中央神殿都市を守る部隊(ナンティル視点)
猫獣人ナンティル視点。
彼女は商人だったり、神殿の送り込んだ間諜(密偵)だったりと大忙し。
冒険者としての実績も充分で、彼女の腕力もそこで鍛えられたもの。
がめついけどパールラクーンでは、一部の権力者からも信頼されている若い実力者だったりします。
犬亜人どもの軍勢が迫ってきたにゃ……
数はおおよそ千三百に近いらしいにゃ。
こちらはフォロスハートの冒険者と、小獣人の魔法使いを含めても、六百三十──この人数で倍以上の敵を、迎え撃たなくちゃならないにゃ。
中央神殿の北側に陣を張り、書物に書かれた戦術をもって迎え撃つにゃ。
私達は軍隊というものがない。
冒険者の力を借りて、なんとか戦えるだけの技術を身につけるだけで精一杯だったにゃ。
私を含めた大勢は、冒険をしていたので、戦う事になれてはいたにゃ。それでも、組織的に戦う術を学んで、陣形を組んで戦うやり方を学ぶのに、多くの時間を必要としたにゃ。
混沌が攻めて来た時に戦う戦士も居るのにゃが、そこまで組織的に戦う技術はもっていないのにゃ……
軍事関係の書物もなく、そうした知識を得るにも、フォロスハートの協力が必要だったにゃ。
今回の犬亜人の攻勢について、やっと権力者連中は危機感を抱いて、戦える者を育成することに積極的になりつつある。
「ほんとうに、いまさらすぎにゃ……」
そんな私は、神殿からの要請もあり、部隊長として戦場に立つ事になったのにゃ。
もちろん犬亜人どもを撃退する為に、戦地に向かうつもりでいた私だった。けど──部隊長を任されるなんて、聞いてない。
けど負けるつもりなんて、欠片もない。
奴らのような欲しい物があれば奪えばいい、みたいに考えている野蛮な連中に、渡してやる物など一つもない。
この戦いの為に、投石機を新たに作らせたにゃ。私が権力者達に脅し……掛け合って金を払わせて作り上げた投石機。
大量の石を散らばるように投げつけて、攻めてきた敵の出鼻を叩き潰してやるにゃ。
奴らが近づいて来る前に、数を減らしてやるにゃ。
この投石機も、フォロスハートに借りた書物に書かれていたにゃ。本当はオーディスにも協力を頼んで、もっと強力な物にしたかったのにゃけど……
そうにゃ──手紙を書いて、オーディスに協力を頼むべきかもしれないにゃ。
この戦いに勝って、犬亜人どもの脅威を退けられるなら、オーディスに大金を払ってもいいにゃ。
天幕に入って、小さなテーブルに紙を置くと、手紙を書き始める……
と、そこへ、誰かが慌てた様子で天幕に入って来た。
「ナンティルさん! フォロスハートから援軍が送られてくるそうですにゃ! 数は六百!」
「それは朗報にゃ!」
詳しく話を聞くと、フォロスハートを守る兵士を送ってくれると決められたらしい。
六百の内の何人が、この戦地に送られてくるかは分からないが。
「フォロスハートから来た兵士には、愛想よくするのにゃ? ちゃんと一緒に戦う仲間として受け入れないとダメにゃ。皆にもそう周知させておくにゃ」
わかりましたと言って、戦士は下がって行く。
私はオーディスの手紙に投石機の事などを書き、犬亜人との戦いで有利になる物を作って欲しいと、率直に書いて送る。
「オーディスから、なんらかの知識を借りられるなら、大金を支払っても惜しくないにゃ」
そうした事も書いて、その手紙をすぐにフォロスハートに居る、オーディスの元へ届けるよう早馬を飛ばした。
「この戦いで金を惜しんでいたら、あとで絶対に後悔するにゃ。金はこういう時の為に稼いでいたのにゃから──」
パールラクーンの最大の危機にゃ。
それに立ち向かう為に、全力を尽くさなくては。
私は自分のほっぺたを叩くと、天幕を出て、戦いに備えて訓練をする事にしたにゃ──




