犬亜人との戦争。その最前線より(アウシェーヴィア視点)
第九章「パールラクーンを巡る戦い」開幕です。
「ハァッ!」
何度目の斬破を打ったか、もう数えていられない。
周囲に立つ仲間達にときおり守られながら、気を充実させる為に瞑想をする。大地から、気脈から──その力を足下より伝え、自身の気へと変換する。
「よし、代われッ」
私は前方で戦っている兵士に声を掛けた。
「まだ……いけます!」
その男はそう言ったが、無理をしているのは明らかだ。
だが──この度重なる戦闘状態の中で、無理をしていない者が居るだろうか?
私は戦況を見つめながら、前方で小獣人と共に戦列を死守している者の背中を見る。──まだ若い、私よりも五つは下だろう。
彼らはフォロスハートの兵士として、この戦場に送り込まれていた──管理局が送り出した、先遣隊の一人。
彼の仲間はここにも数十名いるが、傷つき、後方で治療を受けている者が多い。それ以前に、犬亜人に倒され、命を落とした者も数名いた。
「くらえぇっ!『爆裂弾』‼」
キャスティの声。
彼女の強力な魔法が、遠くから攻め込んで来る犬亜人の一団に向かって放たれた。
並の魔法使いなら一発撃つのがやっとの魔法を、彼女は四発も放ち、広範囲に向けて四発を的確に落として見せた。
「ズズゥウゥンッ‼」
大きな複数の爆発と共に、周囲に衝撃波が炸裂する。
「おぉおっ‼」
仲間達から歓声が上がる。
キャスティの魔法が炸裂する度に、まるで息を吹き返すみたいに、兵士や小獣人が敵を威嚇する雄叫びを上げるのだ。
あの小さな小獣人達も、魔法が得意な者が多いが、キャスティの技量には及ばない。
彼女には冒険の中で成長させた、実戦での経験がある。その力は犬亜人どもを恐怖させるのに充分だったろう。
かく言う私も、彼女の存在が頼もしく、キャスティが強大な魔法で敵を粉砕する度に、気力が漲るのを感じる。──私の中の闘志に火が焼べられるのだ。
私は前に歩み出す。兵士の肩を叩き、後方で休むよう言うと、彼の代わりに戦列に加わった。
キャスティの攻撃で甚大な被害を受けた犬亜人ども、それでも奴らはこちらに向かって攻め込んでくるつもりのようだ。
「上等。ここで奴らの進撃を止め、援軍が来るまでの時間を稼がせてもらおう」
爆発による被害を受け、分断された連中が、ゆっくりと前進を再開する。
「ここで奴らを打ち倒し、この陣を突破するのは不可能だと、頭の悪いあいつらの腐った脳髄に、教え込んでやろうぞ!」
「ぉおぉおオォォ──ッ‼」
私の言葉に兵士と小獣人が鬨の声を上げる。
西にある中央神殿都市の方では、猫獣人達の部隊が戦っているはずだ。
こちらも負けられない──これ以上、奴らの侵略を許す訳にはいかないのだ。なんとしても、ここで食い止める!
無数の犬亜人の死体を踏み越え、奴らが攻めて来る前に、こちらから打って出る。
戦場の一角にある空漠を戦地に選んだ。
奴らに囲まれる前に、目的の一団を壊滅させ後方へ退けば、危険を最小限に出来るだろう。
私は自身に強化魔法を掛けると、敵の集団に向かって突撃を開始した。




