前の戦闘よりも余裕を持っている感じだ。
今回は敵の行動予測が的中したのもあるだろう。
管理局の監視飛翔体を使った偵察が功を奏した形だ。
「今回の戦いで犬亜人は戦狗を投入してくるはず。この戦いで奴らを押し返したらその勢いのまま山脈近くまで攻め込んで行く予定だ。気合いを入れていくぞ」
レオとアディーが頷きながらそれぞれの言葉で応える。リゼミラは二本の剣の柄を握ってにやりと笑い「暴れる準備はできてる」と応えた。
「そうだな。しかし、冷静さも忘れるなよ。仲間との距離をあけながらも離れ過ぎずに、他の兵士達を守って戦うようにな」
夕食前の戦いだが腹は減っていない。
軽く訓練の相手をしていた為、体は温まっている。体は軽く、いつでも戦闘に参加できる気力に満ちていた。
装備を整え前線に向かおうとした時に、前方で敵を待ち構える味方の戦列からどよめきが起きた。
「なんだ、なんの騒ぎだ?」
リゼミラが一人、戦列の方に駆け出す。
俺やレオシェルド、アディーディンクも兵士の列に加わりながら、いったい何があったのかと問う。
「敵陣の中に──戦狗の姿が見えるそうですにゃ」そう言った猫獣人の戦士はひどく怯えている様子を見せる。毛並みや耳は垂れ、一回り小さくなったみたいだ。
兵士達の間を通って最前線に出ると視線の先にある黒い軍勢の中に、一際おおきな体を持つ鎧姿の犬亜人らしい人影が見えた。通常の犬亜人の二倍近い大きさがある。
「図体だけで勝てる訳ではないぞ」
俺がそう呟くと周囲に居た猫獣人の間から声が漏れ、それが次第に大きな一固まりの咆哮となって戦場に鳴り響いた。
こちらの気迫の籠もった鬨の声を聞いた所為か、犬亜人共も大きな叫び声を上げて威嚇してくる。
そして奴らは武器を振り翳して突進して来た。
「迎え撃てぇぇっ‼」
後方から叫ぶ声が聞こえ、次々に投石機から岩や爆破弾が放たれた。
大きな衝撃音が戦場に響き、突進して来た犬亜人の群れを粉砕する。
投石攻撃を免れた奴らが攻め込んで来る。
先頭を駆けているのは通常の犬亜人。
その後ろから大きな人影がぐんぐん近づいて来るのが見えた。
そいつは走っている訳ではなく、大きな歩幅でこちらに向かって来ているのだ。
威圧的な影が暗闇の中から迫り、味方の間に恐怖と動揺が走る。
「早めに潰しておくべきだな」
篝火の照らす領域に敵が入り込んで来た。
仲間と共にまずは犬亜人共の先陣を殲滅にかかる。
いいぞ、昨日よりも味方との連携が取れている。──俺は敵を一息で三体倒しながら戦狗が近づくのを待った。
大きい──二メートルは確実に超えている。
「グォァアァァッ!」
そいつは俺を金色の眼で睨みつけると咆哮し、どすん、どすんと、大きな音を立てて迫って来た。
「正面から相手にするかよ」
俺は倒された犬亜人の死体を避け、周囲に犬亜人の居ない場所へ移動し、戦狗を迎え撃つ。
振り上げた大きな剣が地面に叩きつけられる。
その一撃を避けた俺は接近して腕と足を斬りつけた。出来る限り防具を避けて狙ったが、二撃とも鎧を傷つけただけに終わってしまった。
「おっと」
掴み掛かってきた腕を躱し手首を斬り裂く。
今度はしっかりと防具の薄そうな場所を狙い、力を込めた一撃を振り下ろす。
「グアァァッ!」
手首を斬り落とされた戦狗が悲鳴を上げる。
仰け反った時、篝火に照らされて奴の体を覆う鎧部分がしっかりと確認できた。
俺は立ち上がった戦狗に迫ると義足を使って思い切り跳び上がる。
「フンヌッ!」
空気を吐き出し、腕の振りに集中して魔剣を薙ぎ払う。
首の根本を渾身の力で狙い、兜を付けた相手の頭部を斬り飛ばした。
「どずうんっ」という大きな音が響き渡る。
「まずは一体」
さらに二体目の戦狗がこちらに向かって来るのが見えた。仲間が倒されたのを見て怒りに燃えているような、くぐもった唸り声を上げながら駆け寄って来る。
「ゴオァアァッ!」
ぶぅん、ぶぅんと、大きな剣を振り回す相手。
周囲に居る犬亜人がその大鉈のごとき刃に巻き込まれ、骨まで砕かれて弾け飛ぶ。
「敵も味方もお構いなしかッ」
繰り出される大振りの攻撃を躱しながら斬りつけても奴の鎧に弾かれてしまう。防具を貫通して攻撃するには、しっかりと踏み込んで体勢を崩さずに攻撃したいところだ。
「ガチィインッ!」
攻撃を躱しながら反撃したが、やはり踏み込みが足らず腹部を覆う装甲に刃が弾かれてしまった。
(くそったれ──粗末な金属板を重ねて防御力を高めるくらいの知恵は回るらしい)
俺が斬りつけたのは二枚くらいの薄い鉄板で、戦狗は構わず反撃してくる。
「グルァアァッ!」
薙ぎ払った大剣を背中に回し、その勢いのまま剣を振り上げる戦狗。
大剣を振るう戦士の基本的な攻撃だが、その巨体から振り下ろされる攻撃は恐ろしいものに変わる。
「ガズンッ」地面を深く斬りつけた大剣。
先ほどの戦狗と同じだ。力任せの攻撃が多く、攻撃後の隙を考えていない。
俺は奴の背後に回り込みながら跳び上がり、首を狙って斬りつけた。身体を回転させながら大きく振り抜いた一撃。
その攻撃で二体目の戦狗を討ち取った。




