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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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最前線基地

 朝になった。

 ドアを丁寧に叩く音。誰かが呼び掛けている──朝食の用意が出来ましたと。

 義足を履いて廊下に出ると、ちょうどレオシェルドとアディーディンクが出て来たところだ。

 猫獣人フェリエスの侍女は初めにリゼミラを起こしたらしく、すでにリゼミラは食堂の方に向かっていた。


「おはようございまふ……」

 緊張感のないアディーの声。

 割と度胸がわっているのは、長年の冒険による自信の表れだ。慎重、冷静──そうした態度の陰には、実力に裏打ちされた自分自身への信頼が根付いている。

 そして、仲間への信頼も。


 群れ成す犬亜人ババルドに脅威を感じても、自分の力と仲間の力を合わせれば、こうした苦難を越えられると信じているのだ。

 俺だってそうだ。仲間が居ればこそ、ふくはぎを食いちぎられても幼竜を倒し、生還する気力を持てたのだ。決して自分一人で戦っているのではない。自分が踏ん張れば、仲間が必ず助けてくれる──そう信じて戦う。

 これからの戦場での戦いも、そうした冒険していた頃の気持ちを忘れず、果敢かかんに戦いにのぞむ。


 朝食を仲間達と共に食べたが、やはりこの館の主人などは見当たらない。最初から居ないのか、それとも内気シャイな人物なのか。

 食事はフォロスハートで出されるものと似たような献立メニューで、鶏ささみを使った生野菜料理サラダなども出された。……猫獣人は野菜などほとんど口にしないものだと思っていたが、そんな事もないらしい。

 驚いたのは玉蜀黍コーン汁物スープに似たものが出た事。色は黄色ではなく、茶色っぽい──玉葱たまねぎの皮を薄めたような色をしていたが、とろみと味は玉蜀黍とうもろこしを使っている汁物に違いなかった。


 猫獣人はパンも米も食べるが、こうした汁物もいくつか種類があるそうだ。侍女が言うには、玉葱や大蒜にんにくなどは食べないが、人参や蕃茄ばんか(トマト)などの汁物も作ると話してくれた。

「それは興味深い」

 フォロスハートでも色々な汁物があるが、素材を溶かし込んだようなものは少ない。馬鈴薯じゃがいも汁物ビシソワーズ系などが少ないのは文化の違いというやつだろうか。




 そうした美味しい朝食を食べた後、俺達は北に向かう荷車に乗って最前線基地まで向かう。神殿側が用意した食料や武器などを運ぶ数台の荷車に乗って、ナンティルが待つであろう北の激戦地へおもむく。

 新たな猫獣人の戦士数十人を乗せた荷車と共に。


 中央神殿都市の北には複数のとりでがあった。

 かなり厳重な警戒網が敷かれ、北にある山脈から現れる存在に対して、いつでも反撃できるよう備えられていたのを知る。

 途中には横一直線に用意された土塁どるいや、川の水を溜める人工的な池なども用意されているのを見かけた。


 そうして長い距離を移動していると──遠くに大勢の人の姿があり、大きな砦をようした防衛拠点が見えてきた。

 大きな石造りの砦は城塞じょうさいと言っていい大きさがあり、投石機や馬車などもたくさん置かれている。

 荷車を改造した様な戦車の横を通りながら砦まで近づいた荷車。

 俺達は荷車を降りると、前線の様子を見に行く。

 数百人の猫獣人の戦士と、小獣人の姿もわずかだけだが見かけた。フォロスハートの兵士や冒険者もここには多く居て、防衛に当たる彼らの士気はとても高かったが、見るからに疲弊ひへいしている者の姿もある。


「かなり厳しい状態みたいね」

 戦士達の様子を見たリゼミラが言う。

 訓練をしている兵士の中には腕に包帯を巻きながら、まだ訓練に励んでいる者も居た。

「だな。──おそらく、彼らの旗頭はたがしらとなる英雄が居ないんだ」

 そう口にした俺を不思議そうな顔で見ているリゼミラとアディー。

「なにそれ? どういう事?」

「──つまり彼らの中心になるような、心の支えになるような、強い戦士が必要だという事だ。大勢が集まる軍隊だが、その中でも『この戦士が居るから、まだ戦える』と思わせてくれるような強者。そうした存在が必要なんだ。

 俺達が以前、金色狼こんじきおおかみの旅団の中でなんと呼ばれていたか忘れたか? それと同じようなものだ」

 ああ──と、リゼミラより早くアディーディンクが声をあげた。


 リゼミラは首をかしげながら思い出すように口にする。

「『金色狼の三勇士』って、そんな意味があったっけ?」

「要は『あの三勇士ならやってくれる』という期待を持てる事が重要なんだ。希望ってやつかな。どんなに困難な状況になろうとも『彼らが居るから大丈夫』、そう思わせてくれるもの。それが軍隊にも必要なんだ。

 何しろここに居る戦士達のほとんどは、戦争に駆り出されるなんて思ってなかっただろうし、なおさらだ。戦いは不安な気持ちや恐怖がつきまとうものだからな」

 なるほどなぁと、他人事ひとごとの様に言うリゼミラ。


「なに他人事みたいに言ってるんだ。()()()()()()()()

「はぁ?」

 俺は頑丈な女戦士の肩を叩き、次にレオシェルドに人差し指と中指を突きつける。

「おまえもな、レオ。頼んだぞ」

 レオは肩をすくめただけで返事はしなかった。

 ただ奴には、周囲に居る兵士達に「精神的支柱」が必要な事は感じている様子だ。


 前線基地からさらに北にある陣地には、土塁の他にも丸太の柵や天幕テントが数多く設置され、犬亜人に対する防衛線がしっかりと敷かれている。

 巨大な投石機や攻城こうじょう兵器に似た、移動式のやぐらみたいな物もいくつか用意されていた。


 天幕の間を歩き、人だかりがある場所に近づくと、そこには見知った猫獣人の姿があった。

 ただし彼女は、俺が今まで見てきたのとは違った鎧姿で、北の方をじっと睨んでいたのである。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 猫獣人の戦場数十人を乗せた 戦場が、何かの変換ミスかと思ったのですが、何かがわかりません。
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