魔剣の生成について
その日の仕事を片づけて宿舎へ戻ると、庭ではメイとユナが闘っていた。──というか、ユナの攻撃をメイが捌いているだけだったが。
メイがユナの運動に付き合っている感じだ。
杖を手にしたユナが杖による攻撃に、魔法を撃ち出す攻撃をしようとしていた。
「おいおい、無茶はするなよ」
いちおう怪我はさせないように、光を放つ「灯明」の魔法を使用しているが、杖の先端から魔法を叩きつけるという発想のもと、近接戦闘になるのを想定しているのだ。
「どういう風の吹き回しだ?」
そう声を掛けると、ユナが呼吸を整えながら、咄嗟の判断で杖から衝撃波を放って、敵を弾き飛ばして距離を離す、という上級者の戦い方があると、アディーディンクから教わったのだと言う。
「魔法剣のような戦い方は出来ませんけど、連続して攻撃魔法を使ったり、杖特有の戦い方があると思います」
彼女の言っているのは、接近された時に衝撃波などで敵を後方へ吹き飛ばし、さらにそこへ魔法の弾丸などを連続で撃ち込む連携の事だろう。アディーディンクがそうした連続魔法を駆使して戦うのを何度か見た。
素早い動きをして後方の魔法使いを狙う敵は、上級難度の転移門先にたびたび現れる。
まるで「忍者」の様な敵も出現する──拘束具のような物を身に着けた戦士。
「魔影戦士」などと呼ばれる黒い衣装に身を包む戦士で、素早い動きで翻弄してくる危険な相手だ。
ユナは真剣な様子で「魔影戦士対策です」と説明した。……やっぱりか。
「杖で身を守る為に反撃するのはいい。杖で攻撃し、拘束魔法で敵の動きを封じたりも出来るしね。……まあ、その辺はアディーディンクから教わるといいだろう。それに咄嗟の判断のためには日頃の訓練が欠かせないからな」
がんばれ、そう声を掛けて宿舎の中に入る。
明日は忙しくなる。まずは新米旅団員に武器や防具を渡すのだ。ケベルとサリエも手伝ってくれた装備品の作製。初級難度に向かうとはいっても、初めての冒険には危険がつきものだ。
その危険から彼らを守る装備を与え、彼らの活躍を支える。──と言っても彼らにはまず、素材を集めてもらう事になるだろう。
部屋に戻る時に、エウラが声を掛けてきた。
「やりました! つかめましたよ!」
「おわっ、……なんだ、何をだ?」
彼女は興奮した様子で玄関から現れた。今まで剣気の訓練をしていて、斬破(彼女は「空破斬」と呼ぶ)を習得したと言うのだ。
「そうか、それは良かった。──むしろ今の今まで、なんで習得してこなかったのかと、不思議に思っていたくらいだが」
うっ、と声を詰まらせるエウラ。
「ま、まあ……操気の才能がなかったので──けど! ついに、使えるようになりました!」
「うん、それは、おめでとう。これで魔剣もよりうまく使えるだろう。──そうだ、魔剣をもう一度、鑑定させてくれるか?」
「ん? 別に構いませんけど……」
彼女は不思議に思いながらも、二階の自室から魔剣を持って来てくれた。
鑑定をしながら、混沌結晶との共通点を探り出す。──予想通り素材の一部に、混沌鉄鋼が使われているのが分かった。他にも魔力回路の異質な流れなどがある為、一概にこれと同じ物は作れないだろうが、似たような魔剣を作れるはずだと確信する。
「ありがとう、この魔剣に近い能力を持つ剣を作る事は出来ると思う」
「え! それはいいですね。魔剣は気や魔力を倒した相手から奪えるし、魔法の剣が使えない人でも、有効な武器になると思います」
「そうだな、ただエウラの持つ魔剣は異界の金属で作られているから、それに似た物を作る為に混沌鉄鋼以外の金属についても、いろいろ考えないとな」
魔剣が吸収した魔力は、武器を持つ者の能力を強化したり、魔剣での攻撃に付与した強力な攻撃へと転化できる。こうした性質を構成するように作るのは「魔法の剣」に似ている。
ただそれは、装備する者の力量に左右されないという特徴がある。誰が装備しても、強力な力を奮う事が出来る訳だ。
今までは通常の剣に錬成強化をして、様々な能力を付与していく形式の強化だったが、魔剣を生成する事が出来るようになれば、また一つ新たな武器を手に入れられる。──この技術が開発されれば、魔法を使えない冒険者も、今までの錬成強化した武器とは違った、新たな力を手に入れられるはず。
「そのためには研究あるのみだな」
そう呟くと自分の部屋に戻り、異界の魔剣から得られた解析情報を紙に書き出した。
机に向かって作業していると、誰かがドアを叩く。──夕食の時間か、異界の魔剣の性質を書き終えた俺は、自分の手で新たな魔剣──フォロスハート産の魔剣──を造る手法について考えていたのだ。
「はいはい、いま行く……」
ドアを開けると、そこにはレーチェが立っていた。
「夕食の時間ですわ」
「ぉ、おう……」
彼女はそれだけ言うと、さっと食堂の方へ歩いて行ってしまう。
なんとも微妙な空気をその背中から感じてしまった。──何か言いたいのだが、うまく口をついて言葉が出ない、そんな感じだ。
「それは俺もなんだがな……」
レーチェのあとを追って食堂へ行き、夕食を食べながら、明日は新人達に防具を与えて、冒険へと送り出そうと思う、と発表した。
「冒険に慣れた連中が宿舎に居残っていれば、万が一の時には救援に行けるしな」
俺はそんな風に話して席に着く。
食後の会議ではそんな訓練と新人達についての報告が話され、各自がそれぞれの訓練相手に話しかけ、それぞれの訓練について相談し合っていると、メイが俺に話しかけてきたのだった。
「おう、どうした?」
「団長ぉ~~あの黒くて固い……」
「プラノクリージュ」
俺は速攻で彼女が発する言葉を止めた。──あぶないところだった……
「そうそれ」
俺は盛大に溜め息を吐きながら手が空いたら作ってやると約束し、その場をやりすごした。
魔剣の特殊な力についてなど、世界観の話。




