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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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ヴォージェスとアラストラ

 この場に居る者達が一斉にこちらを見た。

 唐突な提案であったが、ナンティルが俺に話を振った理由は分かる。狭い洞窟内で戦い慣れた冒険者を頼りたいのだ。

「む。──洞穴での戦いならば、俺も加わった方が良さそうだ」

 と声を上げたのはアラストラ。

 槍を使う彼が参加すれば、洞穴の奥から襲ってくる犬亜人ババルドの群れを相手に、有効な攻撃手段を持てるだろう。


「──洞窟内部の地図を見せてくれ」

 俺が管理局員に話し掛けると、男は大地の地図の上に小さな紙を広げた。

 山脈の中を通るいくつかの通路が描かれ、その奥に赤い印が付けられている。

「穴の広さはどんなものか分かるか?」

「そうですね、場所によりますが、この中央の通路なら、数人が横に並んで通れるだけの広さがあります」

 管理局員の男が指を差して、通路の広さと天井の高さについて説明してくれた。多くの通路は狭い通路らしい。


「なら……そうだな。この広い直線の通路の前に陣取る部隊を用意してもらおうか。その部隊はアラストラに頼みたい」

「……なるほどな。そこで派手に暴れて中央に敵を集め、オーディスワイア達は細い通路を使って奥に向かうのか」

 こちらの考えを読み取ってくれるアラストラ。

 こうして犬狼の王(バロンレガルム)が居るという場所まで一気に接近し、これを討伐する。この会議ではそう目標を立てたのだが──果たして……




 ナンティルらとの会議が行われて数分が経った頃、兵士が天幕テントにやって来てナンティルの元に駆け寄ると、小声で報告をした。

 猫獣人フェリエスの兵士は指揮官の指示を受けると、また駆け足で出て行く。

(にゃ)んだ? (にゃ)にかあったのかにゃ?」

 バーンズ将軍が尋ねるとナンティルはうなずく。

「どうやら敵陣の様子に変化があったようですにゃ。今日か明日にでも攻めて来るかもしれませんにゃ」

 どうやら敵陣に犬亜人が集結しつつあるらしい。

 奴ら、本当に無尽蔵むじんぞうに湧き出してくるようだ。

「ボウフラも顔負けだな」

 俺はぼそりとつぶやきながら天幕を出る。


 北にある犬亜人の軍勢を確認しようと歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「おいおい、急いでどこへ行く?」

 振り向くとヴォージェスとアラストラが近づいて来る。

「ああ、お久し振りです」

「まったく、戦争の事も重要だが。お前の旅団の後輩達について、何か聞きたい事はないのか」

 俺はヴォージェスの言葉に首をかしげながら、その言葉の意味について考えたが、これといった答えが見つからない。


「なんの事でしょうか」

「おいおいおい。お前の旅団からも二名の冒険者が武闘大会に出ただろう」

 そう聞いてなるほどと思い当たった。

「ああ、そうでしたね。何しろ大会が始まる前に、すぐにこちらに来てしまったので、大会どころじゃありませんでしたよ」

 俺は肩をすくめつつ、二人の屈強な男達と肩を並べて北に向かって歩き始める。


「薄情な奴だなぁ」

「そう言われましてもね。こちらは戦争に使う道具を揃えたり、武器を作ったりと忙しかったんですよ。この義足を作るのも大変でしたし」

「ああ、その奇妙な義足の事は聞いている。それに、エルニスのために魔法の力を持った錬成品を作ったのだろう? お前の働きには管理局員も舌を巻いているぞ」

 それで、リトキスとカムイの成績は? そう尋ねると、初老の男は首を左右に振ってボキボキと首を鳴らす。


「うん? どうだったかなぁ……」

 などとトボケるので、アラストラの方を見て答えを言うよう目で訴える。

「はは……うん。二人の活躍についても聞いたよ。何しろうちのレクトと決勝戦で闘ったのが、そちらの旅団の若者だったからな」

 そうか、カムイは決勝まで進んだのか。快挙じゃないか。俺は心の中で大きな喜びを感じている自分に気づき、旅団の仲間の活躍がこんなにも自分を勇気づけるとは──と、新たな発見をしたのだった。


 最初に出会ったカムイは、いかにも駆け出し風の、冴えない少年に過ぎなかった。それが今や若手の中でも一番の成長株となり、さらには同年代の冒険者達と競い合う大会でも、好成績を残したという。

 こんな嬉しい話はない。


「……それで、どっちが勝ったんだ?」

 と、アラストラから決勝での勝敗を聞こうとして、俺はすぐに首を横に振った。

「──いや、やはりいい。本人から聞くとしよう」

「そうか」

 アラストラは表情には出さず、カムイとレクトの決勝戦はかなり盛り上がったとだけ話してくれた。

 二人の若者の行方についても気になるが、それよりも今後の戦争の行方の方が気掛かりだ。


 ヴォージェスはカムイとレクトが闘った決勝戦を見ていたらしく、しきりに話したがった。

「若者の競い合う姿というものは、改めていいものだと思ったぞ」

 などと語りながら、各都市に音声放送をおこなったと話す。

 通信機を使い、ラジオに似た使い方をしたようだ。


 というのも今回の武闘大会でヴォージェスが先頭に立ち、改めて旅団と管理局、市民の一致団結が呼び掛けられ、パールラクーンでの戦争に、フォロスハートの兵士や冒険者も参加する事を求めたからだ。

 その放送を各都市に流した事で、今後さらにパールラクーンに多くの戦士が参加するだろう、ヴォージェスはそう言う。

「……その前に決着をつけられたらいいんですが」

 二人が言うには西にある陣地での戦闘も、敵の圧倒的な数を押し返すのに必死らしい。

「奴ら一体一体の力はどうという事はない。──しかし、あれだけの数を相手にするとなると、アラストラのような手練れがあと十人は欲しいところだ」と五賢者は言う。


「ここ中央での戦闘が一番激しいようですが」

「うむ。しかし、ここにはオーディスワイアにリゼミラ、レオシェルドらも来たと聞いた。それならば大丈夫だろう」

 ヴォージェスは笑いながら「任せたぞ」と俺の背中を強めに張る。

「まあ、なんとか……」

 背中をさすりながら、俺は仲間達が立ち話をしている所に向かって歩き出した。

高評価とたくさんのブックマークに感謝します。

次話は火曜日に投稿しますね!

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