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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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リーティスの帰宅、カーリアの成長

次話は火曜日に投稿します。

この章の終わりまでは週2回の投稿を頑張ってみますね~

 二人の徒弟が昼食から戻って来た時には、五賢者のヴォージェスは帰っていた。管理局はいま色々な部署が能動的に活動し、上も下もてんやわんやだと言うのだ。

 確かに、友邦ゆうほうとも言えるパールラクーンで、危険な敵対亜人の勢力が版図はんとを広げようとしているのを、指をくわえてただ見ている訳にはいかないはずだ。


 管理局は最近──神騎兵シュルトヴァーレンの開発や、監視飛翔体の量産、音声通信用設備の開発、混沌こんとんの調査──こうした事にも力を入れているらしい。素材の調達から新しい研究、そうした事柄にも人員をかねばならない。


 昼食を料理屋で食べていると、そばの席に座っていた市民達の会話が聞こえてきた。──どこの旅団が武闘大会で優勝するか、というものだったが、彼らの会話に出てくる旅団の名前は、ミスランにある旅団のものばかりだった。

 地元ミスランの旅団に活躍して欲しいという期待の表れなのだろう。別に旅団の冒険者が優勝したからといって、優勝祝賀会がおこなわれる訳でもないのだが。


 高齢の市民は「金色こんじきおおかみの旅団」をしていたが、二人の男達は最近の「金色狼」の事情を知っているらしく、それはないと断言していた。

 代わりに推された旅団が「蒼髪の天女旅団」と「金獅子の錬金鍛冶旅団」だった。俺はうんうんとうなずきながら立ち上がり、店を後にする。

 ミスランの市民の間でも名前が出るようになったか。




 少し誇らしげな気持ちになって鍛冶屋に戻ると、店の前には馬車が停まっていた。ずいぶんと豪華な馬車だなぁ……と思いつつ鍛冶屋に入ると、そこにはリーティスが待っていた。


「おう、どうした」

「いえ、家に帰るので、そのご挨拶に」

「そうか。久し振りに姉に会って満足したか?」

「それはもちろん」

 妹はそう言いながら、なにやら物騒な笑みを浮かべた。


「それよりも……()()()()()()()()()?」

 まるで「()()()()()()()()()()()」と言い出す、宿屋の主人のような下世話な響きで言うリーティス。

「夕べ? ──ああ、レーチェになにを吹き込んだかは知らないが、あまり姉をきつけるなよ」

 それで? それで? と、興味津々(きょうみしんしん)な様子で詰め寄る彼女。


「残念だが、特になにもなかったぞ。前にも言ったが、レーチェはあれで初心うぶでヘタレなんだから、あまりおかしな事を吹き込むんじゃない」

 すると少女はがっかりした様子で肩を落とす。

「実家に帰る前に、()()()()を持って帰りたかったのですが」

「おいおい」

 俺がつっこむと、彼女は頭を下げて「この首飾りと強壮薬、本当にありがとうございました」と礼を口にしてきた。


「ああ、うん。それはもういいから──」

「今度はオーディスワイア様が、ウィンデリア領に来てくださいませね」

 彼女はバカ丁寧にそう言ったが、その表情の裏には、なにやらよからぬ企みが隠されていると感じた。

「ああ──うん、そのうちにな」

 辛うじてそれだけを口にすると、俺は鍛冶屋の外までリーティスを送り出す。彼女は馬車に乗り込むと、窓から手を振りながらウィンデリア領に帰って行った。




 鍛冶屋での仕事は新しいものは入っていなかった。

 明日には四大精霊の加護を作り出す錬成に、集中力が高められそうだ。そう感じながら、せっかく空いた時間を有効に使おうと、旅団員に作る武器などの設計図を書き始めた。

 魔剣の性能を持たせた槍や、手甲てっこうなどもいいかもしれない。


 そんな作業をしているうちに、夕暮れが近づいた。

 新しく作った猫の小屋を持って宿舎に戻ろうとすると、道で冒険から帰って来た新人達と、それを率いているカーリアに出会う。

 彼らは疲れも見せず、傷ついた様子もないが、麻袋や革袋に大量の素材を入れて、持ち帰って来たようだ。


「ご苦労さん、平気だったか?」

 俺の問い掛けに「はい」と答えるエクスダイン。若いながら隆々(りゅうりゅう)とした体格の彼は、大剣を背負いながら、麻袋を差し出してくる。

「石英などが入ってます」

「おっ、そうか、ありがとう。悪いけど素材を持っている奴は鍛冶屋に来てくれ、素材を置いてくれれば、あとはこちらで素材の確認をしておこう」

 そう言って鍛冶屋に向かうと、何故かカーリアもついて来て、歩きながら彼女はこんな事を言ってきた。


「リーダーって難しいね。団長の言っていたとおりに、新人の補助に回って活躍する機会を与えたかったけれど──わたし、それだと何も手出し出来なかった」

「ああ、そうだったか。まあ、危険になったら守ってやるくらいでいいんだよ。引率みたいなもんさ」

 すると少女は決意したように顔を上げる。

「明日は、補助魔法を覚えに、魔法屋に行って来る。回復魔法は無理だけど、仲間に使う補助魔法なら、たぶん覚えられると思うんだ」

「お──、それはいいな。攻撃強化や防御強化魔法があれば、自分の戦闘力も上げられるし、新米の手助けにもなる」

 うん、と彼女は頷く。


 新米達が荷物を鍛冶場に置いたのを確認し、鍛冶屋の扉を閉める。

「よし、今日はまだ時間が早いし、食材を持って宿舎の方に新米達も来い。そこで冒険での感想や、反省点を聞こうじゃないか」

 俺は彼らにそう呼び掛け、二階の部屋へ武装を解除しに行かせた。

 新米からの話も聞いて、どういった点に注意が必要になるか、もう一度、彼らの視点に立って考えてみる。


 こうした作業の繰り返しが、旅団としての活動を円滑にし、旅団全体の能率性を上げ、各個人の力を引き出す組織として成り立つのだ。

「カーリアも成長したなぁ……」

 しみじみと口にした俺に、少女は冷ややかな視線を向けてくる。

「オーディス団長は──たまに親父くさい」

「ひどいっ」




 宿舎に入ると、玄関先の猫達の空間に新しい小屋を置いてやる。

 母猫のライムや子猫達が、興味津々(きょうみしんしん)な様子で小屋を調べている。

「この中は暖かいぞ」

 古い小屋の横に新しいのを置いてやると、ライムは小屋の壁に付けられたでこぼこに体をこすりつけ、さっそく小屋の新しい魅力を知ったようだ。

 子猫達も新しい方の部屋に入ったので、綺麗な布と綿織物タオルを入れてやり、寝床を用意してやった。

「夕べはお楽しみ~」有名なドラクエのセリフ。

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