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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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東への移動、その途中で

誤字報告、句読点の修正ありがとうございます。

 神殿を出る前に、案内をしてくれた猫獣人の神官から、北にある防衛陣地を守っている、ナンティルの元へ物資を届ける荷馬車を送るという話を聞いた。神官長から直々(じきじき)に命令が下りていると、その若い猫獣人フェリエスは言う。


「それなら、この手紙をナンティルに渡して欲しい」

 俺は投石機の改良を書いた紙を入れた封筒を手渡す。

「わかりましたにゃ、部隊長に手渡すよう指示しますにゃ」

「うん、頼んだ」

「小獣人の国まで、あ(にゃ)た方を送り届けるようにも指示されていますにゃ。表に護衛数名と荷車を用意してありますので、そちらを使って東へ向かってくださいにゃ」

 俺は神官の若者に礼を言って神殿の外に出る。


 指示された場所に行くと、そこには輓馬ばんばに引かれた荷車と、馬にまたがる四人の猫獣人の戦士が居た。

 革鎧に身を包んだ戦士たち、くさり帷子かたびらを革鎧の下に着ている者も居る。籠手も金属の上に皮を張って、光の反射を抑えた装備を整えているようだ。戦場に対応した意識を持ち始めているのが、彼らの様子でうかがえる。

 荷車を操る御者ぎょしゃは猫獣人の女性で、魔法使いであるらしい。


「さっそく小獣人の国へ向かいますにゃ」

 荷車には小さな荷物がいくつか乗っていたが、その荷台に俺達も乗り込む。

 護衛達が先に走り出すと、街の外へと向かう通りを走って行き、厳重な警戒がされた大きな門をくぐり抜け、東へ向かう踏み固められた道を進んで行く。


 草原の多い土地だ。

 所々に丘や林などもあり、遠くには高い山も見える。東に続く道は、おおよそ真っ直ぐに進んでいるが、ときおり丘や森を避ける為に曲がり、川の上に架かった石橋を通って、緩やかな上り坂を上がって行った。

 しばらくして遠くに石造りの建物が見えてきて、道はそのそばを通って行くらしい。


「あの建物は小獣人の国へ続く、検問所みたい(にゃ)役目を持つ建物ですにゃ」

 御者の女獣人が説明する。

 彼女の話では、まだまだ小獣人の国へは遠いらしい。この砦に似た建物から東には平野が広がり、まだまだ未開発の土地が、小獣人達の暮らす土地まで続いているらしい。

「小獣人の国の北や北西には小獣人の戦線が敷かれ、犬亜人ババルドの南下を防いでいるはずですにゃ」

 今から向かう先には、まだ犬亜人の部隊は侵攻していないはず。そう女獣人は言ったが、彼女の表情には、これから戦地に近づいているといった、緊張感がにじみ始めた。

 この先の空白地に、犬亜人が入り込まないという保証はない。もしかすると……


 そんな不安について考えていると、先行する護衛の一人が何かを発見した。

「前方に荷車が停まっていますにゃ」

 そう言って荷車を止めさせる。

「どれ、俺が見てみよう」

 そう言いながら、腰から下げた小さな革の筒から望遠鏡を取り出す。

 管理局は以前から望遠鏡を作り出してきたが、たぶん今回の戦争に使う分の望遠鏡を、新たに作り出しているだろう。


 停まった荷車の上から遠くを見る。

 道の先を見て左右を確認すると、確かに一台の荷車と、数人の人影が岩場の陰に隠れているのが見えた。

「あれは──たぶん先行していた、通信機を小獣人の国へ運んでいた者達だ。しかし、なんで進まないのだろう」

 一抹の不安を感じつつ、立ち往生おうじょうしている人々の所へ近づいて行く。

 周囲を警戒しながら彼らの側にまでやって来ると、一人の猫獣人が駆け寄って来て、荷車を岩場の陰に隠すよう警告する。


「なんだ、どういう事だ」

「あっちを見るにゃ、犬亜人どもの群れが野営しているにゃ」

 俺は言われた方向を望遠鏡で探る。

 すると森の陰に、数百の黒っぽい群れが居るのに気づいた。

 ちょうどわさわさと活動を始めたところであるらしく、座っていた者が立ち上がり、移動を始めようとしていた。


「奴ら、移動を始めたぞ」

「どうやら西側から回り込んで、小獣人の国へ侵攻しようとしているらしいにゃ」

「だろうな。援軍は呼んだのか?」

 すると管理局の職員らしき男が、うなずきながら肩を落とす。

「しかし、すぐには援軍を送れないと言われました。三百近い数の犬亜人が居ると知らせはしたのですが……」

 持っていた通信機で、猫獣人の兵士達をまとめている仮設軍に報告はしたらしい。


「まずいな……」

 俺がつぶやくと、リゼミラが「三百はあたし達だけじゃ()()()()()?」などと口にする。

「おいおい、まさか突撃しようなんて言うんじゃないだろうな」

「俺は構わない」

 即決したレオであった。

 俺はアディーの意見を聞く為に、幼い顔の友を見る。

「う──ん、それよりも、奴らの動きが気になりますね。あいつら、何故ここで野営してから動き出したんでしょうか。それに、北部の戦線を回避して小獣人の国を直接せめ落とそうとするなんて、そんな知能があるなんて聞いてませんが」

「確かに」

 そう言われはっと気づく。


「この人数で突撃するのは止めよう。ただし『今は』という事になるが」

 俺の言葉に耳を傾ける仲間達。

「奴らの後をつけ、小獣人の国まで侵攻させよう。そこで小獣人の防衛部隊と戦闘が始まったら、背後から突撃し、小獣人と俺達で挟撃きょうげきしよう」

 それなら多少は危険が少なくなるだろう。

 それでもかなり危険な数を相手にする事になりそうだが、リゼミラもレオも、そしてアディーディンクも、俺の立てた案に肯定の頷きをして見せる。


 アディーは荷車と護衛に「姿隠しの魔法」を掛けて、敵に発見されにくくし、犬亜人の軍勢を追跡する事になったのだった。

シュナフ・エディンに向かう途中で思わぬ遭遇戦になりそうに~

決断と覚悟。戦いへ臨むオーディスワイア達。

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