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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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戦いの跡に

 ナンティルは兵士達に声を掛けて、戦場に残った敵の武器や防具を全てぎ取るように指示する。

 それを見ていた俺はナンティルを通して、犬亜人の死体を五体ずつ、三ヶ所に並べるように願い出た。

「死体が消えるというやつを確かめるにゃ?」

「ああ」

「今回の死体は夜明け前のものにゃから、たぶん明日の夜の間に消えると思うにゃ」

「問題は──この適当に選んだ十五体の死体の内、何体が消えるかだ」

 半数が消えたら、それだけ混沌こんとんの力で生み出された敵が入り込んでいると考えられる。残った死体の分だけ、敵の勢力は弱まっているはずだが、もし混沌の力によって無制限に生み出されるのだとしたら、今後の戦いも厳しいものになるだろう。


 さすがに無制限に、犬亜人ババルド複製コピーみたいなものを生み出せるとは思えないが。

 俺は死体を調べたが、区別はつけられなかった。どれが混沌の力で作られたかなど、まったく見抜けないのだ。──もしかすると、ここにある死体は全部本物、という可能性もあるが……

「明日になれば分かるにゃ」

「明日も連中が攻めて来たりはしないだろうな?」

「さすがに負けた直後に襲って来た事は、一度も(にゃ)いにゃ」

 それなら良かった。俺はそう答えながら欠伸あくびをする。

「少し横に(にゃ)ってくるといいにゃ。()()()()

「英雄言うな!」




 後方の陣地に戻ると、猫獣人フェリエスの兵士から敬礼されたり、頭を下げられたりしながら──俺は用意された天幕テントまで戻った。

「おつかれ」

 近くの天幕に入ろうとしていたリゼミラに声を掛けられた。

「ああ」

 大活躍だったな、そんな風に言ってきた相手に、苦々しい声で答える。


「本来ならおまえかレオが担ぎ出される予定だったのに……失敗した」

「はっはっはっ、いいじゃん。実際あんたは以前と同じく戦えるし、犬亜人くらいなら一人で百体くらい倒せるだろ? あたしらも手を貸すし、せいぜい派手に暴れて、あのワン公どもをひねりつぶしてやろうよ」

 そのなんとも暴力的な意見には賛成だった。

 誰が活躍しても構わない。

 敵を排除し、さっさとこんな戦争に決着をつけたいのだ。例え残虐非道と言われようとも、パールラクーンの仲間を救えるのなら構わない。


「少し眠る。おやすみ」

 俺がそう言うと、リゼもおやすみと言いながら欠伸あくびを噛み殺していた。


 天幕に入るとアディーディンクが寝袋で眠っていた。

 レオもちょうど横になったところだった。

 俺も寝袋に入ると──すぐに眠気が襲ってきて、微睡まどろみの中に沈み込んだ。


 * * * * *


 眠りに落ちると、あっと言う間に時間が過ぎ去った。

 夢を見る間もなく。──もしかしたら見た夢を忘れただけかもしれないが──気づいたら昼頃になっていた。

 レオはすでにどこかへ出掛けたらしい。

 俺はアディーと共に天幕を出て、食事はどうするかを考えていた。するとそこへ一人の猫獣人の兵士が近づいて来て、指揮官の元へ案内しますと言ってくる。


 ある開かれた天幕の前を通ると、そこには管理局の職員達が居て、何かを見つめている。──監視飛翔体を飛ばして、犬亜人の軍勢を調べているようだ。

 管理局の連中が居る天幕と、指揮官が居る指令所はすぐそばにあり、情報の交換をすぐに行えるように配置されていた。

 指令所の天幕に入るとナンティルがこちらに気づき、食事に誘ってくれたので、俺とアディーは彼女と一緒のテーブルを囲む。


「昨日はご苦労さんにゃ」

 テーブルには腸詰め(ソーセージ)や干し肉、いくつかのパンが並べられていたが、野菜は出されなかった。時間的には昼食なので、肉を中心に食えという事なのだろう。

 小さな腸詰めは変わった味がした。

「それは大蜥蜴おおとかげの腸詰めにゃ」

「うえっ」

 アディーが声を上げた。

 それは不味まずくはないが、奇妙な固さを感じる触感の、一風変わった腸詰め。


「蜥蜴か……まあ、悪くないな」

 あぶら分がほとんどなく、さっぱりとした味。

「この蜥蜴は果物を中心に食べる種類にゃから、匂いも悪く(にゃ)いにゃ」

 なるほど。そう納得しながら食べ終える。


 するとナンティルは本題に入った。

「犬亜人の偵察をフォロスハートの管理局員がおこにゃってるにゃ。北にある山脈を上空から探ったり、敵の軍勢を調べたりしているにゃ」

 そのあいだ俺達は空き時間で兵士の訓練をしたり、隊列について学ぶよう言われた。

「隊列については冒険者の感覚があるから、なんとも言えんな。戦いになれば、そうした戦闘感覚が先に出るものだ」

 俺の言葉にうなずきながら、ナンティルは拠点の方に鍛冶場があるので、そこで武器を作ったり、錬金台もあるので、武器の強化をして欲しいとも言う。


「おいおい、こき使う気まんまんだな」

「あったりまえにゃ。戦場で呑気のんきにしている奴(にゃ)んて、邪魔(にゃ)だけにゃ」

 へいへいと答えつつ、しばらくは敵も攻めて来ないだろうという話になり、俺はそれならこちらからも攻め込むべきだと訴えた。

「もちろんにゃ。しかしまずは敵の、混沌の活動拠点を探ら(にゃ)いといけないにゃ。かにゃらず奴らが()()()()()()(にゃ)っている場所があるはずにゃ。それを突き止めたら、そこに向かって一斉に反撃開始するにゃ」

 その為に西や東にある防衛陣地とも連絡を取り合い、一気に敵陣に雪崩なだれ込む準備もしているらしい。


 山脈と山脈の間に連中の後方拠点があり、そこの防衛線を押し切らないとならず、敵の数が減らないと、その拠点を落とすのは難しいと考えているようだ。

「分かった。それまで奴らの侵攻を食い止め、そこで敵の数を減らせたら、一気にこちらから打って出る訳だな」

 そう確認を取るとナンティルは頷き、俺に拠点まで下がって武器などを強化するか、兵士達の訓練に付き合うよう命じるのだった。

敵の増殖をする中枢の探索。それがこの先の展開を変える事になるでしょう。

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