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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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魔剣と魔法の剣を造り上げる

 この日は二本の魔剣を造り、残りの時間で魔法の槍を一本造り上げた。

 魔剣はカムイの為に準備した素材を使い、かなり強力な性能を持った一振りに仕上げる。カムイの身体能力を上げると共に、斬りつけた相手から気を奪い取る魔剣。──魔力も奪うが、それは剣に蓄積され、斬りつけた時の威力を上げる役割も果たす。


 もう一本の魔剣は自分用だ。大剣に近い大きさだが、盾も持てるくらいの大きさになるように造った物だ。


 魔法の槍はエアネル用に造った。軽硬合金フラウレグムの柄を取り付け、刃を研ぎ、完成させた。

 少し不格好だが、余っていた革で鞘を作り、それを穂先に被せる。

 エアネルは火属性の攻撃魔法しか使えないので、火にのみ対応する魔法の槍だ。

「属性攻撃力強化」や「剛貫通」などの効果も付与している。普通の武器としてもかなり強力だ。しかも、彼女の魔力の低さを補うべく「魔力回復速度上昇」も付けておいた。

 この新たな槍は、きっとエアネルの力になるだろう。


 ──だが、これはまだしまっておこう。

 レンネルの反応もあるし、それに──これを持って犬亜人ババルドとの戦争に行こうと言い出すかもしれない。

 ある意味それは、旅団長としては喜ぶべきなのかもしれないが、彼女の直情的な部分は、戦場向きではない気がするのだ。

「──まあ、そうは言っても、冒険先の戦いだって充分に危険なのだが」

 戦場の経験がある訳ではないが、その過酷さは理解しているつもりだ。


 個人の力ではどうにもならない戦闘。いくら魔法や剣技を身につけても、大群を相手に、自身の持つ技量のみを頼った戦いには限界がある。

 それを打開するのはやはり「数」なのだ。

 しかし、数量対数量の戦いにも、いくつかの要点があるはずだ。

 それが個人の戦いの練度と、集団戦闘の練度だ。

 仲間と共にあり、仲間が共に戦ってくれる。

 そうした繋がり、信頼がないと、部隊としての、組織的としての力は発揮できない。

 個人の練度と集団の練度、このどちらも切り捨てる事は出来ない。


 ──そしてもう一つ。戦場での戦いを有利にするのは──兵器だ。

 それは剣や盾や鎧のみならず、騎馬や戦車、そうした兵器。

 投石機や弩砲バリスタ、そういった武器があればなおいい。

 それにこちらの世界には魔法がある。

 野蛮な犬亜人に兵器があるとは聞いた事はない。上手くいけば、そうした兵器の差で、数の暴力を圧倒できるかもしれない。


「──とは言ってもだ、俺は突撃銃アサルトライフルが作れる訳でもないしな」

 そう口にしながら、ふと自分の右足を見る。

「せめて──義足をなんとかするか」

 そう思ったのは、投石機や弩砲を運用するにあたって必要な、車輪の事を考えていたからだ。

「いっそ、義足に車輪を付けるか」

 阿呆か、片足だけ車輪を付けてどうする。

 その案は一瞬で却下された。


「やはり運動選手アスリートが使うような、弾力、柔軟性のある板状のやつ(板バネ)が必要か」

 柔軟性のある素材か────

 義足を見ながら考えていると、そういえばこの義足の中にある「腱」にあたる物は、小獣人エルニスのパルトラに作ってもらったのだ。彼女なら、弾性があり、曲がっても折れたりしない、丈夫な素材について知っているかもしれない。


 俺はすぐに管理局の技術棟に向かった。

 まだ彼女は管理局に居るかもしれない。

 そう願いつつ、管理局へ向かう。




 技術棟に入ると、すぐにメリッサの所へ向かい、彼女にパルトラの事を尋ねた。

「パルトラですか? ええ、彼女ならまだ管理局に居ますが。──というか、この忙しい時に、なんなんですか、いったい……」

 そう文句を口にする彼女だったが、「でもちょうどよかった」などと口にする。彼女の「ちょうどいい」は、彼女の都合にちょうどいい、という意味なのは知っていた。


「実は、春迎祭儀を年が明けたらおこなう予定でいたのですが、その前に、エウシュマージア様の力を回復する儀式を、今年中にやろうかという事に決まりまして」

 俺は「そうか」と応えた。それならすでに、象徴しょうちょう武具の鎌を造って渡してある。

 確か春迎祭儀を地の神ウル=オギトが行うのと同時に、西海の大地でも、地の化身であるエウシュマージアの力を取り戻す儀式を行う予定でいた。

「ですがその前にパールラクーンでの戦争に、フォロスハートも協力する事になるので、それについて、オーディスワイアさんのお知恵を借りたいと思いまして」

「ああ、そういう事か。──と言われても、戦争に使える物など、そんなに思いつかないぞ」

 彼女に言うと、机の引き出しから数枚の紙を取り出してくる。


「これがパールラクーンの戦場に貸し出している投石機と、弩砲の設計図です。これを差し上げますので、何か改良点が見つかったら、教えてください」

 どちらも大きな車輪の付いた移動式の兵器で、反動を利用して石を遠くへ飛ばす──昔ながらの兵器だ。

 弩砲については、都市を囲む壁に設置された物に車輪を付けたようだった。

「分かった、何か思いついたら知らせよう」


 そう言ってパルトラに会いに行く。──彼女は研究室で小型の機械弓ボウガンを作ろうとしているらしい。

「おや、あなたはオーディスワイアさん。どうしました」

 そう言った彼女の表情は少し固く、故郷の緊迫した状況に対し、仲間の手に合った新しい武器を作ろうと、懸命に試行錯誤しこうさくごしているのが伝わってくる。

「忙しいところ申し訳ない。実は剛性、弾性などに富んだ、固く柔軟な素材を探しているのです。義足の代わりになるような──何か、心当たりはありませんか?」

「固く、柔軟で、反発力のある、折れにくい物ですか? う──んそうですね……『ガゥレンの樹』から取れる樹液と、火の領域──失礼、フォロスハートの都市フレイマから入手する、溶岩の岩石から錬成した物なら、あるいは──」


 ガゥレンの樹はパールラクーンにしか生えていない樹木だ。ゴムの木に似ている。……うっかりしていた、普段あまり使わない素材なので、ゴム素材があるのを失念していた。

 それにあまり大量に採れない素材らしく、なかなか出回らない素材だ。


「ガゥレン樹木ですか、それと溶岩? それを合わせて錬成すれば、剛性と柔軟性を持つ素材が作れるのですね? さっそく試してみます」

 小さな彼女は「ええ」と言って、弱々しい笑みを浮かべる。


「……シュナフ・エディンには、俺も数日後に向かう予定です。ミリスリアから手紙を受けたので」

「! そうなんですか。──よろしくお願いします」

「ええ、全力を尽くすと約束しましょう」

 俺はそう断言し、技術棟から出て行く。

 急いで素材を集め、新しい義足の為の素材を錬成するのだ。

しばらくは武器だの防具だのを作り出す、必死な様子が多くなります。

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