旅団会議。戦争への参加を──友邦の為に──
他国の戦争に介入し、友邦を助ける決断をする。
仲間の命がかかる、重い決断です。
管理局から告げられたパールラクーンの危機的状況。
その布告を聞いた俺は、宿舎に戻って仲間と相談する事にした。
すると宿舎の敷地には、管理局の職員が来ていて、各旅団に対して協力要請を行っていると告げた。職員が渡した紙を見ると、先ほどの布告の内容や、旅団に対するパールラクーンでの活動要請など、事細かに書かれている。
「分かっている、君はもう帰っていい」
職員に告げると、その男は真剣な表情で頭を下げ、宿舎を出て行く。──職員も忙しなく動き回っているはずだ、別の大地で起こっている事とはいえ、共に生きていく仲間の危機なのだから。
「よし、すぐに会議を開こう」
俺は職員の持ってきた紙に目を通しながら、皆にそう呼び掛ける。
「オーディス団長──まさか、これは……」
「そう、犬亜人との戦争に、俺達にも参加要請が来ているという事だ」
レーチェの言葉にそう答え、俺からも話す事があるといい、新米冒険者達も呼ぶよう、ニオとフィアーネに鍛冶屋まで行かせる。──ケベルとサリエにも、こちらへ来るよう伝えさせた。
食堂に集まった仲間達。
彼らも事の重大さを理解している様子で、真剣な表情を向けていた。
新人や鍛冶の徒弟も交えており、立って話を聞いている状況だった。
「さて、管理局から届けられた紙には、こう書かれている。
仮にパールラクーンでの戦いに参加するにしても、今すぐではなく、集団での戦闘訓練に参加し、戦場での戦い方を身につけてから、実際の戦闘に加わるとの事だ」
これは書物で戦闘について理解している五賢者や、管理局に居る専門家達の意見が反映されているのだろう。
「今はパールラクーンの猫獣人や小獣人、それにフォロスハートの街を守る兵士の一部が、戦いに参加している。
これは犬亜人との戦争だ。冒険とは違う、数百単位の、あるいは数千単位の敵と、こちらの軍勢がぶつかり合う戦いになるかもしれない。その事を肝に銘じて欲しい」
リゼミラはまるでウズウズしているみたいに、身体から闘志が溢れ出ている。もうすでに、この戦争に参加する気でいるのは一目瞭然だった。
「管理局の紙にはこうも書かれている。『ゲーシオンで行われる武闘大会は、予定どおり開催する』と」
そう言うとカムイが立ち上がる。
「そんな! 悠長に大会を開いている場合じゃないでしょう!」
「まあ落ち着け、それには理由があるらしい」
そう言って紙に視線を落とす。
「武闘大会の場で、管理局と旅団の新たな繋がりについて説明する予定で、私達は『旅団統合支援課』というものを設置し、旅団と管理局は一体である事を宣言する予定でした。
冒険者同士で高め合い、大地を守る戦士を育成するという方針を明確に打ち出し、人間に力を与えてくれる神々と共に、私達は困難を乗り越えて未来永劫、生き続けていかなければならないのです──だそうだ」
カムイはまだ納得がいかないらしい。
「カムイ──お前はまず、当初の予定どおり武闘大会に参加するんだ。お前がパールラクーンという友邦の事を想って焦るのは分かるし、嬉しくも思う。しかし、そう簡単に戦場に送り出す訳にもいかない。戦争になれば、冷静さも必要だからな。──生き残る為に」
俺はそう言いながら懐から二枚の手紙を取り出す。
「実はさっき、二枚の手紙を受け取った。一枚は小獣人のミリスリアから、力を貸して欲しいという内容の手紙。
そしてもう一枚は、キャスティからのものだ。──キャスティとアウシェーヴィアは、かなり前から犬亜人との戦いに参加しているらしい」
そう言いながら、テーブルに手紙を広げて置く。
レーチェやエウラは、なぜ二人の行方が分からないままだったか、その手紙で納得した様子を見せる。
キャスティの手紙を手にすると、リゼミラがその中身を読み上げた。
しばらくの沈黙の後で、リトキスがいつにない重い口調でこう言った。
「キャスティが『助けてお願い』なんて言うなんて、本当に厳しい状況なのでしょう。僕もすぐにでも協力したいところですが」
俺は真剣な顔で頷くと、それぞれの顔を見る。
大勢の敵を相手にするという事に恐怖する者、むしろ過酷な戦いを期待して戦意を滾らせる者、旅団長の判断を聞こうと、耳を澄ます者など──色々だ。
「俺もパールラクーンの友邦を守る為、この戦いに参加するべきだと考えている。しかし──俺は片足の無い状態だ、本来ならまっさきに戦いに参加すべきなんだが……」
そう言いながら、俺は頭を横に振る。
「だが、それでも行かなければならない。最前線という訳にはいかないが、俺もこの戦いには参加しようと思う。魔法核を作り、届けなければならないしな。皆も危険なこの戦いに参加し、共に生きる仲間である二つの種族を守りたいと思う者は、この戦いに参加して欲しい」
俺がそう呼び掛けると、レーチェが立ち上がった。
「まさか! 団長は参加せずともいいでしょう。あなたは武器や防具を作り、そうした物で支援をしていただければ──!」
「いや」と、俺は反論をする。
「もちろんその手はある。しかし、俺も昔は他の冒険者から恐れられるほど、絶大な破壊力で魔物を相手にしてきた戦士だ。その力を使って、敵に恐怖を与えなければならないと考えている。軍勢を殲滅するのは容易ではない、相手に『これ以上たたかい続けるのは無理だ』そう思わせる何かが必要なんだ」
するとカーリアが手を挙げた。
少女のその手は震えていた。
「わっ、わたしの──魔法剣! あれなら、広範囲にも攻撃できるし、威力だって! わわっ、わたしも戦いに参加する!」
力強く言ったが、声は震えていた少女。
「ありがとうな、カーリア。だが──お前の参加は少し考えさせてくれ。いざという時に冷静に戦える者でないと、正直いって戦力としては不安なんだ」
そう言うと少女は悔しそうに「ぅうぅ……」と声を漏らしながら、崩れ落ちるみたいに椅子に腰かける。
「だがもし、どうにもならなくなったら──カーリア、そうも言っていられなくなるんだと覚えておいてくれ。覚悟を決める時間すら与えてはもらえないんだと。──戦争ってのは、そういう危険なものなんだ」




