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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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四つの元素神と霊的結び付き

 その夜、眠りにいた途端とたんに、俺は何かに引き寄せられるのを感じた。耳がぐいっと引っ張られる感じがしたと思ったら、寝台ベッドではなく──()()()()に立たされていた。


「オーディスワイアよ、久方ぶりじゃな」

 俺の耳をつまみながら、ぐいぐいと凄い力で持ち上げる赤き女神。──そう、火の神ミーナヴァルズだ。

「めっ、女神……なんです? いきなり耳を──いててててっ!」

 感覚がぼんやりとするはずの精神世界で痛みを感じる──いや、幻痛というものか。


「我とはあの『映像鏡』で顔を会わせただけだと思っていたら、女を手に入れる為の戦いじゃと? 我というものがありながら……」

「いやいやいや、俺とあなたは人と神、そういう関係でもないはずでしょう。──本来は」

 何度か体を重ねた関係ではあるが、彼女はあくまで俺を複数いる男の一人だと認識しているはずだ。

「ふん、まああれじゃ。しばらく我をほったらかしにしておきながら、別の女にうつつを抜かしておるのが気に入らんのよ」

 彼女はそう言うと手を放し、野原の真ん中にあるにしては不自然な、緋色や明るいだいだい色に輝く宝石で彩られた玉座に腰掛けた。


「まあ、そこに座れ」

 そう言って彼女が指した先を見ると、いかにもぼろい、背もたれもない木製の小さな椅子が置いてあった。

(ひどい権威の横暴だ)

 そう思いながら椅子に座ると、背後から誰かが首を絞めてきた。

「くっ、くるひぃ……」

 細い腕を軽く叩き、首を絞める腕を外すよう頼むと、その女性はあっさりと離れた。──それは水の神アリエイラだ。


「私は別に気に入らない訳じゃありません。あなたが人間の女性と結ばれるのは、しごく当然の事……ただ、寂しいと思う気持ちもまた真実なのです」

 うんうんと、火の神がうなずいている。

 どうやらこの二人は示し合わせて、俺を精神世界に引きずり込んだらしい。別にレーチェと付き合うのを阻止しようとか、否定しようとかいうのではなかったが、彼女らもどういう訳か、自分の所有を主張しようというつもりらしい。


「いや──人と神では、どうしたって一緒にはなれないでしょうに」

 俺はやや開き直って、彼女らと闘う事にした。

 アリエイラは青や水色の宝石がちりばめられた玉座を出現させ、そこに腰掛ける。

 どちらの女神も厳粛げんしゅくな感じの正装を身にまとっていて、こちらはそれに比べると、まるで小綺麗な貧民を思わせる格好だ。


「それで? いったいどうしろと言うんです? 永久に存在し続ける神と、数十年しか生きられない人間とで、いったい何をどうしろとおっしゃるのか」

「むっ、こやつめ、開き直りおったぞ」

「あらあら、だいぶあの女性に入れ込んでいるようですね?」

 うっすらと笑みを浮かべる口元が怖い。

「ともかく俺は、レーチェを妻にすると決めました!」

 まだ付き合ってもいないのにそう宣言すると、彼女らはしばらく二人で目線を合わせ、無言で会話をしている様子を見せた。それは一瞬の事だったが。


「うむ、それはそれでいい。だがなオーディスワイアよ、お前はもはや我らと離れがたく結び付いておるのも事実よ」

「あなたは確かに数十年しか生きられないでしょう。しかしあなたの魂はフォロスハートの大地に帰る事なく、()()()()()()()()()()()()()()事になるかもしれません」

「……?」

 それはどういう事ですかと、俺はきょとんとして尋ねてしまった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のじゃ」

 するとこの二人とは異なる男の声が聞こえてきた。


「うむ、ついにその事について話す時がきたか」

 声のする方を振り向くと、そこには灰色の外套マントを羽織ったたくましい身体の勇士が直立していた。──地の神ウル=オギトだ。


「オーディスワイア、君は私達と強く結び付いており、四つの元素神の寵愛ちょうあいを受ける者だ。つまり君の精神、霊、魂──その存在が私達と共に分かちがたく存在し続けるかもしれないのだ」

 鮮やかな緑色の法服ローブを身に着けた高身長の若い男が現れた。──風の神ラホルス。この神はどういう訳か青と白の仮面を付けており、その顔はうかがい知る事が出来ない。


「神と共に存在し続ける……ぇえ~~、死んだ後も意識があるなんて、あまり喜ばしいとは思えないのですが」

 俺の発言にラホルスは「君ならそう言うだろうと思っていた」と応じる。

「はっはっはっはっ、相変わらずだなオーディスワイアは。確かに死なないならまだしも、死んだ後にも残り続けるなんて、生命の無い状態なのだから、()()()()()()()()()()()()()()()事になるかもしれんのだからな。不安や恐怖に思うのも無理はない」

 ウル=オギトはどこまでも楽観的だ。

 彼は人として生きる俺が霊的な存在として、自分達と同様の存在になるのが嬉しいと感じているのかもしれない。


「そうだな、永遠に意識があるというのは──別れもまた、たくさん経験するという事でもある。それがえられなくなったら、私は君の意識を輪廻りんねの中へと送るよう取り組もう」

 どうやらラホルスなら、俺の魂が彼らとの結び付きを得た後でも、永劫えいごうの存続のから解放し、多くの人と同じ様な、生々流転(せいせいるてん)の環へと戻せるらしい。


「そもそも君がこの世界フォロスハートへと来る事になった理由も、直接の原因はアリエイラにあったかもしれないが、オーディスワイア──いや、『()()()()()()()』という男の霊的資質が、私達との強い結び付きを持っていたからだ」

 ラホルスにその名前を呼ばれると、なんだかむずがゆい気分になる。

 思えばその名前を捨ててからずいぶんつが、今となっては違和感しか覚えない。もともとその名前が気に入ってなかった、という理由の所為せいなのだろう。

四柱の神との会話を通じて、オーディスワイアの以前の名前が……

そんなお話です。

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