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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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戦いの幕開け

登場人物設定と短編を集めたものを投稿してあります。

そちらもよろしくお願いします。


武闘大会でカムイやリトキスが闘うお話も投稿する予定です~(リトキスについては──どうなったかだけの報告)

 夕食を取ると俺やアディーディンクは一つの天幕テントで早めに眠る事になった。

 夜になると奴らが攻撃を仕掛けてくる可能性が高いのだ。

 レオシェルドもリゼミラも身体を休める事にし仮眠を取った。

 数時間の睡眠だ。これから戦うという緊張の中で睡眠を取るというのは、簡単な事ではない。だが俺達は割とあっさりと眠りにいた。冒険中にも危険な場所で寝泊まりをした事もある所為せいだろう。


 体内の気の流れを調節し、睡眠に就きやすくすると同時に、短時間で体力や精神力を回復する方法。こうした技術も冒険者には必要だ。




 俺は夢の途中で起こされた。

 その夢の中でナンティルが戦っていた。俺はそれをただ眺めているだけしか出来ない。声も出せず、ただ上空から眺めている様な感覚。

 彼女は大きな黒い気配と戦っており、黒い霧の様な混沌こんとんに包まれると──突如、身体からはげしい光を発した。それはまばゆい金色の光。


 これが女神の力による暴走か? ナンティルの身体は光を放ち、大きな黒い霧のかたまりを次々に斬り裂いていく。

 圧倒的な速さと破壊力。

 光をまとった斬撃が離れた敵をも斬り倒す。

 光の刃が飛翔する連撃。

 一瞬で五発もの斬撃が飛び交った。素早く、苛烈な攻撃。


 しかし──彼女は黒い霧を消滅させると、その場に倒れてしまう。……そこで目が覚めた。

「なんだったんだ……今の夢は」

 簡素な寝袋の形をした寝所の中で目を覚ました俺は、騒がしい音に気づき、上体を起こす。

 しまった、ここは戦場なのだ。

 ゆっくりと目覚めている場合じゃない。


「オーディスさん、外が騒がしいですよ。もしかすると敵が攻めて来たのかもしれません」

 寝袋の横が開いている為、そこから手を伸ばし、魔剣を掴んで引き寄せる。

 足元に置いてある義足を装着している間に、アディーとレオは天幕を出て行ってしまった。

「落ち着け……まだ慌てるような時間じゃ……」

 そんな言葉を自分に言い聞かせながらも、天幕の外から聞こえてくる声に耳をそばだてる。

 しっかりと義足を固定したのを確かめると、軽硬合金フラウレグムの胸当てと籠手を身に着け立ち上がり、天幕を急いで出た。


 外はまだ夜だ。

 しかし陣地の周囲には篝火かがりびかれ、煌々(こうこう)と辺りを照らし出している。


「おそい」

 アディー達のそばに居るリゼミラが俺に言った。

「すまん、状況は?」

 離れた場所から空気を殴りつける様な音が聞こえてくる。どうやら投石機から岩や何やらが放たれているようだ。

「オーディス──と、その仲間にゃかま達も出番だにゃ」

 駆け寄って来たナンティル。

 彼女の指揮の下、投石攻撃が行われ、次々に投石機がうなりを上げて攻撃を続けていた。

 犬亜人ババルドが攻めて来る方向から、大きな爆発音が響いてきて、投石機に爆破弾が積み込まれているのだと理解する。


「爆破弾、うまく機能しているみたいだな」

「にゃ。今のところ問題(にゃ)いみたいにゃ」

 と、そこへ猫獣人フェリエスと人間の兵士が近づいて来た。

「指揮官。そろそろ守備隊と敵がぶつかります!」

「前線の防衛は整っていますが、数が数なので」

 そういえば、部隊長をやっているという話だったが……

「指揮官なのか」

「この基地を守る兵士達を纏める役割にゃ。さっそくにゃけど、オーディス達にも戦いに参加してもらうにゃ」

 そう言ったかと思うと、ナンティルは前線に早歩きで向かう。


「よし、俺達も……って、おい」

 二人の戦士はあまりにやる気まんまんなのだ。

 その姿は敵陣に襲い掛かろうとしている獣の様。爛々(らんらん)目を殺意に燃やし、身体から放たれる気配は──殺意が冷たい刃をかたどるみたいに、彼らの周囲を包んでいる。


「おいっ、少し落ち着け、二人とも」

 俺は手を「パアンッ」と強めに鳴らして、冷静になるよう訴えた。

「へいきだよっ、落ち着いてるって。なぁ? レオ」

「ああ」

 確かにその気迫は鋭く、集中している様子だ。

 暴力的な気配とは違った──衝動的なものとは違った──戦闘への意欲みたいなものを感じる。

「──よし、分かった。ともかく……なんだ。俺達は冒険に出ていた時のように、互いの身を案じながらも目の前の敵を排除していこう。アディー、その辺は頼むぞ」

 杖を手にした大魔法使いがうなずく。

「任せて。攻撃もするけれど、皆の支援サポートもばっちりするから」

 やや緊張した面持おももちのアディー。

 敵の数が数なだけあって、いつもの冒険のようにはいかない。


「俺も以前のように全力でいくぜ。この魔剣もその為に造ったんだからな」

 よし、いこう。

 そう呼び掛け、俺達は裂帛れっぱくの気合いを込めて咆哮ほうこうした。

 緊張との決別。

「いくぞ‼」

 そう言って犬亜人のわめき声が聞こえる前線に向かって駆け出す。

 暗い空に光るいくつもの光──それは星か?

 大きな輝きがちらちらと輝く夜空。

 フォロスハートで生きる事を決意した俺が、パールラクーンで死ぬ訳にはいかない。


 俺の中で戦いへの衝動が沸き上がる。

 そして俺の中に忍び寄る恐怖を感じる。

 それを振り払おうと俺は、音楽を口ずさむ。

 ────それは、俺が以前いた世界で聞いていた曲。

 激しい六弦琴ギター音型リフ

 これからの戦いをいろどる、俺にとっての軍歌みたいな音楽。

 自分の内から襲い掛かる恐怖を消し去る、HM(ヘビーメタル)の鼓動。それをまるで福音ふくいんのように思い出す。


 北欧神話の戦乙女ヴァルキリーが見守るであろう戦場におもむく戦士達。その心境が理解できる気がした。


 この戦いに死すとも、俺は仲間の為に命をなげうって勝利に貢献するのだ。

 それは誇らしく、神々に対しなんら恥じる事がない。死の中に落ちようとも、自身の魂に潔白であったと胸を張って死ぬ。それだけだ。

「もっとも、死ぬ気なんてないけどな」

 俺は俺の中に大きく膨れ上がる音楽の鼓動を感じながら、戦場に向かって駆け出した。

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