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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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新義足の開発

脱字修正ありがとうございます。

 管理局を出た時には、かなり外は薄暗くなり始めていた。店が閉まる前にガゥレン樹液を買おうと、キャシル素材店を訪れる。


「おや、オーディスじゃないか。どうした、そんなに慌てて」

 キャシルの父親が店じまいをしていた。

「慌てるさ。ガゥレン樹液が欲しいんだ。置いてあるか?」

「樹液──あるぞ、少ないがな」

「それと、溶岩はあるか?」

「岩石なら大量に在庫がある」

 よし、と俺はつぶやき、金を支払って樹液の入った瓶と、岩石を入れた麻袋を持って店を離れた。

 素材屋の親父が引くほどの早さで、急ぎ宿舎へと戻る。──食事を食べたら、すぐにでも錬成をしたいのだ。




 宿舎の食堂では、仲間達がもう食事を始めていた。

「どこへ行ってたんですか? 鍛冶屋にも居なかったので、探してしまいました」

「風呂場で倒れてたりね」

 ユナとメイが心配(?)していたんだ、という風に話す。

「ああ、すまん。管理局に行ってたんだ。食事を食べたら、すぐに鍛冶屋へ行かないと」

 そう言いながらせわしなく、冷めかけた料理をかっこむ。

 足にじゃれついてくる猫も無視して、俺は食事を終えると、新しい義足を作る為に鍛冶場に戻り、ガゥレン樹液と溶岩から、試しに錬成した素材を作り出し、剛性や柔軟性を確認する。


「確かに丈夫で、折れにくいが……」

 反発力が足りないか? 体重を支え、素早く動くには──もっと強い反発力、弾力が必要だ。

 不発か──そう思い始めた時、運動選手アスリートの義足に使われている素材がなんなのか、それを考えてみた。


「競技用義足は、炭素繊維強化合成樹脂カーボンだったか? 炭素素材──強靭、柔軟、反発力……ゴムだけじゃ駄目だ。炭素……そうか! 骨だ!」

 俺は竜骨を削った粉末を、ガゥレン樹液と溶岩に加え、錬成して作り上げた素材を鑑定する。

「うん、うん。……悪くない。あとは比率を変えてやってみよう」

 解析した情報から当たりをつけ、理想の素材を作る研究に入る。

 素材を作る作業は、一時間も掛からなかった。


「よぅし! これだ、これなら──」

 後は、これをヘラみたいに薄く伸ばし、地面につく部分に丸みを持たせれば……

 鎧や籠手を作る時に使う、圧力板がある。ゆるやかな曲線を作りながら素材を伸ばす、そんな道具があるので、それにこの新素材を入れて伸ばし、強靭な板を作ろう。

 俺は早速さっそく、新しい義足の設計図の作製を開始した。


 運動選手がするような、一本の湾曲した板などではなく、身体の外側や内側に対する、「地面をむ」動きが出来なくてはならない。

 それは足の指がそれぞれ地面をつかんで、身体を支える動きをするように。──または筋肉が重心を制御して、身体を倒さないようにするみたいな。そんな機能も持たせなくてはならないのだ。

「せめて、横移動がしやすくなるような、そんな義足でなければな」


 俺は今までの義足の様な「人の足の形」あるいは、具足の様な形を捨てて、運動選手の競技用義足を想像しながら、どうすれば様々な動きに対応できる義足になるかのみを考えて、細かな設計図を作り出したが──

 数枚のごちゃごちゃとした部品が付いた形を捨てて、なんとかそれっぽい義足の設計図を作成した。

「う──ん、かなり細かな作業になりそうだ」

 図面を見ながら大きさを調整する。


 太股に装着する覆い(カバー)部分と、膝の動きに対応する関節部分、俺の場合は膝の下に体重を支える大本の部分を作り、そこから足となる「板バネ」を取り付けるのだ。

 足板(板バネ)は強靭で柔軟性のある、運動性能を向上した義足になった。

五輪オリンピックに出る訳じゃないからな」

 人体以上の能力を発揮する器具になっても構わないだろう。──ただ、走る時にもう一方の生身の足と調整できないと、どちらにしろ均衡バランスが崩れて転んだりしそうだ。


 完成した部品を組み合わせ、実際に履いて確かめてみて、何度も作り直す。

 後ろに下がったり、横に踏ん張ったり、足を広げてそこから立ち上がったり……

 様々な挙動に対して対応できる形。

 それを確認しながら、やっと一つの成果が完成したのだった。




「新義足一号──『ヘパイストス1号』だ!」

 ……やめておこう、こちらの世界にギリシャ神話の神を持ち出すなんて、縁起が悪い気がする。

 付けるなら──「強化板義足」でいい。ちょっと堅い名付け(ネーミング)だが、分かりやすいだろう。

 ともかく、第一号が完成した。


 湾曲した板には、地面に触れる部分に滑り止めと、消音機能を持たせたゴム板を張り、中心の大きな板は()()()()に曲がり、前方に向かって地面を踏み締めている。


 湾曲し、を描く形にしようと思っていたが、完成した物は、鳥の足の様な、逆関節になった足板にした。こちらの方が足を踏み込む時の安定感が良かったからだ。

 このくの字型の湾曲部分には、後方へ伸びる板も装着し(人の字みたいな形)、後ろに倒れ込みながら攻撃をかわしたり、後方宙返りも出来るよう仕上げる。

 さらに膝下から身体の内側に向かって一枚、外側に向かって二枚の伸びる足板もあり、全部で四枚の板を取り付けた義足になっているのだ。


「運動選手には不向きな作りだな」

 これは戦いに使えるよう考案した義足だ。

 装着して見ると、軽硬合金フラウレグムで作った義足と、重さはそれほど変わらない感じだ。

 なにしろ強度を増す為に、数枚の板を、圧力で一枚の薄い板にしているのだ。見た目は軽そうに見えても、そこそこの重さがある。

 それに「硬化(固くなる訳ではない)」と「劣化防止」の錬成を施す。




 俺は完成した義足を履いたまま、鍛冶屋を出て真っ暗な表通りを歩いてみた。

「ぉおおぉっ⁉」

 なんというか、いつも通りに歩こうとすると、右足だけがやたらと跳ねて、片足だけ軽く跳ね(スキップ)ながら歩いているみたいな感覚になる。

 鍛冶屋の扉を閉め、俺は宿舎まで駆け出す。

 勢い余って壁に激突しそうになりながら。

 まるで生まれ変わったみたいに身体が軽い。

「これは、義足の夜明けぜよ!」

 俺は暗闇に浮かぶ月火つきびに向かって叫んだ。

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