表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

380/585

不意に訪れた凶報と、旧友からの手紙

 その日の午後に鍛冶屋に現れたのはメリッサだった。彼女が重要な役職にいてからは、滅多に姿を見せる事はなかったが、突然やって来た彼女からは、必死な様子が見て取れた。

「ど、──どうした。そんなに慌てて」

 彼女は馬車でやって来たはずなのに、息を切らしている。

「いえ──、色々と忙しくなったもので」

 ふぅ、ふぅと、呼吸を整える彼女。

 何をあわてているのかと思っていると、彼女は小さなかばんから紙を取り出し、それを見せた。


「あ──なになに……、『旅団や冒険者を統括する、新しい部署の設立について』……ほう、そうか」

 その資料に目を通していると、彼女は「間違えました、こっちです」と、別の紙を差し出した。


「なんだ今度は……、『パールラクーンの情勢についての報告』──ほほう、ちょうど気になっていたところ……なにっ⁉」

 そこには、かなり厳しい状況についての報告が記されていた。管理局の送り込んだ職員や冒険者による、客観的な報告のまとめであるらしく、信憑性しんぴょうせいは高いとの事だった。


「このままではパールラクーンの女神アヴロラ様の居る御所、中央都市アーカムまで、犬亜人ババルドによる侵略が進むかもしれないとの事です」

 メリッサはそう告げた。その報告書には、猫獣人族フェリエスだけでなく、小獣人族エルニスの方も危機的状況にあり、すぐにでもフォロスハートの援助が必要である、と結論づけられていたのである。


「そしてこちらの手紙も、同時に送られて来たのです。……小獣人族のミリスリアという方から、あなた宛てに」

 どうやら相当に厳しい状況なのだろう。個人宛ての手紙を、管理局への手紙と一緒に届けさせるくらいに。

 ミリスリアの部下が、管理局に協力を要請する手紙と一緒に、俺への手紙も手渡したらしいのだ。


「かなり戦況は厳しく、管理局に直接、支援を要請する手紙の内容でした」

 俺は手紙の封を切ると、その中身を取り出す。

 封書の中には、二枚の紙が折りたたんで入れられていた。



{ 突然のお手紙、申し訳ありません。ミリスリアです。

  この手紙を送る事になったのは、ある人の助言が切っ掛けでした。あくまでもこのシュナフ・エディンでの問題は、私達が解決しなくてはなりません。──しかし、このままでは、私達は犬亜人の侵攻に敗北してしまうかもしれません。

  オーディスワイア殿に、このようなお願いをする事を、どうかお許しください。


  私達の造った機械があるのですが、それを起動させる火力が足らないのです。どうかオーディスワイア殿の錬金術で、火の力を秘める、強力な魔法(コア)を作って欲しいのです。

  そしてシュナフ・エディンに足を運び、私達の造る機械の調整を、手伝っていただけないでしょうか。


  どうか、私達を助けてください。

  あなたの技術、そして、あなたの仲間の力が必要なのです。



            シュナフ・エディン三番隊・隊長。ミリスリア。}



 そこにはそう書かれていた。

 かなり焦っていたのだろう、ところどころ文字が泳いでいる。

 手紙のすみに、機械の核に必要な力や、物体の大きさなどが書かれており、相当に焦っていたのだろうと思わせた。


 もう一枚の手紙を見ると、そこには()()()()()()()()が記されていた。



{ 久しぶり、手紙で「久しぶり」もないか。

  キャスティだよ。

  いまわたしは、エルニスの国「シュナフ・エディン」を守る戦いに参加してるの。──あ、アウシェーヴィアも一緒にね。


  こんなかわいい種族を滅ぼそうとする奴らなんて、わたしの魔法で絶滅させてやるわ。

  ……なんて思ってたけど、奴らの数が尋常じゃないの。できれば魔力を回復する錬成品を持ってきてくれない? なんてね。──でも、本当にまずいかも……

  アウシェーヴィアも懸命に戦っているけれど、このままじゃ危ないかな。──助けてお願い。


                    キャスティ }



 ────なんて事だ。あいつら、パールラクーンに行っているとは聞いていたが、戦争に参加しているのか。


「管理局の方はどう動く?」

 俺はその二枚の手紙をメリッサにも見せた。

 彼女は食い入るように二枚の手紙に素早く目を通し、すぐに救援を送るしかないでしょう、と口にしたが、その為には、フォロスハートを守る兵士や冒険者を、パールラクーンの戦場へ送り込まなくてはならないのだ。

 誰がその戦争で傷つき、倒れる者の責任を取れるというのか。

 決断をするには、まだ時間が必要になるだろう。


「いえ、すでに先遣隊せんけんたいの兵士が送り込まれています」と、メリッサは言う。

 都市を守る兵士の一部が、パールラクーンを守る為に送り込まれたらしい。

「志願した冒険者も兵士らと共に、パールラクーンの支援に当たっています」

 そうだった──一部の冒険者は、すでにパールラクーンに出向しているのだ。

 しかし、このままではまずい。

 この二枚の手紙以外にも、管理局に宛てられた支援要請の手紙もあったという。──管理局もおそらく、五賢者も加わって、この件に関する会議が開かれているはずだ。




 すると、外で重い鐘の音が鳴り響いた。

 管理局が設置した緊急時を告げる鐘。

 広場や管理局前に張り出される、布告ふこくを見ろという合図だろう。


 俺とメリッサはすぐに大通りへ向かった。

 するとそこには監視飛翔体がいくつか浮いているのが見えた。

 試作機ではない、量産されたものだ。

『管理局から重要なお知らせです』

 それは飛翔体から発せられた。

 どうやら音声を伝える機能を乗せた、通信用飛翔体らしい。


『フォロスハートはこれから、パールラクーンで起きている、犬亜人による猫獣人族、小獣人族への侵略を止める為に、戦いへ参加する事になります』

 それは衝撃的な布告の始まりだった。

『兵士や冒険者は、この戦いに参加する事を求められます。大変危険な戦いになるでしょう、強制は出来ません。しかし、パールラクーンの友を守る為にも、どうか、皆さんのお力をお貸しください』


 飛翔体から発せられる言葉が、また繰り返された。

 その言葉は、通りに集まった人々のざわめきに飲み込まれ、激しい戦いの中にある救いを求める声の様に、まったく聞こえなくなってしまったのだった。




        ー 第八章 新たなる指標 完 ー

第八章はここまでです。

次話からいきなり戦争に突入する訳じゃありません。プロローグではオーディス以外の視点でスタートしますが。どろどろの戦闘描写を書くつもりは今のところないです。


次話は火曜日に投稿します。


感想をいただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ