若い冒険者達の帰還
夕暮れ前に、昼間来た三人組の冒険者が鍛冶場にやって来た。彼らは皆疲れた顔をして現れたが、男だけは様子が違った。
「凄いですよこの剣! 昨日までとは別物みたいです!」
「いや、まあ……別物なんだがな」
強化をした物はしてない物とは違うのだ。強化を重ねて行い(失敗の危険も増えるが)、ただの鉄の剣を剣の達人に、名剣だと思わせる程の事ができた錬金鍛冶師も居るという──斬れ味だけでは無い、持つ者の身体能力を底上げしたり、魔力の力で防御力を上げる事も理屈では可能なのだ。
それが同じ武器であるはずがな無い。
「それでですね……」
若い冒険者の男が後ろに居る女二人を示す。
「彼女らの杖や弓にも強化はできますか?」
彼女らは狩人と魔法使いだ。狩人の娘は腰に短刀も装備している。魔法使いの娘が持つ杖は、普通の樫の木を使った杖。弓は櫟の木と、獣の皮、海獣の髭を使って造られている物だ。弦は動物や海獣の腱を利用して造られた物──この弓は駆け出しにしては、中々上等な部類に入る物だった。
彼女らはこの若者が鉄の剣をしきりに褒めるので、とうとう彼の意見に従わざるを得なくなった、とでも言いたげな顔をしている。
物事の表面的な事だけを見て──確かに小汚い外観の鍛冶屋だろうが──中身を決め付ける若い女にありがちな愚かさに、一々目くじらを立てていても仕方が無い。
幸いにと言うべきか、三人組はそこそこの稼ぎを得て帰って来たようだ。二人の武器を強化するだけなら問題は無いだろう──だが。
「杖に関しては複雑だな、杖自体の攻撃力を上げても、魔法には影響しないのは分かるだろう? しかし魔力を高める強化には『魔力結晶』や『魔晶石』が必要になるんだが、これは結構高価だ」
「い、いくらですか……」
銀色の長い髪をした女が恐る恐る尋ねる。俺は例の、薄汚れた布に書かれた素材の価格表を見せる事で返答した。
「それに、こんな杖を強化するくらいなら、指輪や腕輪の方がマシだろう。指輪はいくつか付ける事が出来るが、杖は基本、一本しか持てないからな」
俺は初心者の彼らに、最初の内は前衛を強化し、後衛は徐々に強化して行くのが一般的だと説明して、それなりの素材を手に入れられるようになったら、杖を造ったりするのが望ましいと伝えた。
「勉強になります」
そう言ったのは赤茶けた短髪の男冒険者だった。他の二人は腑に落ちない感じである。
だが三人は相談し合って、弓と男の持つ鉄の剣をさらに強化する事を選んだ。三人でやって行くに当たって、誰がどういった役割を担うかを考え始めたようである。
彼らはまだまだ駆け出しなのだ、男の革鎧や革の籠手、女共の革の胸当てと、安い法服では、武器のみを錬成強化した方が良いだろう。
結局彼らは宿代と食事代を残して、他は全て強化に当てる決断をした。賢明なその判断に応える為に俺は、二つの武器の錬成を入念に行う事にしたのである。




