魔剣と魔法の剣を造り上げる
この日は二本の魔剣を造り、残りの時間で魔法の槍を一本造り上げた。
魔剣はカムイの為に準備した素材を使い、かなり強力な性能を持った一振りに仕上げる。カムイの身体能力を上げると共に、斬りつけた相手から気を奪い取る魔剣。──魔力も奪うが、それは剣に蓄積され、斬りつけた時の威力を上げる役割も果たす。
もう一本の魔剣は自分用だ。大剣に近い大きさだが、盾も持てるくらいの大きさになるように造った物だ。
魔法の槍はエアネル用に造った。軽硬合金の柄を取り付け、刃を研ぎ、完成させた。
少し不格好だが、余っていた革で鞘を作り、それを穂先に被せる。
エアネルは火属性の攻撃魔法しか使えないので、火にのみ対応する魔法の槍だ。
「属性攻撃力強化」や「剛貫通」などの効果も付与している。普通の武器としてもかなり強力だ。しかも、彼女の魔力の低さを補うべく「魔力回復速度上昇」も付けておいた。
この新たな槍は、きっとエアネルの力になるだろう。
──だが、これはまだしまっておこう。
レンネルの反応もあるし、それに──これを持って犬亜人との戦争に行こうと言い出すかもしれない。
ある意味それは、旅団長としては喜ぶべきなのかもしれないが、彼女の直情的な部分は、戦場向きではない気がするのだ。
「──まあ、そうは言っても、冒険先の戦いだって充分に危険なのだが」
戦場の経験がある訳ではないが、その過酷さは理解しているつもりだ。
個人の力ではどうにもならない戦闘。いくら魔法や剣技を身につけても、大群を相手に、自身の持つ技量のみを頼った戦いには限界がある。
それを打開するのはやはり「数」なのだ。
しかし、数量対数量の戦いにも、いくつかの要点があるはずだ。
それが個人の戦いの練度と、集団戦闘の練度だ。
仲間と共にあり、仲間が共に戦ってくれる。
そうした繋がり、信頼がないと、部隊としての、組織的としての力は発揮できない。
個人の練度と集団の練度、このどちらも切り捨てる事は出来ない。
──そしてもう一つ。戦場での戦いを有利にするのは──兵器だ。
それは剣や盾や鎧のみならず、騎馬や戦車、そうした兵器。
投石機や弩砲、そういった武器があればなおいい。
それにこちらの世界には魔法がある。
野蛮な犬亜人に兵器があるとは聞いた事はない。上手くいけば、そうした兵器の差で、数の暴力を圧倒できるかもしれない。
「──とは言ってもだ、俺は突撃銃が作れる訳でもないしな」
そう口にしながら、ふと自分の右足を見る。
「せめて──義足をなんとかするか」
そう思ったのは、投石機や弩砲を運用するにあたって必要な、車輪の事を考えていたからだ。
「いっそ、義足に車輪を付けるか」
阿呆か、片足だけ車輪を付けてどうする。
その案は一瞬で却下された。
「やはり運動選手が使うような、弾力、柔軟性のある板状のやつ(板バネ)が必要か」
柔軟性のある素材か────
義足を見ながら考えていると、そういえばこの義足の中にある「腱」にあたる物は、小獣人のパルトラに作ってもらったのだ。彼女なら、弾性があり、曲がっても折れたりしない、丈夫な素材について知っているかもしれない。
俺はすぐに管理局の技術棟に向かった。
まだ彼女は管理局に居るかもしれない。
そう願いつつ、管理局へ向かう。
技術棟に入ると、すぐにメリッサの所へ向かい、彼女にパルトラの事を尋ねた。
「パルトラですか? ええ、彼女ならまだ管理局に居ますが。──というか、この忙しい時に、なんなんですか、いったい……」
そう文句を口にする彼女だったが、「でもちょうどよかった」などと口にする。彼女の「ちょうどいい」は、彼女の都合にちょうどいい、という意味なのは知っていた。
「実は、春迎祭儀を年が明けたら行う予定でいたのですが、その前に、エウシュマージア様の力を回復する儀式を、今年中にやろうかという事に決まりまして」
俺は「そうか」と応えた。それならすでに、象徴武具の鎌を造って渡してある。
確か春迎祭儀を地の神ウル=オギトが行うのと同時に、西海の大地でも、地の化身であるエウシュマージアの力を取り戻す儀式を行う予定でいた。
「ですがその前にパールラクーンでの戦争に、フォロスハートも協力する事になるので、それについて、オーディスワイアさんのお知恵を借りたいと思いまして」
「ああ、そういう事か。──と言われても、戦争に使える物など、そんなに思いつかないぞ」
彼女に言うと、机の引き出しから数枚の紙を取り出してくる。
「これがパールラクーンの戦場に貸し出している投石機と、弩砲の設計図です。これを差し上げますので、何か改良点が見つかったら、教えてください」
どちらも大きな車輪の付いた移動式の兵器で、反動を利用して石を遠くへ飛ばす──昔ながらの兵器だ。
弩砲については、都市を囲む壁に設置された物に車輪を付けたようだった。
「分かった、何か思いついたら知らせよう」
そう言ってパルトラに会いに行く。──彼女は研究室で小型の機械弓を作ろうとしているらしい。
「おや、あなたはオーディスワイアさん。どうしました」
そう言った彼女の表情は少し固く、故郷の緊迫した状況に対し、仲間の手に合った新しい武器を作ろうと、懸命に試行錯誤しているのが伝わってくる。
「忙しいところ申し訳ない。実は剛性、弾性などに富んだ、固く柔軟な素材を探しているのです。義足の代わりになるような──何か、心当たりはありませんか?」
「固く、柔軟で、反発力のある、折れにくい物ですか? う──んそうですね……『ガゥレンの樹』から取れる樹液と、火の領域──失礼、フォロスハートの都市フレイマから入手する、溶岩の岩石から錬成した物なら、あるいは──」
ガゥレンの樹はパールラクーンにしか生えていない樹木だ。ゴムの木に似ている。……うっかりしていた、普段あまり使わない素材なので、ゴム素材があるのを失念していた。
それにあまり大量に採れない素材らしく、なかなか出回らない素材だ。
「ガゥレン樹木ですか、それと溶岩? それを合わせて錬成すれば、剛性と柔軟性を持つ素材が作れるのですね? さっそく試してみます」
小さな彼女は「ええ」と言って、弱々しい笑みを浮かべる。
「……シュナフ・エディンには、俺も数日後に向かう予定です。ミリスリアから手紙を受けたので」
「! そうなんですか。──よろしくお願いします」
「ええ、全力を尽くすと約束しましょう」
俺はそう断言し、技術棟から出て行く。
急いで素材を集め、新しい義足の為の素材を錬成するのだ。
しばらくは武器だの防具だのを作り出す、必死な様子が多くなります。




