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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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小獣人の国での一幕

400話超えましたね。自分でもびっくり。

 俺達は追撃を止め、死体の転がる戦場で互いの生存を確認し合う。

 肩で息をしている俺とは違い、レオシェルドとリゼミラは、ほとんど呼吸を乱していない。独特の呼吸法と内気(けい)による気の循環じゅんかんを、肉体の維持調整に回しているのだろう。

 俺も内気勁で一定の余力は残しているつもりだったが、基本的な体力の差が出ているようだ。


「なんだなんだ、だらしない」

 返り血を浴びた頬を拭いながらリゼが近づいて来て、半分笑いながら口にする。

「そう──言うな。戦いなんて、久し振りだったんだ」

 戦いの緊張は恐怖から来るもので、それが呼吸を荒くして余計に疲弊ひへいする。緊張は必要以上に筋肉を強張こわばらせ、体力の消耗が増える訳だ。──戦闘に慣れているレオやリゼのようにはいかない。


 しかしついさっきまでの俺は、昔の感覚に突き動かされていたようにも思う。

 まるで片足が義足ではなくなった頃の様に、まるで違和感なく、戦闘に集中する事が出来ていた。

 と言うよりも、義足である事をすっかり失念していたのだ。


「ぜんぜん普通に戦えていましたね」

 後方からアディーディンクが近づいて来てそう言った。幼げな顔には少しばかり疲労が読み取れた。

 指揮官を倒した後も、逃げようとする犬亜人ババルドに追撃をおこなっていたのだ。

 周囲を見回しても、犬亜人の死体しか転がっていない。

 ひゅうんっ、と音を立てて妖刀を振り下ろすレオ。その足下にも無数の死体が転がり、太刀から飛び散った鮮血が死体の上に降り注ぐ。


「あっちも無事みたいだね」

 白い壁の方を見ると、勝利の雄叫びを上げる小獣人エルニスの姿や、人間の兵士の姿が見える。

 ぱっと見、一人の犠牲者も居ないようだ。もしそうなら、犬亜人はとんだ戦略的失敗をした事になる。それを学び、二度と今回のような城攻めみたいな、無謀な遠征をしないでくれると助かるのだが。


「さあ、荷車を呼んで、シュナフ・エディンの都市に向かうとしよう」

 俺達は武器に付いた血糊ちのりを落とし、大きく手を振って隠れていた荷車と、その護衛と共に東にある小獣人の首都へ向かった。




 シュナフ・エディンの首都は「ラクシャリオ」と言うらしい。俺達に近づき、歓迎してくれた小獣人の中から「ラクシャリオへようこそ!」と声が上がったのだ。

 街を囲む壁の内側に入る前に後ろを振り向くと、戦場となった広野の掃除が行われるらしい。

 それには小獣人の武装兵器とでも言った、鎧姿の機械が使われていた。犬亜人の死体を片づけ、武器などの金属類を集める作業をおこなっている。


「あの全身鎧の中はどうなっているんだ?」

 俺達はフォロスハートの兵士達の喝采かっさいを浴びながら、大きな鉄の門を通って街の中へと入って行く。

 そこで街を案内すると言った、青銀色の髪をした小獣人に話を聞いた。


「『()()()(ギガンデル)』の事ですね? あれは私達が搭乗とうじょうして使う──本来は街を囲む壁や、建物を建築する時に使うような、工業用の機動外装です」

 なんと、あの中に小獣人が乗り込んで戦っているのか。

 強化外装パワードスーツみたいなものか。

 機動鎧を使えば重い物も軽々と持ち運べ、戦いにいても攻撃、防御の両面に優れ、犬亜人との戦いでもかなりの性能を発揮しているらしい。




 少女の様な姿の小獣人は、俺達を小さな建物の間を通って、奥に見える(人間寸法(サイズ)の)大きな建物に案内する。

 ここにある建物はそのどれもが多彩カラフルで、暖色系のオレンジ色や黄色などに塗られた壁が印象的だ。

 彼女らが住む家々は人間が住むには小さすぎる。入り口を通過するのも、腰を落として入らなければならない大きさなのを見ると、家の中で立ち上がれば──天井に頭をぶつけそうだ。


「あちらの建物なら、人間や猫獣人フェリエスでも使用できます。あそこに荷物を置いてください」

 その建物は白い壁で、人間用の大きさに合わせて造られた建物であるようだ。そこに向かう途中で小獣人が立ち止まり、大通りの先の広場を指し示す。

「あちらには怪我をした人間の戦士達が体を休めています」

 なんでも傷は回復魔法で癒せるが、失った血液は戻せないし、骨もすぐにはくっつかないのだと言う。

「なるほど、後で顔を出してみよう」

 まさかアウシェーヴィアが倒れている、などという事はないと思うが。


 小さな友人に案内された建物に入ると、二つの部屋に案内された。

「ああ、ああ、別に一つの部屋でいいよ」

 とリゼミラが言うと、小獣人の少女──の様に見えるだけかもしれない──は「とんでもない!」と、飛び上がるみたいに長い耳を跳ねさせる。

「こうしたらどうだろう。俺達はキャスティやアウシェーヴィアとは顔馴染かおなじみだ。リゼミラはキャスティ達と同室にすればいいんじゃないか」

 なるほど、とリゼミラが相槌を打つ。

「キャスティさんの──そうですか。ではこちらへ……」

 リゼミラは案内されて通路の奥に連れて行かれた。


 俺達野郎三人は部屋に荷物を置き、防具と武器は身に着けたまま、部屋の外で待つ。

「その義足、本当に戦闘用に作られた物なんですね。後ろから見ていましたけど、まるで昔のオーディスさんを見ているような活躍ぶりでしたよ」

 アディーはそう言いながら笑顔を作る。

「そうか? だが体力的にも感覚的にも、現役に近いレオやリゼに遠くおよばない感じだ。もう少し体を慣らしていかないと駄目だな」

 そんな話をしているところへリゼミラが戻って来た。そばを歩く小獣人と話しながら、楽しげにしている。


「さてまずオーディスワイア様には、私達の切り札となる『撃火魔砲ヴァルド・ガーラント』をお見せするよう言われています」

 小獣人の案内人はそう言って「塔まで案内する」と歩き出す。

「分かった。ちょっと待ってくれ、猛火の魔法核を持ってくる」

 俺は部屋に戻り、荷物の中から魔法核を持ち出す。


 建物の外に出ると、道の先で管理局の男と猫獣人の護衛が、小獣人の一団と話し合っているのが見えた。

 どうやら通信機の扱いについて説明しているらしく、通信機を手にしながら説明していた。互いに情報を交換し、犬亜人の侵攻を防ぐ点については、三種族の意思は一致している。

 俺達は彼らの側を通り、街の奥に見える青色に塗られた大きな城の様な建物を見送って、外周壁近い場所に建つ、大きな塔へと向かって行った。

パワードスーツを「強化外装」としてみました。パワードスーツって、日本のSF用語(?)らしいです。外国では「Powerd exoskeleton」(強化外骨格)と呼ぶそうです。

パワードスーツって響き、結構好きですけどね。

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