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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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迎撃、挟撃、戦闘へ

いよいよ戦場での戦いへ……

 かなり長い距離をゆっくりと移動する事になった。

 犬亜人ババルドの軍勢から発見されぬよう慎重に、後を尾行す(つけ)る。

 アディーの掛けた「姿隠しの魔法」の効果もあり、奴らに見つかる事なく、小獣人の国までやって来た。

「むっ──あれがシュナフ・エディンの壁か?」

 青空の下にある山脈の手前に、白い壁が見えている。望遠鏡を覗いてやっと確認できる白壁。まるで雪の壁が現れたみたいに白いやつだ。

 その壁の上に大きくそそり立つ塔や、城塞じょうさいらしい建物も見える。


 小さな彼女(エルニス)らが建てたにしては、かなり高い壁や塔だ。……遠目でよく分からないが。

 広々とした草原の前で立ち止まった犬亜人の群れ。どうやら隊列を組んでいるらしい。その動きを見て確信する。指揮している者が居るのだ。

「奴ら、隊列を組織する知能があるぞ」

「意外だな。転移門先の犬亜人に似た連中も、あまり知性が高いとは言いがたい連中ばかりだったが」


 俺達は荷車を木陰に隠すと、通信機技師と護衛を荷車に残し、俺とリゼミラ、レオ、アディーディンクの四人だけで、三百を超える犬亜人の軍勢を追いかける。

「ご武運を」

 そんな言葉を背後に残し、俺達四人は武器を手に、離れた位置から相手の様子をうかがい続ける。

 白い壁が肉眼で見える位置まで来た時に、前方から犬共の吠え声が木霊こだました。

 ごうごう、うぉんうぉんと。重なった遠吠えが凄まじい響きとなって、背後に居る俺達にまで聞こえてきた。


「戦いが始まるぞ」

「見ろ、小獣人エルニスの方も、()()()……()()()

 リゼミラが目を細めて遠くを見やる。

 俺は望遠鏡を覗いて、壁の手前に陣を張る、小さな一団を確認する。──その中には人間の兵士や冒険者、それに銀色の鎧を身にまとった一団が見えた。

 全部あわせて……恐らく二百人──居るか、居ないかといったところだろう。


 その小獣人国シュナフ・エディンの軍勢の中でも異彩を放つ、先頭に居る鉄の甲冑かっちゅうを纏う者。

「なんだ? あの全身鎧の集団は」

 冒険者や兵士ではない。明らかに人より少し大きな鎧を纏っていて、さらに()()()()()()()()()、胴体から両腕が伸び、手には大きな剣や槍を握り締めている。

 そいつらは小獣人族の前に並び、どっしりと構え、あるいは微動だにせず。威圧的に立ち尽くしているではないか。


「ここからでは分からんが……もしかするとデコイ? それとも小獣人族の兵器なのか?」

 そう言いながらとなりに居るリゼミラに望遠鏡を手渡す。

木偶でく人形じゃなさそう。いま動いたよ」

 リゼがそう言った時、小獣人族の方からも、鋭いときの声が上がった。

 金切り声の様な、高い音の響き。

「あああああ────」とか「おあぁあああ────」という、歌声みたいな鬨の声の中に、人間の兵士らの発する野太い声が「ぉおぉおおっ」と、控え目に、遅れて聞こえてきた。


 それが合図になり、両軍が前線に向かって進軍を開始する。

「はじまったな」

 リゼから受け取った望遠鏡を俺に投げ渡しながら、気迫に満ちた声でレオが言う。

 その体からは抑えきれぬ闘気が溢れ、すでに臨戦態勢に入っているらしい。

「よし、では俺達も加勢するとしよう。奴らの背後から進撃し、反撃の間を与えずに、一気に殲滅せんめつするぞ!」

 俺が声を上げて駆け出すと、リゼミラとレオシェルドが先を争うみたいに駆けて行く。

 アディーディンクは慌てて全員に攻撃力強化と、防御力強化の魔法を展開し、俺達の後からついて来る。


 俺もかなりの速度で犬亜人の部隊に迫っているが、リゼとレオの二人は、俺よりも数十メートル先を走っている。

(やはり……現役連中にはかなわないか)

 呼吸は乱れていない、体内を巡る気の循環も安定している。瞬迅を使うのは敵に接近した瞬間だ。




 小獣人の軍勢と犬亜人の軍勢が激突した。

 戦闘が開始された重い音が重なる。

 金属で革を引き裂き、毛皮を纏う獣を斬りつける音。

 金属の武器同士がぶつかり合う音。

 棍棒こんぼうで盾を打ちつける音など──


 前線での戦いが始まって数十秒後、リゼとレオの二人が犬亜人の軍勢に迫った。

 軍隊の後方に居たのは指揮する者ではなく、前線に武器を供給したり、入れ替わりで前線に向かう兵士のようである。

 幸いにも前線での凄まじい戦闘音に圧倒され、後方に控えている犬亜人どもは、後方から敵が攻めて来るとは微塵みじんも考えていなかったらしい。


 レオとリゼがほぼ同時に犬亜人を斬り倒した。

 後ろから首を一撃。

 その後も次々と敵に襲い掛かる二人の剣士。

 容赦なくふるわれる剣が五、六体の犬亜人を地面に打ち倒したあたりで、相手も後方から現れた敵に気づき、混乱状態になった。


「指揮官を倒せ!」

 二人に追いついた俺は声を張り上げながら、迫って来る犬亜人に魔剣を振り下ろす。

 どこかに指揮している首領格の犬亜人が居るはずだ。

 左右に広がりながら犬亜人に猛然と襲い掛かる二人を尻目に、俺は中央突破をする形になる。

(おいおい、この数を一人で相手にするのかよ)

 目の前には混乱しながらも、殺気立った犬亜人がこちらをにらみ、うなり声を上げながら武器を手に迫って来ていた。


「グゥォアァァッ!」

 革の鎧を身に着けた犬亜人の戦士が迫る。

 手には粗雑な鉄の長剣を持っていた。

(どうやら武器も自作しているらしいな)

 そんな風に分析しながら奴の剣をかわし、一撃で奴の腹部を引き裂く。

 続け様に近寄って来ていた連中にも魔剣の洗礼を与える。

「フンッ!」

 俺とレオの斬破が数体の敵を引き裂き、戦場に血飛沫ちしぶきを上げさせた。


 魔剣が敵の命からこぼれ落ちる気を回収し、持ち手の気へと変換、吸収する。

「しゃあぁあっ!」

 連続で振り下ろす魔剣の刃に掛かり、犬亜人が倒れていく。

 大丈夫だ。義足もしっかりと俺の一部として機能しているし、何より戦いの中でも冷静でいられる。


 戦いの恐怖を闘争の高揚で押し隠しながら、俺は前線の様子や、仲間達の戦闘状況を確認する。

 前線で魔法の光が見え、爆音と雷鳴が響き渡った。小獣人の魔法使いが派手に敵を出迎えているのだ。

 こちらも奮起して、敵を討ち取る動きに熱が入る。

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