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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第九章 パールラクーンを巡る戦い

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魔剣の生成

 魔剣を創造するに当たって、素材はだいたい確定している。まずその一本目を生成しようと試みたが──剣の形に整えている最中に、力を失って、灰となってしまった。

「そうか、魔力回路に魔力を流すだけでは駄目か」


 錬金鍛冶用に造り出した()()()()()は、短時間で金属を打ち伸ばし、不純物を取り除く事が出来る。しかも、金鎚に取り付けた魔力結晶から魔力を打ち込み、金属に流し込む事も出来るのだ。

 軽硬合金フラウレグム混沌鉄鋼アディスヴァルドの合金──これを魔剣にする作業は、想像していたよりも繊細な作業を迫られた。


 一部から全体に、波が伝わるように魔力を行き渡らせながらでないと、途中で崩壊してしまうのだ。

あきれるほど難易度が高いな)

 それは魔力の流れを見ながら、波と波がぶつかり、増幅させないように、慎重に──流し込む魔力を調節しながら、鎚を打ち続けなければならなかった。

 神経がすり切れるような集中を要し、一本の魔剣を打ち出す事に成功した。

「やったか!」

 水に漬けて冷やし、刃を覗き込む。

 そこにはエウラに見せてもらったのとは違う魔力回路と、魔法の効果を刻み付けた呪文が浮き上がって見えた。


 ────だが、それは、()()()()と言える仕上がりだった。


「これでは駄目だ……」

 切れ味が悪いという意味ではない。

 斬りつけた相手から奪う()()()が、剣を持つ者にいかず、また、剣にも蓄積されずに霧散むさんしてしまうのだ。

 作った物を鑑定に掛け、原因を探る。──理由はすぐに判明した。


 気や魔力といったものを吸収する魔剣としての魔法が、そもそも不完全なのだ。

 異界の魔剣から模倣もほうした術式では、こちらの世界のことわりに類する魔法として成り立たない。

「なんてこった、今になってそれに気づくとは……!」


 俺はすぐにケベルを呼んだが、徒弟は作業を途中で止められない様子だ。──代わりにサリエが来たので、宿舎に行ってアディーディンクをここに連れて来るよう言った。

「あと、エウラに魔剣を借りて来てくれ」

 焦りを見せる俺に怯えた様な顔をして、少女は走って鍛冶場を出て行く。

 しまった……少し、焦り過ぎだ。


 俺は水を口にすると、顔をひっぱたく勢いで両手で挟み、しばらく考え込む。

 難しい問題に対して何か打開策はないかと考えたが、錬金術──あるいは世界の法則の中で──この問題に解答できる技術が、何かありそうなのに、これだというものが出てこない。

「あ────ッ、くっそ!」

 そこへ、急ぎ足でやって来たアディーとサリエ。彼女は手に魔剣を持っていた。


「なんです? 急に呼び出して」

 俺はサリエに礼を言い、魔剣を受け取るとそれを抜いて、アディーの前に差し出す。

「この魔剣に掛かっている術式を、()()()()()()()()()()使えるように出来ないか?」

 そう言うと、アディーは「それは無理なのでは」とあっさりと答える。

「術式はあるていど解読できますが、こちらの世界の定理に合わせるのは無理でしょう」

「だが俺は、かなり精度の高い解読をしたんだ、なんとかしろ」

「ええ────」


 困ったように言うアディーに、俺が書き記した魔剣の術式を見せる。

「へぇ──これが、異界の魔剣の……ぇえっ⁉ よくこれだけ難解な術式を解明しましたね!」

 紙と魔剣の刃を見比べて、さらに鑑定を掛ける小さな大魔法使い。

「なるほど、なるほど……単純化された部分の下に隠された、本当の術式が二つ刻まれていた訳ですか、──すごい発見ですね。いや、これは新たな発見ですよ!」

 興奮した様子で「すごい」を連発するアディー。


「だがこのままでは、こちら側で魔剣を生成する事が出来ないんだ」

 それは確かに……そうつぶやくと、幼い顔に真剣な表情を浮かべ、あごに手を当てる。

「うん、うん、……二重の術式で──いや、単純化されていた理由はなんだ……?」

 するとアディーはテーブルの上にあった紙に、何かを書き始めた。魔剣を確認しながら、凄い勢いで一枚、二枚と書き込んでいく。


「うん、なるほど……そうか!」

 そう叫ぶと、アディーは新しい紙を取り出して、そこに術式を書き始めた。

「これですよ! これなら魔剣の生成が出来るんじゃないですか⁉」

 そう言って見せたのは、二つの術式を絡み合わせた不思議なものだった。だが──それは、俺には見覚えのあるものだった。


「そうか、遺伝子配列! この手があったか!」

 異界の魔剣は螺旋らせんを描く様に、二つの術式を同時に生成し、魔力回路の周辺に魔法を刻み込み、さらにそれをまとめ上げる、単純な組成の術式が組み込まれていたのだ(鑑定魔法では並列して刻まれている様に見える)。

 アディーは「いでんちはいれく……?」と首を傾げている。

「気にすんな! お手柄だぞ!」

 俺はアディーに言って、魔剣をエウラに返すように言う。

「うへぇ……僕はもう用済みですか?」

「おう!」

 俺は高らかに宣言した。

「ひどいっ!」




 アディーを追い出すと、俺はすぐに魔剣に刻み込む術式を考えて、それを読み込み、何度も頭の中で反芻はんすうする。

 同時に、それを金属に打ち込み、魔法として刻み付ける作業を心象イメージ訓練トレーニングする。何度も何度も──


「よしっ」

 そうして今度は現実の溶かした金属を前に、魔剣の生成に入る。こちらの世界の理に組み込まれる新たな魔剣の創造。

 一心不乱にその作業に取り組み、俺はカムイの為に造った、一本の魔剣を完成させた。


「よしっ! ついに……やったぞ‼」

 遠くから俺を見守っていた徒弟達から拍手が起こる。

 俺はその賛美を受けて喜ぶ間もなく、魔力回復薬を口にして、次の魔剣づくりに取りかかった。

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