表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

374/585

大勢で夕食を

 食堂には新入りも集まり、中央にある長テーブル以外にも、いくつかの丸テーブルと椅子が用意され、調理場で料理する人数も必然的に多くなった。

天火オーブンの確認! 焦げないように!」

 リーファの指示が飛ぶ。

「鍋も気を付けて! かき混ぜながら弱火でっ」

 レンネルとエアネルも調理場と食堂を行ったり来たりしながら、なんとか食事の用意を完了させた。


 新入り達が皿を運び、台車に鍋を乗せて移動させ、汁物スープなどを皿によそる。

 全員が集まって、いただきますと挨拶をする。──大合唱だ。


 今日は猪肉などが多く食卓を彩り、中には大きな海老を使った、海老パン粉揚げ(フライ)が出された。

「おおっ、海老フライか! 贅沢ぜいたくだなぁ」

 横に座っていたカーリアが「えびふらぁ?」と言っていたが、無視して海老パン粉揚げを皿に取り、塩を付けて食べる。

 サクッとした触感に、濃厚な海老の旨味……さすが旅団の料理長リーファ。注文どおりの見事な揚げ方だ。

「あ、おいしい」

 カーリアにユナも、海老パン粉揚げを気に入ったらしい。

 タルタルソースに似たソースも作ってあるが、揚げ立ては塩に限る。


「あ、猫の小屋。新しいのを作ったんですね。壁が厚くなってましたけど……」

「ああ、あれは断熱材が入ってるんだ。冬の寒さをしのげると思ってね」

 ユナにそう説明してやると、食事を終えたメイが、お菓子はないの? と言ってくる。

「今日は忙しくて作れなかったんだ、また今度な──というか、自分で作りなさい」

 調理法は調理場にある帳面ノートに書いてあるのだ。俺はそう説明して調理場を指し示す。

「ユナぁ~~」

 と親友に泣きつく砂糖中毒シュガージャンキーの少女。

 最近は大人しくなっていたと思っていたが、禁断症状がではじめたらしい。(──いや、もちろん冗談だが)

「わかったわかった、また今度ね。砂糖は貴重なんだから──ほどほどにしないと」

 なんだかんだとユナはメイに甘い。はたから見ていると、友達というよりは姉妹みたいな感覚だ。


「リーティスさん帰られましたね」

 とレンネルが言ってきた。

 宿舎の庭で別れの挨拶をしたらしい。

「ああ、鍛冶屋の方にも来たよ」

「実家に帰ったら、食材をまたお送りします。そんな風に言っていました」

 彼女リーティスにそんな権限があるとは思えないが……まあ、両親も彼女には甘いのだろう。数日宿泊したと聞けば、食料の備蓄から分けてくれるのかもしれないな。


 するとエウラが真剣な顔でこう訴えてきた。

「オーディス団長、明日は私も冒険に出てよろしいでしょうか」

 なんでも「斬破」と「破砕撃」を実戦で試したいらしい。

「ああ、そうだな。せっかく習得したんなら、実戦で使わないことにはな。では新入り達と共に、初級の──そうだな、『塩の山と泥の沼地』にでも行って来てもらおうか」

御意ぎょい」と、相変わらずおかしな態度になってエウラは答えた。




 夕食後に猫の様子を見に行くと、母猫も子猫も皆、新しい小屋の方に入っていた。猫は新しい物に興味を抱いたり、警戒したりするらしいが、断熱仕様の小屋を気に入ってくれた様子だ。小屋を覗き込んでいる俺とカーリア。

「子猫達、すっごい元気だね」

「うむ、そろそろ管理局に引き取ってもらうか」

 そう言うと彼女は「えっ」と声を上げる。

「ずっとここに居るんじゃないの」

「いやいや、管理局の方で子猫の新しい飼い主を見つける予定だと、そう説明しただろう」


 するとライムが俺の顔をじっと見上げているのに気づいた。まるで、子猫をどこかに譲渡じょうとするというのを聞いていたみたいに、こちらを見つめている。

「ゥニャァ──」

 母猫の鳴き声は「わかっている」とも、「好きにしろ」という感じにも聞こえた。

 子猫が独り立ちした後の事など、自分は興味がないとでも言わんばかりに。


 ライムもそのうち、この宿舎を出て行って、野良猫に戻ってしまうのだろうか。気ままなライムの事だ、子猫達が大きくなれば──また以前のように、そこらをほっつき歩く生活に戻る可能性が強い。

 わしゃわしゃと彼女の頭を撫でてやると、ライムは鬱陶うっとうしそうに撫でられながら、横になったまま眠ろうと目を閉じる。


「ライムだって、子猫と一緒に居たいんじゃないかなぁ」

 カーリアがそうつぶやく。

「そうかぁ? 猫なんて、子供が大きくなったら、知らん顔して出て行くと思うぞ」

「えぇ──? そんなことないよねぇ? ライムは」

 そう言って白猫の腹を撫でるカーリア。

「ニャァ──」と、小さな鳴き声で応えるライム。名付け親には従順だ。


 子猫達は母猫のおなかなどに寄りうと、そのまま横になった。

「もう寝る時間だ。──カーリアも、おやすみな」

 少女は「おやすみなさい」と言って、そばを通りかかったユナとメイと共に、二階へ上がって行く。

 俺は彼女らを見送ると庭に出て、こっそりと訓練を始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ