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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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魔法使いの杖を作ろう

次話は次の日曜日です。

今後ともよろしく~

 その魔法使いの女が次に差し出した麻袋には、何種類かの竜の角と骨が入っていた。どれも長い物なので、これで杖を作れという事だろう。

「その若さでこれだけの素材を集めてくるとはね、相当な術者でないと討伐できないだろう。──これなんか火竜エングナスの角と骨じゃないか」

 するとその女は首を横に振る。

「私だけの力じゃありません、仲間の力があって成し得た結果です」

 うん、まともそうな冒険者だ。──それにしても、これだけの素材を集めるとなると、なかなかの旅団に所属している魔法使いだろう。


「どこの旅団に所属しているのか聞いても?」

「私はラティフィス、所属している旅団はゲーシオンにある『黒獅子のたてがみ旅団』です」

 おお、と思わず声を上げてしまう。その旅団は今は五賢者となった「黒獅子」ヴォージェスが、かなり前に団長をしていた大きな旅団だ。

「そうかそうか、黒獅子のね……いや、それにしても()()()()()()()()……」

 俺は嫌な予感を感じてうなってしまう。

「はい。『()()()()()()()』を付与した杖を作って欲しいのです」


 やはりか──! と、心の中で大喝して頭を抱える。腕輪でも杖でも難易度は変わらない、失敗率の高い「高位錬成」を行えというのか。

「いやぁ……やれと言われればやるが、素材を失う覚悟はしてもらうぞ?」

 するとラティフィスは「分かっています」と返事をする。


「それにしても、混沌こんとん結晶まで持って来るとはどういう訳かな?」

 本来「四大精霊の加護」には混沌結晶は使用しない、──だが。

「最新の錬金術関連の情報で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そこで混沌結晶を分解して取り出した『混沌多色玉石(たまいし)』が、各属性に影響を与えるという報告をしていたので、これと霊晶石を使えば──より強力な効果を得られたり、あるいは成功率を上げられるのでは、と考えたのです」

 正直おどろいた、魔法使いがそこまで考えて素材を持って来るとは。


「それに『混沌()結晶』の力があれば、魔力を増幅するとも書かれていたので、混沌結晶があれば、オーディスワイアさんとしても助かるのでは──そう考えました」

 彼女はそう言うと、前金として皮袋に入った大量の銀貨を差し出す。

「いちおう金貨もありますが、どうしますか?」

「いや、それはどちらでも構わない。ありがとう」

 彼女は商売をする鍛冶屋の事を考えて、釣り銭にもなる銀貨をわざわざ用意してくれたのだろう。俺は彼女の気遣きづかいに対し礼を言った。


 ともかく一度、冷静になって考えてみる。

 自身の体調コンディションを考慮し、どう取り組むかを一考した。

 ──────よし。


「分かった、引き受けよう。ただし、万全の体調でのぞみたい。すまないが、五日……いや、四日後に受け取りに来てくれるか?」

 ラティフィスはほっとしたように頷いて、「分かりました。ではお願いします」と店を出て行こうとするのを止め、いちおう規約なので、素材を失った時に賠償を請求しないという念書を書いてもらう。同時にその紙は品物の引換券の役割も果たすのである。

「この紙が毎回、ただの引換券になる事を願っているんだが」

「……ですね、私もです」

 彼女は杖の長さなどを注文しながら、改めてよろしくお願いしますと言葉を残し、鍛冶場を出て行った。


 わざわざゲーシオンからミスランまで来てくれたのだ、四日後に「ダメでした」などと告げる訳にはいかない。

「まずは杖の形を決定しておくか」

 彼女の使っていた杖の太さや長さ、それを基準に考え、杖の先に付ける宝石や結晶も考えて意匠デザインを決める。


 それにしてもあの若さでこれほど数々の素材を持って来るとは、混沌結晶があるという事は、(購入したのでなければ)混沌の悪魔をほふったのだろう。

 うちのユナはもっと若いが、「四大精霊の加護」を付与する腕輪を付けていても、混沌の悪魔と戦うのは命懸けになる。──彼女ももっと場数を踏めば、いつの日か仲間数人と共に上級難度の冒険に出て、混沌結晶を持ち帰るような成果を上げてくれるだろうか。

「そうなるよう、俺も力を貸してやらなければ」


 まずはラティフィスの依頼をこなそう。──といっても、今日は意匠を決定し、ある程度の形を作るだけだ。

 火竜の角と削った骨を組み合わせて竜皮で補強し、先端に核となる魔法珠オーブを取り付けるのだが──この魔法珠の素材は魔力結晶、混沌結晶、四つの精霊結晶と霊晶石を一つに結晶化させた物になる。

 これが失敗する確率が高い「四大精霊の加護」の付与を、成功しやすくなる為の魔法珠となるはずだ。

 ただ、この魔法珠を作る作業自体も、失敗を招きやすいのだが。


 だがそれでも、四大精霊の加護を封入するなら、これくらいの触媒しょくばいであった方が、効果も高くなるだろう。

 杖の本体はほぼ加工が済み、杖のおおまかな形を作り出す事は出来たが、魔法珠の作製には気力と共に、魔力も万全の状態にしてから作るべきだと考えた。慎重に一つ一つの作業に取り組まなければ、高位錬成を成功させるのは難しいのである。

「いまから胃が痛くなっても仕方ない、回復薬を飲み、軽く昼食を取ろう」

 ケベル達が帰って来たので、俺は宿舎に戻り、食事にする事にした。




 宿舎の庭では旅団員が訓練に励んでいる。昨日よりもいくぶん落ち着いた感じで、今日は動き出しや回避動作などの細かな部分について、レオが説明しているのを周囲に集まって聞いている。

 カムイやリトキスも真剣に聞いていて、対人戦闘にも慣れたレオからわずかでも、その力の一端を理解できればという気持ちでいるのだろう。

 俺は彼らの背中を見ながら、ちらりとレーチェの姿を確認する。

 すると彼女もこちらを見ていて、俺が視線を合わせると慌ててそっぽを向くのだった……


 食事は簡単なもので済ませた。

 それと回復薬も飲み、午後の仕事に移る。

 いくつか依頼のあった強化錬成の仕事を済ませると、四大精霊の加護を付与する為の魔法珠を作り出す素材を確認しておく。

 ラティフィスの持って来た素材は、二回分の量はちゃんと用意されていた、一回は失敗する事が許されている──という意味ではない。

 二回の機会をやるから成功しろ、という意味だ。


 だがそれでも失敗し、素材が失われると冒険者なら知っているのだ。自分で経験していなくとも、多くの先達せんだつからそうした話を聞いた上で、高位錬成をしようと決断したのだから。

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