金色狼を抜けた人材の行方
次話は火曜日に投稿します。
次の日曜日の投稿がこの章の終幕となります。
今までの話の中で出てきた事柄と、今回の話で表される不穏な予兆──
急展開は目前!
夕食前に猫の餌を運んで行くカーリアとメイ。
ユナは自室で読書中らしい。
俺も餌を入れた皿を持ち、小屋まで運んで行く。
「私ね、補助魔法を習得できたよ」
とカーリアが呟く。
「おお、おめでとう。やったじゃないか」
攻撃強化魔法と防御強化魔法を習得したのだという。
「魔法障壁は、二つの補助魔法に慣れてからでないと、私の場合は習得が難しいって言われた」
そんな事もあるのか、……魔法障壁は位階が一つ上の魔法だったかな?
「けど、がんばるよ」
「おう」
少女が積極的になれたのは良かった。やはり新人達の統率を任せたのは正解だったな。
「カーリアも偉いね。カムイもかなり、格闘戦の技術を覚えてきたよ。武闘大会でも、簡単には負けないと思う」
メイが子猫に餌をあげながら言う。
武術家の戦う者への感覚は鋭い、メイが言うなら間違いないだろう。以前のカムイの蹴りは、まだまだといった感じだったが、メイがつきっきりの訓練をしたお陰で、かなり鋭いものになっているのは、傍目からも確認できる。
「剣と足技の連携を自然に出来れば、言う事なしだな」
猫達に餌を与えると、俺は食堂に向かいながら、今日の訓練での出来事を聞き出し、仲間がそろそろ訓練よりも、実戦に戻りたがっているらしいのを聞いた。
「短い時間で、そんなに上達を感じられたのか」
「エアネルもかなり戦闘の勘を鍛えられたみたい。あのレオシェルドって人──本当に強いし、教え方も上手いみたいだね」
それは良かったと答えながら席に着く。
カーリアも周囲の仲間に気を使えるようになり、子供から一つ、大人への階段を上がった感じだ。──メイは相変わらずだが。
「あ、そうだ。団長──ありがとう、プラノクリージュ。作ってくれて」
「あ、おう。あまり一度に食べ過ぎるなよ」
少女は「わかってる」と答えて、まだ冷蔵庫に残ってるよと告げた。
メイも少しは大人になっているのだろうか。彼女に必要なのは精神的な成長だと思う。肉体的な強さや戦闘技術は、かなり高い水準にある彼女。あとは戦い以外の繊細な感覚を身につけて欲しいところだ。
食事が運ばれて来ると、今日も大勢での食事となった。わちゃわちゃとそれぞれが皿に食べ物を盛りつけ、自分の席に運んで行く。
今日は豚肉の角煮っぽい料理が出された。味付けは単純で、豆と一緒に煮込んである。
他にも小魚を骨ごと砕いて、ひと纏まりにした物を焼いた、魚肉鉄板焼きの様な物など。
これには果物の調味料が掛けられ、爽やかな酸味が魚の風味に合っていた。
(西洋料理っぽいかな?)
それと干し葡萄などが入った焼き飯を食べる。
(今度は民族料理風……⁉)
香辛料の利いた焼き飯、なかなかに癖になる香ばしさだ。まだまだ香辛料の少ないフォロスハートだが、パールラクーンから入ってくる香辛料もあったのだろう。
今日の料理もリーファが主に作ったのだ。彼女の料理は最近とくに、様々な味付けを試しているみたいだ。勉強熱心な戦闘侍女である。
「ところでオーディス団長」
とレーチェが真剣な顔で話し掛けてきた。
「私、金色狼を抜けた古強者の方を探していたのですが」
「おい待て、古強者って……キャスティやアウシェーヴィアの事か? あいつら俺よりも年下だぞ」
すると彼女は「あら、そうですか」と、俺の言葉を切り捨てる。────ひどいっ。
「イヴァニクスさんとロザンディードさんの二人は結婚していて、ウンディードのほうで旅団に入っているのは確認できましたが、キャスティさんとアウシェーヴィアさんの行方がわからないのです」
「なに?」
「金色狼を抜けたあとの足取りは追えたのですが、ここミスランからパールラクーンへ向かったあとの行動が、まったく追えないのです」
すると、その話を聞いていたエウラも会話に加わってきた。
「私も以前からアウシェーヴィアさんや、キャスティさんの情報を聞いて回っているのですが、パールラクーンから帰って来たという話は、聞いた事がないです」
パールラクーンから帰って来ていないのか? だとしたら向こうで活動をする冒険者として、管理局が記録しているのでは……? 管理局に届け出ているのは、転移門を使う時くらいだろうが。
「パールラクーンにか……あいつら、冒険拠点を向こうに移したのかもしれないな」
「だとしても、旅団に入っている訳でもなく、たったお二人で活動されているようですから──」
大丈夫でしょうか? と心配そうにしているレーチェ。
キャスティは、アディーディンクに迫る力を持つ魔法使いだった(ただし、彼女は攻撃魔法ばかりで、アディーのような万能型とはまったく違う類型の魔法使いだ)。
アウシェーヴィアは、リゼミラの弟子といった感じの女剣士だ。強化魔法で自分の身体能力を強化する戦い方も、リゼミラを模していた。もちろんこの二人は強い、並の冒険者など比較にならないほどに。
あの二人が共に活動しているのであれば、たいていの敵を退けられるだろう。
問題は彼女らが、いったいパールラクーンのどこで活動しているかだ。犬亜人との戦争状態だという猫獣人や小獣人たち、もし犬亜人の勢力圏に近い場所で冒険していたら、危険なのは間違いない。
「無事にやっているといいんだが」
俺の言葉にレーチェが同意し、「もう少し情報を集めるよう、依頼してみます」と告げた。
興信所でもあるのか? そんなものがフォロスハートにあるなんて聞いた事がないが……
いや、冒険者の中には、様々な事情通が居たものだ。そうした人間を頼っているのだろう。
古巣の仲間を想うと、不安な気持ちが胸の中に去来する。──パールラクーンの情勢について、もう少し詳しく聞いた方がいいかもしれない。俺はそう考え始めていた。




