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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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かわいい旅団員には冒険をさせよ

 カムイとの朝練は激しい攻防となった。

 二本の木剣を振り回すカムイに対し、こちらは剣と盾を手にして応戦する。

 あくまで訓練なので、どれくらいカムイの連撃が、リゼミラの()()に近づいたかを判定する目的で、防御をメインに相手をした。

 カムイの双剣はかなりさまになってきたが、まだまだあらい部分が目立つ。

 そういった点を指摘していると、庭にメイとユナがやって来て、朝食の用意が出来たと知らせてくれた。


「この前よりも、防御と攻撃にキレがありますね」

 訓練を終えたカムイが俺の動きを、そう評する。

「そうか?」

「なにかあったんですか? 朝から訓練しているし……もしかして、現役復帰を目指しているとか?」

「いや、それはない」

 宿舎に戻りながらも、カムイとリゼミラの動きの違いを説明していると、少年は真剣な表情で聴き入っていた。


「しかし、双剣で武闘大会に出場する訳じゃないだろう? 普段どおりの武器を訓練した方が……」

「いえ、双剣でも出るかもしれません。別に途中で得物えものを変えてもいいらしいので」

 なるほど──最初は片手剣で闘い、決勝などで当たる相手には、違う戦闘形式(スタイル)で不意を突く作戦か。

 そこまでして優勝しようという気持ちになっているとは知らなかった。カムイには「金獅子の錬金鍛冶旅団」を代表しているのだ、という強い気持ちがあるのだろう。


「まあ、あまり気張りすぎるなよ、別に優勝しなくたって構わないんだから。旅団の冒険者は、魔物や混沌こんとんぜいとの戦いに強ければ、対人戦闘が弱くても構わないと思ってるくらいだぞ、俺は」

 現に俺は、対人戦闘でもそこそこの勝率を持っていたが、それよりも転移門先で、どれだけの成果を得られるかを重視していた。強敵(魔物)を打ち砕く力を対人戦闘で披露ひろうする訳にはいかない。対人戦闘では剣気などの使用は限られるし、そもそも仲間内で破壊し合っていたら、冒険者の数が減るばかりだ。


「もちろんわかってます。けど、()()()()()()()()()()()ので」


「あいつ」とは黎明れいめいの白刃旅団の団長、アンクバートの事だろう。まあその気持ちは分かる。

「なら、レオシェルドから学べる事をすべて学んでおけ。あいつの剣技は、対人戦闘でも優れた力を発揮はっきするからな。なにより戦闘経験の積み重ねが違う。白銀騎士の騎士長と一対一(タイマン)で完勝するような奴だからな、あいつは」

 もはやあきれる水準レベルで強い。

 相手に攻撃をさせておいて、その「()()()」を取り、武器を持つ腕を落とし、即座に首を狙ってとどめを刺すなど、実力差がないと出来ない芸当だ。

 騎士長位階(クラス)の白銀騎士すら手玉に取るような技量とか、敵に回したくない。

 そう話して聞かせると、少年は感心した様子で耳をかたむけていた。


「リゼミラさんとは戦い方が違う感じですか?」

「リゼミラは後始末の事とか考えない類型タイプだな。俺が言うのもなんだが、荒々しい攻撃で──相手から入手できる鎧などを平気で傷つける。レオはその点、実力差がある場合は、冷静に武器や鎧への損害ダメージを外して、弱点を正確に攻める類型だ。これだけでもあいつが、飛び抜けた戦闘能力(センス)を持っているのが分かるだろう」




 食堂で食事を済ませると、庭に出て行った。

 なんとすでに鍛冶屋の二階にある宿舎で暮らす新人達が、庭に集まり始めていた。──どうやら食事のあと片づけをしている者以外は、訓練をしに来たらしい。

「気合いが入っているところ悪いが、宿舎に居る新入りを連れて、鍛冶屋まで来てくれるか」

 ローレンキアらに声を掛けると、彼らは一様に宿舎へ駆け出して行く。カムイらの真剣さが伝染したのだろうか? やけに新入りの冒険者達もやる気になっている感じだ。




 鍛冶屋に行って準備をしていると、扉を開けて新米ルーキー冒険者達が集まって来た。

「もう中には聞いている者も居るかもしれないが、君らも冒険に出て、素材集めなどを手伝ってもらう事にした。そこで、武器や防具を強化しておいたので、それを各人に渡そうと思う」

 ぉおっ、と歓声が上がる。

「この装備は無料だが、完全にただではない。それは素材を集めて、旅団や鍛冶屋の素材保管庫に、そうした物を集めてもらう事で返済する、というものだ。──まあそうした素材も、旅団員の装備を強化したり、作り出す時に使われるので、結局は君ら自身の元に還元される訳だが」


 まずは鉄鉱石や石英せきえいなどを集めてきてもらう。そう言って彼らに武器や防具を順番に手渡していく。装備が合わない場合は、ケベルとサリエがすぐに身体に合うよう、革帯ベルトや金具を使って調整する。

「新人用の装備としては破格の物だと思うぞ。それで下級難度の転移門へ向かい、素材を集めてきてくれ」

 もちろん先輩冒険者を一人は付ける事になるが。


 彼らが装備を身に着けたのを確認すると、宿舎の方へ戻り、カーリアやレンネルを呼び、新人と共に探索へ向かってくれと頼む。

 レンネルが「はい」と答えたのに対し、カーリアは「わ、わたしがか……」と、露骨ろこつに緊張した様子を見せる。

「おいおい、もう中級で活躍しているんだぞ、いまさら初級難度に新入りを引き連れて行くくらいで、ビビってんじゃない」

 こそこそとカーリアに話し掛けると、少女は「自分が統率者リーダーになった経験なんかない」と答えるのだ。


「そこは、今までの冒険を思い出し、仲間が統率していたように新米を導いてやればいい。素材を集めやすい場所とか、方法とか、そういった説明をしながら、──分かりやすくだぞ」

「ええ──⁉ あんまり自信がないなぁ……」

「そんなんじゃ『魔法剣士()()()()()』みたいな、立派な冒険者にはなれないぞ」

「なんちゃらじゃない! ()()()()()! それにエリステラは冒険者じゃないし」

 分かった分かったと言いながら、少女の小さな背中を叩いてやる。


「ま、頼んだ。大丈夫──いざという時は、カーリアが新入りを守ってやればいい」

 う──ん、と悩んでいる彼女だったが、しぶしぶといった感じで引き受けるのだった。

「わかった……やってみるよ──」

 相変わらず人との接触が苦手な少女は、新入りとの意思疎通いしそつう苦慮くりょしそうだ。


 俺はカーリアとレンネルに、集める素材にいくつかの注文をすると、彼女らを送り出した。

 確かに今回の新入りの多くは、カーリアよりも年齢は上である者も居るのだ。やりづらさはあるかもしれない。


(がんばれ)


 実力的には申し分ないはずのカーリアの背中が、新入り達の間で──やたらと小さなものに見えていた……

新米を率いて行動するカーリア。

少女の成長を期待するオーディスワイア。

そんな感じでしょうか。


「後の先」=先手を相手に取らせて、攻撃を躱して反撃する。という戦法。

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