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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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ラピス用の魔法の剣

 朝の日課ルーティンをし、朝練をし、猫達を可愛がり、朝食を食べる──

 新たな一日の始まり。

 しかし明日は、シュナフ・エディンに向かう日だ。今日一日で、出来る限りの装備を整えておきたい。

 気合いが心の深部から沸き上がる。

「やってやるぁ!」

 カシッ、カシッと音を立てて地面を踏みながら、作ったばかりの魔剣を振るう。足板(板バネ)の義足はしっかりと地面を踏み締め、昨日よりもだいぶ扱いに慣れた所為せいか、一つ一つの動作が安定したように感じた。


 足下が安定すると、自然と上体の使い方にも影響し、より鋭い攻撃を繰り出す事が出来る。

 木剣よりずっと重い剣だが、足に違和感は出ない。木剣の時と変わらぬ安定感で、身体を支えているのを感じた。

「ヒュゥンッ」

 空気を斬り裂く刃。魔剣も手にしっくりとくる感じで、なにやら冒険を始めたばかりの頃を思い出してくる。


 連続で斬りつけ、手首を返し素早く斬り返す。

 一つ一つの動作を確かめ、攻撃も防御も回避も、それぞれの動きに満足がいくと感じた時、庭にレンネルとエアネルが出て来た。

 二人は俺に挨拶すると、それぞれの武器を手に、真剣なおももちで訓練にのぞみ始める。

 双子の姉弟きょうだいも、パールラクーンでの戦いに参加する気なのだろうか。

 カムイやエウラなどもやって来て、朝練は多くの旅団員が参加して行われた。

 朝練を終えて食堂へ向かう途中、レンネルやカムイが俺の剣を見て、それは新しい剣ですかと尋ねてくる。


「きのう作った物だ。斬りつけた相手から魔力や気を奪う、魔剣と同様の力を持っている」

「魔剣? 魔剣を作れるようになったんですか?」

「ああ、やっと異界の魔剣を解析できてな。それをこちらの世界のことわりに合わせて、初めて作製できるようになった」

 おお──と、感嘆の声を上げる二人。

 自分のも作って欲しいと言うカムイ。

「まずは武闘大会でいい成績を残せ、話はそれからだ」

 レンネルやエアネルは魔法の剣がいいだろう、それに合わせた素材を集めて来い。そう言うとレンはうなずき、「わかりました」と素直に返事を返すのだった。


 朝食を食べ終えると、副団長レーチェを中心に訓練や、冒険を続けるようにと皆に話し、明日からしばらくは俺やレオシェルドなど数名は、パールラクーンへ行く事になると改めて説明した。




 鍛冶屋へ向かい──すぐに作業に取り掛かる。

 残された時間は今日だけだ。

 明日の事もあるので無茶も出来ない。

 なるべく余力を残しながら、いくつかの武器の作製や、錬成を行わなくてはならなかった。

 幸いサリエやケベルは、戦闘に加わる兵士などの装備を数多く完成させ、管理局からそれらの武装を引き取りに来た者と話し、明日シュナフ・エディンに向かう事をメリッサに伝えるよう言って、彼らを送り出す。


 今日はサリエの作った装飾品に、錬成効果を付与する作業と、魔法の剣を打つ作業に取り組んだ一日となった。


 小獣人エルニスに合わせた魔法の剣を、新たに二本造り、防具などもいくつか用意した。

 小さな彼女らに合う胸当てなど、もちろん防具にも強化錬成をして、防御力を上げるなどした物を用意する。


 仲間達の武器や防具は、以前から愛用している物があるから、装飾品に強化錬成した物を渡す事にした。これなら仲間の助けになるはずだ。

 レオシェルドには俺が作った武器を使って欲しいという気持ちもあったので、魔剣の性質を持たせた「妖刀」を渡す。倒した相手から気を奪い取る力、これがあればレオは通常の武器よりも多く、剣気の技を使用できる。

 それはかなりの戦力の増強になるはずだ。


 ケベルとサリエが作り終えた品を見るが、どれも余所よそで作られている物よりも高品質な物になっている。

「よくやった。管理局もきっと、二人の働きに感謝するはずだ」

 そう言って次の武器を作る素材を取りに行く。


 素材保管庫を確認した時、箱に書かれた文字を見て思い出した。

「そうだ、ラピス用の魔法の剣。素材は──霊晶石以外はそろっているし、造ってみるか」

 金の支払いはまだだが、それは後払いにしてやろう。彼女の事だから、払わずに逃げるなんて事はしないはず。


 風、地、水の三つの属性を持たせた長剣型の魔法の剣。対立属性があるので、金属を打ちばすところからも、細心の注意を払って行う作業。

 魔力回路を生成し、そこに属性結晶や霊晶石を溶かし込んでいく。




「キンッ、キンッ、キンッ」

 高い音が鳴り、三つの力の封入に成功した刃。

 じゅぅうぅぅ──っと水に漬けた刃に、青白い光が浮かび上がる。

 水から出すと、刃に青緑色や黄緑色に反射する光があり、その中に魔力の細やかな刻印が刻まれているのを見る。


「なかなかの出来だ」

 両刃の長剣。切っ先も鋭く、根本から切っ先へ段々と細くなる形状だが、碧銀鉄鋼クレリスアルム含んだ鋼が美しい。

 光を受けてキラキラ反射するのではなく、まるで光を吸収するみたいに、ひそやかに燃えて揺らめく、小さな火種を思わせる光を放つ刃。

 その刃につばや柄を付け、完成した物をしっかりと研いで、すぐに実戦に使えるようにしておく。


「ふむ──対立属性でも、安定して造れるようになってきたかな」

 鞘を作っていると、ケベルが声を掛けて来たので、この魔法の剣はラピスの物だと説明し、彼女が来たら「代金は後で払ってもらう」と言って、剣を渡すよう言っておいた。


 二人の徒弟に、これからの鍛冶屋の事についても話しておく。──別の大地の事とはいえ、戦争になったのだ、備えは必要だろう。

「明日から俺は居ないが、鍛冶屋はしばらく管理局の指示に従って、武器や防具を作るのに専念する事になるかもしれん。その時は頼んだぞ」

 二人の徒弟にそう声を掛け、二人には先に給金を払っておく。

「戦場では何が起きるか分からないからな」

 そんな言葉を不安に思ったのだろう、二人は心配そうな顔をする。


「大丈夫だ、そんな顔をするな。だいたい、危険について警戒している間は、慎重に行動できるという事だ。冒険でも戦場でも、警戒を緩めてはならないからな」

 そう言って右足の義足を手で叩く。

 ──そう、油断さえしなければ、危険が訪れても後方に引き、そのあとで反撃すればいい。

 必ず瞬間瞬間に、危機と好機が入れ替わる場面がある。

 それを狙って守り、反撃するのだ。


 戦場についてはそれなりに調べてある。

 どこぞの愚かな軍上層部みたいに、希望的観測で敵に攻撃するような馬鹿な真似まねはしないし、させない。

 耐える時は耐え、ここぞという時に攻める。

 その時機タイミングを逃さない。

 その感覚は冒険先の戦闘で身につけている。

 命を懸けた戦闘だ。


 しばらく実戦から遠ざかっていたとはいえ、こちらは第一線を駆けていたのだ。

 敵を討ち滅ぼす事にかけては、俺の右に出る者はそうは居まい。

 仲間パールラクーンを脅かす野良犬など皆殺しにしてやる。──それくらいの意気込みを持って暗くなった通りを歩き、宿舎へと戻った。

戦場へ向かおうという戦士、あるいは鍛冶屋の心境とは。

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