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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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新しい義足に慣れよう

 翌朝、昨日の夜は訓練できなかった分、朝練に力を入れる事にした。

 睡眠時間は充分とは言えないが、強壮薬などで誤魔化す。

 新作の義足を付けて、様々な体勢からの攻撃をおこなっていると、カムイとレンネルが庭にやって来た。


「おはようござ……ぅぇっ⁉ ──なんです? その足は……!」

 カムイが驚きの声を上げ、レンは興味深そうに俺の右足を見つめている。

「新しい義足ですか? 変な形ですね」

 二人は無遠慮に義足をまじまじと見ながら、こんなんで歩けるのか、みたいな事を口にしている。

「ふっふっふっ、素人しろうとどもめ。見よ、この跳躍力ちょうやくりょくを!」

 そう言って思い切り右足で飛び跳ねた。

「おぉおぉォッ⁉」

 二人の頭上を飛び越えそうなほど、高く飛び上がった身体。

 俺自身も驚いて声を上げてしまった。

 義足は着地の衝撃にも耐えたが、左足の太股が痛い。


「ふ、ふわぁはははっ、どうだ、すごいだろう」

「というか、オーディス団長も跳び過ぎて、びびってませんでした?」

 変な声を出してましたが、とレンネルがつっこみを入れる。

「そんな事はない」 俺は堂々と嘘をいた。

 そう言いながら軽やかに足取り(ステップ)を踏み、横や後ろへ移動する。

 足を広げてかがみ込むと、義足の内側に付いた足板が地面をぐっと押さえ込み、かかとの役割をする足板を蹴り込むようにして、低い姿勢から前進しつつ、木剣を突き出す。


「ぉおっ!」

「普通に動けているじゃないですか!」

 こんな奇妙な形なのに信じられない、そんな言葉を口にしながら、新たな義足に興味津々(きょうみしんしん)の様子を見せる。

「だが──太股と膝下の部分にも負担が掛かるな、衝撃を抑えられるようゴムを付けているんだが」

 太股を革帯ベルトでしっかりと締め付け、ちぎられた膝下の部分にあてがったゴムと緩衝材かんしょうざい、こうした物で義足を固定し、足への負担をなくしているのだ。

「足があった頃のようにはいかないが、それでも前の義足よりは、可動域が増えた感覚だ」

 早速さっそく、訓練相手をしてやろう。

 俺はそう意気込んでカムイやレンネルと朝練を始めたが……




「ぉおふ……、闘いの感覚までは戻っていないようだな」

 カムイはおろか、レンネルにも負けてしまった。

「いや、防御や反撃は鋭いのですが、やはり足捌あしさばきがまだまだ不安定なんじゃないですか?」

「むしろ、義足を使って踏み込むと、その勢いに身体の重心がブレてます」

 げげっ、見抜かれている。──そう、確かにレンやカムイの言うとおりだ。

 今までの義足の感覚で踏み込むと、予定していたものよりも、強い勢いで身体が流れてしまう。

「まずは、この義足の使い方を覚えないと駄目だな」

 俺は一時、木剣を手にした訓練を切り上げ、義足に慣れる為に、宿舎の外を走る事にした。


「カシッ、カシッ」

 そんな静かな足音を立てて道を走る。

 舗装された路面を走る感覚でも、だいぶ今までの義足との違いを感じる。

 まだ朝早いが、大通りには人が数人歩いていた。

「おはようございます」

 前から歩いて来た見知らぬ男に挨拶される。

「おはよう」

 その横を通り過ぎながら挨拶を交わす。

 こちらの早朝ではだいたいこんなもの、人通りの多い昼間などではあまりしないが、すれ違っただけの人にも挨拶はするのが自然なのだ。


「タシッ、タシッ」

 音が軽くなった。変な力みが抜け、義足の反動に慣れてきたのだ。

「ほっ、ほっ、ほっ」

 駆け足でも、だいぶ扱いが慣れてきた。

 裏通りに入り、公園の前を通ると、長椅子ベンチに腰を下ろすか、芝生でのんびり足を伸ばそうと思い、公園に寄る事にする。


 焔火ほむらびの光が公園を照らし、長椅子が置かれた場所を照らしていた。

 暖かい光に誘われるように、その長椅子に近寄ると、ちょうど先客が歩いて来ているところだった。

「ニャァ──」

 薄茶色の毛をした猫が長椅子にぴょんと跳び乗り、こちらに声を掛けてくる。

「おはよう」

 猫は後ろ足で耳をき、欠伸あくびをした。


 俺は野良猫の横に腰掛け、義足の具合を確認する。異常はない、太股に装着したおおい部分も、しっかりと固定されている。

 膝下の「板バネ」部分も固定してあり、曲がりの部分がおかしくなったりする事もない。

 魔法で解析してもても、まったく損傷している箇所かしょは無い。

「よしよし、これなら充分に使えるな」

「ニャァ──」

 野良猫が俺の言葉に返事し、太股に乗ってきた。


 その背中を撫でてやると、猫は満足げに俺の足の上で四つん這いになる。

 何歳くらいの猫なのだろう。日向ひなたぼっこをしている姿は、かなり老齢な感じをかもし出している。

 喉を触ると嬉しそうに顔を上げ、目をつぶって撫でられるままになっている。

「ほれほれ」

 調子に乗って撫でていると、野良は嫌がって、前足を俺の手に乗せて払いけた。

「ゥニャァ──」

 そう声を上げて、ごろんとひっくり返り、おなかを見せたので、そのお腹をくすぐってやる。

 なかなかに甘え上手な野良猫だ。


 優しくお腹を掻いていると、前足で俺の手を掴み、後ろ足で優しく蹴ってじゃれついてきた。

 おっと、こんな事をしてなごんでいる場合じゃない。俺はこれから戦いに行く準備をしなければならないのだ。

「またな」

 野良猫を長椅子に降ろし、再会を約束する。

「ナァア~~」

 猫は寂しげな声を上げ、俺を見送っていた。

義足の形状が難しい感じに……だいたい、こんな感じかな? と想像していただければ。

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