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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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織田西さん、その発音むずかしい問題

オーディスワイアの名前の由来が明らかに。

そして戦闘訓練のシーン。剣と盾を使った豪快な動きをしたりする戦い方は、彼の剣盾時代の後半で身につけた技術かな。

織田西おだにしあゆむ」というのが、俺のもと居た世界(地球)での名前だった。

 アユムという男だか女だか分からない名前も苦手だったし、オダニシという名字も「ダニ」とか「タニシ」を思わせて子供の頃から嫌いだったのを思い出す。


 さて、だからといって、俺が突然に「オーディスワイア」と名乗りだした訳でもない。


 それはこちらに来たばかりの頃、ろくに言葉も通じない状態で、名前を尋ねられたのだろうと思った時に、自分を指さして「織田西」と言っていたのだが。

「オーダィスィ」とか「オーディシィ」とか、散々に発音され、ああもうどうでもいいよ、という感じで「オーディシ」と自分を呼んでいたのだが。言葉を学んでいる時に「オーディス」という言葉の意味が「神と共に」とか「神の為に」といった意味となる言葉だと知った。


 それは俺が神殿に案内され、神という存在を紹介された時の事だ。

 燃え盛る炎の蛇、巨大な火を噴く大蛇──そう、火の神ミーナヴァルズの顕現けんげん体を初めて見た時の衝撃。

 その体験から、この世界に()()()()「神と共に歩む者(ワイア)」という意味で「オーディスワイア」と名乗る事にしたのだ。

「歩く」という意味の「ワイア」を付けて名前っぽくする、という意味もあったが、自分の本来の名前を、心のどこかでは残しておきたい、と思っていたのかもしれない。




「ともかく、オーディスワイアはもちろん妻をめとるべきだが、であると同時にオーディスワイアは、()()()()でもあるのだ」

 火の神ミーナヴァルズの言葉に反応したのは、水の神アリエイラだった。

「あなたのもの、ではありませんよ。オーディスワイアはオーディスワイアのものです」

 いやいや、と声を上げたのは地の神ウル=オギト。

「我々のものでもあるだろう。何故ならこの男の肉体は大地と結び付き、その霊と魂は我々、精霊に近いのだからな」


 三神の勝手な言い分はいつもの事だとあきらめつつ、俺はただ黙って立っている風の神ラホルスに視線を送った。

 彼は仮面の向こう側で微笑ほほえんだようだ。そして肩をすくめて見せる。

「まあ確かにオーディスワイアは、私達との結び付きが強いのは間違いない。精霊と、世界と、命の源──そのつながりにおいて私達は、ただの人と神の関係以上に強く結び付いている。だからこそ君の睡眠時に、こうして接触できるのだから」

 なるほど、精神世界にたびたび接続されるのは、神々との接点が深い所為せいなのか。


「それにしても──なんというか、私事わたくしごとでこのように集まっていただき、光栄というかなんと言うか……」

「ははは……まあ、彼女らの事は放っておこう。いつも君の隣に座る権利を狙って争い合う、正妻とめかけのように振る舞っているからね。──ともかくも君は今度の闘いに勝利し、無事にお付き合いを始めるところからだね。でないと私達も気が気ではないよ」

 いらぬ心労を抱える叔父おじの様な意見だ。

 するとウル=オギトが大きな笑い声を出す。

「なぁに、心配はいらんだろう。戦いの場から離れていたと言っても、オーディスワイアは体を鍛えつつ過ごしていたのだから。あとは戦闘の感覚を取り戻すだけではないか?」

 戦士を守護すると言われる地の神は、俺がレーチェと闘う際に願った言葉を耳にしていたのか、していなかったのか、そんな言葉を口にした。

「がんばります……」


 * * *


 精神世界から解放された俺は、気づけばかなり長い時間を睡眠に使用していたらしい。窓の外から早朝の日差しがうっすらと入り込み、室内の気温もかなり下がっている。

 起き上がると簡単な運動を、そして霧吹きで小鉢植物園テラリウムに水をやる。窓の外を見ると、広々とした庭に朝日が染み込むみたいに、淡い光を受けて薄靄うすもやを立てていた。


 どうやら昨晩に少量の雨が降り、地面をらしたらしい。

 部屋を出ると玄関に向かい、玄関の小鉢にも水を吹き掛ける。

 視界のすみで白っぽい物が動いたので見てみると、木箱の中から子猫が出て来て、こちらを見ていた。

「おう、早いな」

 霧吹きを置きながら声を掛けると、子猫は声を出さずに口の動きだけで「ニャァ──」と鳴く真似まねをする。起き出したばかりで声が出ないらしい。

 寒かったのだろうか、ぶるぶるっと小さな体を震わせると、小屋の中へ戻って行く。


 こっちは外へ出ると、倉庫から木剣と革の盾を取り出す。今回の朝の訓練は速さにこだわって、攻撃と守りの動きを確認する。

 仮想イメージ訓練トレーニングの相手は白銀の騎士だ。奴らとおこなった無数の戦闘経験の中には、剣と盾を持っていた頃の記憶もあるからだ。


 強力な攻撃や鋭い突きに対応して反撃する動きを繰り返す。心象イメージとしては防御と攻撃がほとんど同時におこなわれるような感じ、もちろん相手の出方にもよるが。

 振り下ろしてきた剣を横に──体をずらして盾で受け流す。


 突いてきた攻撃に対し踏み込み、盾を肩に担ぐみたいにして受け流し、こちらも突きを返す。──そんな訓練を何度も何度も繰り返す。体が自然と反応できるくらいになるまで何度もだ。


 訓練を続ける中で、義足を使用してどの程度の可動が可能かを理解していく。横への動きも、普段やっている範囲より、少し大きく歩幅を広げても、足の下ろし方を変えれば、まず義足が外れる事はないと気づいた。

 義足と膝を固定する器具に負担をかけず、なおかつ足首の位置が安定するような着地、足運びを意識すれば──ある程度は義足でも戦えるだろう。

 義足特有の足の使い方を覚え、横に移動する時には移動方向に対して、爪先つまさきを向けるように踏み込めば──多少は踏ん張りが利く。


「これで少しは勝率を上げられるかな」

 ビュッと木剣を振りながら横へ跳び、続けざまに振り下ろす。そうした地味な練習を、早朝の内に体に覚えさせる。

 すると朝日がそこそこ高く登った頃に、庭にカムイがやって来た。

「おはようございます。早いですね」

「そっちもな。あまり根を詰めすぎるなよ? 休む時はしっかりと休むものだ」

 俺が足を使って横に移動しているのを見て、カムイは自分の訓練に付き合ってほしいと言ってきた。


「いいだろう、双剣でもなんでも相手をしてやる」

 少年はうなずき、木剣を取りに行くのだった。

たくさんのブックマークや評価に感謝しての早めの投稿です! ありがとう!

次話は次の日曜日です。これからもよろしくお願いします~


誤字報告ありがとうございます。


『HJ小説大賞2021』という企画で、第二次選考まで名前が載っていました!(いまさら気づきましたよ……)賞はもらえなくても、嬉しいです! 感謝~!

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