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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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魔法の力

 すると俺の後方から朱色の光が上空を通過し、戦場に居る俺や犬亜人ババルドを照らし出した。

 朱色に輝く大きな炎の球体が三つ、三方向に飛翔し、犬亜人の軍勢のど真ん中に着弾する。


「ズドォオンッ」


 爆発で犬亜人が吹き飛ばされた。

 三ヶ所で爆発した炎の球は、三十匹を超える敵を蹴散らした。吹き飛ばされた奴の中には、よろよろと立ち上がろうとしている者も居るが。

 炎に取り囲まれた犬亜人の悲鳴が、あちらこちらで沸き起こる。容赦ない魔法による攻撃。

 俺の背後。離れた場所にアディーを感じる。


 続いて小さな大魔法使いは、南側に密集する犬亜人の群れに狙いを定めたようだ。

「ルゥガート、アディエス、フェドゥア……」

 その呪文の冒頭は耳にした覚えがある。

 強力な範囲攻撃魔法。

 これを受けた敵は引き裂かれ、身に着けていた装備品もボロボロのズタズタにされてしまうので、滅多にこの魔法を披露ひろうする事はなかったが。

 集団の敵を前にした時、前衛の戦士が連戦で疲労している時などを見計らって、アディーがこの魔法を使ったのを思い出す。


「……闇より溶け出す破壊の嵐。形作られる見えざる刃。鬼神ゼスセタの妖剣よ。破滅を刻め、幾重いくえの運命をも切り裂く、狂乱の風を呼べ『鬼神嵐獄ファザル・アギルヴァー』!」


 ごうんっ、そんな音がした後。空気がこの世から消失したかの様な、一瞬の静寂せいじゃくが戦場に訪れた。

 そして次の瞬間に訪れたのは、徹底的な破壊。

 金属や肉体を斬り裂く、異様な音がしたかと思うと、南側に集まっていた犬亜人の集団から、血飛沫ちしぶきが──いや、断末魔のない、滅びが訪れたのだ。


 肉体が切り刻まれ崩壊する。

 斬撃と衝撃が数十体の犬亜人を巻き込んで、一撃で滅びをもたらした。

 衝撃で吹き飛んだ亜人の中には、腕や頭を失った者も居るようだ。

 四十以上の敵をほふった一撃。

 生き残った犬亜人から遅れて絶叫が起こる。


 正面からは小獣人エルニスと人間の混合部隊が攻め立て、後方から俺達四人が猛攻を仕掛ける。

 どちらに逃げても犬亜人には生きる活路はない。

「はぁっ!」

 俺は剣を振り上げる。慌てふためいて、こちらに武器を振り回しながら迫って来た、二匹の犬亜人を斬り伏せる。

 犬亜人どもは恐慌きょうこうにかられて逃げ惑う。

 俺と仲間達はさらに攻撃を続けた。




 ……そうだった、魔法による攻撃。それはこれほど強力なものだった。それは現代兵器のミサイルや爆撃といった物と似たような、強力無比な攻撃。

 もはや逃げる事しか出来ない犬亜人達を追い掛け、追撃するリゼミラとレオシェルド。

 俺も慈悲の心などかなぐり捨て、目の前に居る敵、北に向かって逃げようとする敵を追撃した。

 ここで一体でも多く仕留め、奴らに再び進軍させるだけの戦力を与えさせる訳にはいかない。


 逃げる犬亜人の中に、貧相な鉄鎧を身に着けた亜人戦士に囲まれた、一匹の犬亜人が目を引いた。

 そいつは他の貧相な防具しか身に着けていない連中とは違い、肩当ての付いた鋼鉄製と思われる立派な鎧を身に着け、頭から鼻先までを防御する、鉄仮面をつけていたのだ。

「奴が指揮官だな」

 俺はつぶやくと同時に、そいつに向かって突き進む事を決めた。

 幸い相手は逃げるつもりがまだない様子で、周囲の犬亜人を恫喝どうかつするみたいに吠えており、混乱し逃げようとする同胞を、手にした槍の柄で殴りつけている。


「アディー! 援護を!」

 俺は後ろに居るアディーディンクに声を掛けると、返事を待たずに敵の指揮官に向かって駆け出す。

 逃げ惑う敵を魔剣で斬り裂き、直線上に並んだ相手を蹴散らす為に、破砕撃を叩きつける。


「グギャァゥッ!」

「グワァッ!」


 地面までへこませる一撃が振り下ろされると、衝撃を受けた四体の犬亜人が左右に吹き飛んだ。

 直撃を受けた二体は頭部を砕かれ、物も言わずに崩れ落ちる。

 その衝撃音でこちらに気づいた指揮官の犬亜人は、護衛の者に声を掛け、強襲してくる人間を倒せとでも言うように、こちらに槍を突き出して威嚇いかくする。


 すると後方から八発の魔法の弾丸が鋭く飛び、五体の護衛のうち三体を攻撃した。

 薄い板金を胸当ての形にしたような鎧は、魔法の弾丸を受け止める事は出来ずに、簡単に貫通を許してしまい、戦士は膝を突いたり、倒されてしまう。


「しゃぁっ!」

 俺は勝利を確信した。

 何も躊躇ためらわない。

 仲間の、アディーの援護を受けて突き進む──この感覚。

 かつて冒険者として活動していた頃の自分がそこには居た。

 かつての自分と全く変わらずに行動し、俺は間合いを一気に詰めて、突き出された槍の穂先をかわしながら、斬破の一撃を敵の胴体に向かって薙ぎ払う。


 金属の鎧を引き裂く音。

 肉を裂き骨を砕く、鈍い手応え。

 振り抜かれた魔剣の一撃を受けて、指揮官の犬亜人が上半身と下半身に斬り分けられて、地面に崩れ落ちる。


「クォォ──ゥン!」

 指揮官が倒されるのを見た犬亜人から、奇妙な遠吠えが放たれた。

 生き残っていた犬亜人の戦士達も慌てて逃げ出したが、リゼとレオの二人は容赦なく襲い掛かる。一匹たりとも逃がしはしない、とでも言うように。

 俺も三人の仲間と共に、なつかしい戦闘のたかぶりを感じながら、逃げようとする敵の追撃を開始した。

高い評価やたくさんのブックマークに感謝します。

感想ももらえると励みになります。


感謝を込めて次話は金曜日に投稿します。

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