新人達の装備を用意する
ブックマーク1500超え、ありがとうございます~
せっかくなので、水曜日に次話を投稿しようと思います! まあ日常回なんですがね……
翌日、いつもの取り組みを終え、宿舎に戻ると──階段からリーティスが降りて来た。どうやら姉と同じ部屋で眠ったらしい。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
彼女が一階に降りてそう言うと、彼女の足下で子猫が「ニャァ──」と挨拶をした。
リーティスは姉とは違い猫が好きなようで、子猫を撫でて抱き上げたり、頬ずりしたりしている。
さて、食堂へ行こうか。そう声を掛け、彼女と共に食堂へと向かう。
今日の予定は錬金鍛冶の作業に取り組む事だった。
朝食を食べ終えた俺は、すぐに鍛冶場へ向かい、軽硬合金の胸当てや籠手などを錬金強化する作業に入った。
鍛冶屋の一角で売られていた商品も必要であれば、旅団員の為に利用してしまおう。別に販売利益を当てにして置いてある訳でもないのだから。
戦士用の装備から作ろうと考え、長剣と大剣、それに槍も用意する。
エクスダインやローレンキア、リグザミトとアリスシア。まずはあの四人に合う防具を用意し、それに防御力強化などを付与する。──もちろん硬化に劣化防止も付けて、新米の彼らに有益ないくつか性能を持たせるのだ。
すでに作ってある防具に錬成台で素材を使い、効果を付与するだけなので、仕事の数は多かったが、正午までには防具一式を人数分、錬成させる事が出来たのだった。
「オーディスさん、僕も手伝っていいですか?」
ケベルが言うと、サリエも「よかったら装飾品のいくつかに、魔法強化の力などを付与した物を作っても……」と言ってくれた。
「そうだな、新米の力を底上げし、冒険で役立つ力を付与した物を贈りたいからな」
今まで訓練で辛い思いをしてきた彼らに贈る、新たな冒険という旅立ちへの餞別。
出来れば彼らに怪我なく、無事に帰って来てほしいものだ。
魔法使いのブラナラッハとアローレには鎖帷子と法衣、腕輪に短刀や杖を用意する。
弓も強化しておこう、いざという時に用意してなかった、では済まないからな。
ケベルには鎖帷子に錬成強化をしてもらい、サリエには彼女の作った指輪などに効果を付与してもらう。──彼らも初級から中級程度の錬金術なら、かなり効果の高い錬成を行えるようになっていた。
成長いちじるしい二人の徒弟を見守りながら、俺はカムイに与える新たな剣の構想を練る為に、研究室での作業に入る。──ある程度は考えてあるが実は、魔剣の性質と、混沌結晶を分解して解析した事で、この二つの物に共通する性質を見出したのだ。
「もしかすると自分の力で、魔剣を鍛造する事が出来るようになるかもしれない」
今までは異界の敵から手に入れるくらいしかなかった魔剣を、自分の手で作る事が出来るかもしれないのだ。
理の違う力と思っていた魔剣を、まったく同じとまではいかなくとも、複製を作る事が出来たなら、いずれはフォロスハートの技術者から、魔剣を自在に創り出す者が現れるだろう。
混沌鉄鋼と混沌純結晶を用意し、魔法でそれらを擬似的に組み合わせて錬成する作業を行う。他の金属や各種の精霊結晶などとの組み合わせも試して数時間、集中してそうした取り組みに励む。
ケベルが恐る恐る研究室のドアを叩いて、昼食に行ってもいいかと尋ねてくる。
「あ、もうそんな時間か、いいぞ。俺が店番をしておく」
今まで得た情報を紙に記し、それを手にして鍛冶場の方へ戻った。幸いというか、客の姿はない。
二人の徒弟が旅団員の為に錬成した物を確認し、それらを纏めて置いておくと、椅子に腰かけてさらなる探求を続ける。──精神と思考、それらを魔法で纏め上げた、解析と作成を行う意識の小部屋。
もう少しで魔剣を創り出すのに必要な素材と、法則が得られそうだと感じている。大まかな組成は理解したが、それに精霊力や能力強化などを組み込ませられるかが問題だ。
じっくりと魔法を使って、精神内で魔剣の構成要素の把握に努める。
どれくらいそうしていたか、自分でも分からない。あまりに集中していたので、自分の状態に気づかなかった。
「危険ですよ」
ぽん、と肩に手が置かれ、俺の意識が現実へと引き戻される。──危なかった、あまりに魔法への集中を行い続け、精神虚脱を起こしかねないほど、魔力と精神力を使っていたのだ。
「や、……これは、すまない。ありがとう」
肩に手を乗せる人物を見ようとするが、視界がぼやけて、相手が男か女かも分からない。
頭を左右に振り、机の引き出しから魔力回復薬を取り出すと、ぐびぐびとそれを一気に飲み干す。
「ぷはぁ──っ」
パンパン、と両手で頬を叩き、気合いを入れる。
「やあ申し訳ない、お客さんかな?」
その相手を見ると、どうやら女の──魔法使いの様だった。少なくとも剣や槍を使う体ではないだろう。
「ええ、ここのお店に錬金鍛冶師のオーディスワイアという人に作って欲しい物があって……もしかして、あなたが?」
「そうです、俺がその錬金鍛冶師です」
なんだか「へんなおじさん」的な挨拶をしてしまったが、彼女には伝わらない事だった。
彼女は二十代前半くらいの年齢の魔法使いだろう、重々しく頷きながら「それにしても凄い集中力ですね」と口にして、上級魔法使いでもあそこまで入り込んで、意識を集中させるのは難しいのでは、などと言う。
「ちょっと研究をね……それで、どういったご用件でしょうか?」
彼女は肩に掛けた麻袋をテーブルに置き、中から様々な結晶を取り出した。四種類の精霊石や霊晶石、魔力結晶、それに混沌結晶もある。──見た目は若いのに、相当な実力を持つ魔法使いだという事だろう。
「これらの素材を使って、魔法の杖を作って欲しいのです」




