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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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魔剣の生成について

 その日の仕事を片づけて宿舎へ戻ると、庭ではメイとユナが闘っていた。──というか、ユナの攻撃をメイがさばいているだけだったが。

 メイがユナの運動に付き合っている感じだ。

 杖を手にしたユナが杖による攻撃に、魔法を撃ち出す攻撃をしようとしていた。

「おいおい、無茶はするなよ」

 いちおう怪我はさせないように、光を放つ「灯明」の魔法を使用しているが、杖の先端から魔法を叩きつけるという発想のもと、近接戦闘になるのを想定しているのだ。


「どういう風の吹き回しだ?」

 そう声を掛けると、ユナが呼吸を整えながら、咄嗟とっさの判断で杖から衝撃波を放って、敵を弾き飛ばして距離を離す、という上級者の戦い方があると、アディーディンクから教わったのだと言う。

「魔法剣のような戦い方は出来ませんけど、連続して攻撃魔法を使ったり、杖特有の戦い方があると思います」

 彼女の言っているのは、接近された時に衝撃波などで敵を後方へ吹き飛ばし、さらにそこへ魔法の弾丸などを連続で撃ち込む連携の事だろう。アディーディンクがそうした連続魔法を駆使して戦うのを何度か見た。


 素早い動きをして後方の魔法使いを狙う敵は、上級難度の転移門先にたびたび現れる。

 まるで「忍者」の様な敵も出現する──拘束具のような物を身に着けた戦士。

「魔影戦士」などと呼ばれる黒い衣装に身を包む戦士で、素早い動きで翻弄ほんろうしてくる危険な相手だ。

 ユナは真剣な様子で「魔影戦士対策です」と説明した。……やっぱりか。

「杖で身を守る為に反撃するのはいい。杖で攻撃し、拘束魔法で敵の動きを封じたりも出来るしね。……まあ、その辺はアディーディンクから教わるといいだろう。それに咄嗟の判断のためには日頃の訓練が欠かせないからな」

 がんばれ、そう声を掛けて宿舎の中に入る。


 明日は忙しくなる。まずは新米ルーキー旅団員に武器や防具を渡すのだ。ケベルとサリエも手伝ってくれた装備品の作製。初級難度に向かうとはいっても、初めての冒険には危険がつきものだ。

 その危険から彼らを守る装備を与え、彼らの活躍を支える。──と言っても彼らにはまず、素材を集めてもらう事になるだろう。


 部屋に戻る時に、エウラが声を掛けてきた。

「やりました! つかめましたよ!」

「おわっ、……なんだ、何をだ?」

 彼女は興奮した様子で玄関から現れた。今まで剣気の訓練をしていて、斬破(彼女は「空破斬」と呼ぶ)を習得したと言うのだ。

「そうか、それは良かった。──むしろ今の今まで、なんで習得してこなかったのかと、不思議に思っていたくらいだが」

 うっ、と声を詰まらせるエウラ。

「ま、まあ……操気の才能がなかったので──けど! ついに、使えるようになりました!」

「うん、それは、おめでとう。これで魔剣もよりうまく使えるだろう。──そうだ、魔剣をもう一度、鑑定させてくれるか?」

「ん? 別に構いませんけど……」

 彼女は不思議に思いながらも、二階の自室から魔剣を持って来てくれた。

 鑑定をしながら、混沌こんとん結晶との共通点を探り出す。──予想通り素材の一部に、混沌鉄鋼アディスヴァルドが使われているのが分かった。他にも魔力回路の異質な流れなどがある為、一概いちがいにこれと同じ物は作れないだろうが、似たような魔剣を作れるはずだと確信する。


「ありがとう、この魔剣に近い能力を持つ剣を作る事は出来ると思う」

「え! それはいいですね。魔剣は気や魔力を倒した相手から奪えるし、魔法の剣が使えない人でも、有効な武器になると思います」

「そうだな、ただエウラの持つ魔剣は異界の金属で作られているから、それに似た物を作る為に混沌鉄鋼以外の金属についても、いろいろ考えないとな」

 魔剣が吸収した魔力は、武器を持つ者の能力を強化したり、魔剣での攻撃に付与した強力な攻撃へと転化できる。こうした性質を構成するように作るのは「魔法の剣」に似ている。

 ただそれは、装備する者の力量に左右されないという特徴がある。誰が装備しても、強力な力を奮う事が出来る訳だ。


 今までは通常の剣に錬成強化をして、様々な能力を付与していく形式の強化だったが、魔剣を生成する事が出来るようになれば、また一つ新たな武器を手に入れられる。──この技術が開発されれば、魔法を使えない冒険者も、今までの錬成強化した武器とは違った、新たな力を手に入れられるはず。

「そのためには研究あるのみだな」

 そう呟くと自分の部屋に戻り、異界の魔剣から得られた解析情報を紙に書き出した。




 机に向かって作業していると、誰かがドアを叩く。──夕食の時間か、異界の魔剣の性質を書き終えた俺は、自分の手で新たな魔剣──フォロスハート産の魔剣──を造る手法について考えていたのだ。

「はいはい、いま行く……」

 ドアを開けると、そこにはレーチェが立っていた。

「夕食の時間ですわ」

「ぉ、おう……」

 彼女はそれだけ言うと、さっと食堂の方へ歩いて行ってしまう。

 なんとも微妙な空気をその背中から感じてしまった。──何か言いたいのだが、うまく口をついて言葉が出ない、そんな感じだ。

「それは俺もなんだがな……」


 レーチェのあとを追って食堂へ行き、夕食を食べながら、明日は新人達に防具を与えて、冒険へと送り出そうと思う、と発表した。

「冒険に慣れた連中が宿舎に居残っていれば、万が一の時には救援に行けるしな」

 俺はそんな風に話して席に着く。


 食後の会議ではそんな訓練と新人達についての報告が話され、各自がそれぞれの訓練相手に話しかけ、それぞれの訓練について相談し合っていると、メイが俺に話しかけてきたのだった。

「おう、どうした?」

「団長ぉ~~あの()()()()()……」

「プラノクリージュ」

 俺は速攻で彼女が発する言葉を止めた。──あぶないところだった……

「そうそれ」

 俺は盛大に溜め息をきながら手が空いたら作ってやると約束し、その場をやりすごした。

魔剣の特殊な力についてなど、世界観の話。

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