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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

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強壮薬と姉妹

高い評価をしてくれた人に感謝します。

たくさんのブックマークも嬉しいです。ありがとうございます!

「それではいただきますわ」

 リーティスはそう言って小さな薬瓶を口にし、中身を一気に飲み干す。続けて水を飲み、口に残る苦い薬の味を洗い流そうとする。

「苦い……ですわ」

「それは我慢だ」

 俺は少女の気の流れに注目して見ていた。

 渋い顔をしている少女からは副反応などは出ていないようだが、彼女の体に浸透しんとうする成分によって気の流れが活発になり、健康な状態に身体が調整していくはずだ。

 ……まだ時間が掛かるようだったが、姉の方は何事もなかったのを見て、ほっとした様子を見せる。


「おかしな事にならなくて良かったですわ」

「おいおい、今までだっておかしな事なんて何も起こらなかっただろう」

「以前も妹は、新しい強壮薬とやらを試して、急に発熱したりしたんですのよ」

 そう言って心配そうに妹の隣に座るレーチェ。

 俺は彼女に押し退けられ、立ち上がる事になった。

「しばらく様子を見よう。たぶん大丈夫だと思うが、気の流れが乱れるようなら──リーファに頼んで治癒してもらうといい」

 妹はおなかの辺りに手をやると「この辺りがぽかぽかしてきましたわ」とつぶやく。

「それは薬の滋養効果が身体に広がっていくからそう感じているんだ。その効用と同時に気の流れも合わされば、あとは身体が自動で正常な状態へと活動するはずだ──」

 まあ病弱な場合は、数日から数週間ごとに薬を飲むといいかもしれない。と説明すると、妹は改めて感謝を口にする。


「ありがとうございます、だいぶ体の調子が良くなってきたように感じますわ」

  彼女の状態は正確なところは彼女にしか分からないが、気の流れが先ほどよりも大きな流れとなって、体を循環し始めたのは確認できた。

「大丈夫そうだな、あとは気の流れがいつまで安定していられるかを確かめるといいだろう」

 姉も「さすがですわね」とめ言葉を口にして、妹の最近の回復ぶりは「生命の天輪護符」を身に付けるようになってから、目覚ましく良くなったと語る。

「それはなによりだ」


 集まって来た仲間達に妹を紹介するレーチェ。

 わやわやと周囲を遠巻きに囲んでいた連中が二人の女を見比べて、似ているとか似ていないとか話し出す。

 どちらも美人と言える顔立ちだが、レーチェは体を鍛えているし、胸も大きいが、リーティスの体は細くて胸もそこまで大きく成長してはいない。

 たくましい美女戦士と、線の細い深窓しんそうの美少女という感じだ。


 楽しげにリーティスは、ユナやエアネルと話していたが、皆は時間になると訓練に戻る事になった。




 姉がリトキスと戦闘訓練を始めると、彼女はこんな事をしゃべり出す。

「お姉様はリトキス様と訓練をなさっていましたけれど、一度も有効打を入れられた事はありませんでしたわ。今もそうなのでしょうか?」

「ん──、まあな。だがこの前ついにリトキスから一本うばったんだ。これからはあの二人の闘いも、実力の拮抗きっこうしたものになるかもしれないな」

 そう話すと少女は「まぁ」と驚いたようだ。

「リトキス様は一対一の闘いにおいて、負けた事の無い方だと聞いていますわ。そんな方に迫るほどの実力を持つようになるだなんて、お姉様は本当に冒険者として努力されているのですわね」


 離れた場所で始まった二人の闘いを、真剣な表情で見守るリーティス。

「ところでオーディスワイア様は、姉をどう思われますか?」

 少女はこちらを見ずに、訓練の様子を見ながら口にする。

「どう……とは?」

「もちろん異性として、伴侶はんりょとしてどうですか? という意味ですわ」

 俺は少女の真意を量りかね、彼女の横顔を見下ろしてしまった。──椅子に座ったままの彼女は、果敢かかんにリトキスに挑んでいる姉を応援しながら、手を固く握りしめている。


「異性として──まあ、いい女だと思うよ」

「あら、それなら脈あり、という風に受け取ってよろしいのでしょうか」

 いやいや、と思わず声を掛ける。

「脈ありも何も、レーチェがそんな事を許すはずがないだろ……」

 俺が呟いた言葉に、いえいえと──今度はリーティスが声を上げた。

「そんな事ありませんわ、お姉様はあなたの事をたいへん気に入っているのは間違いありません。もちろん旅団長として尊敬しているだけではありませんわ、あなたの事を殿方として気になっている、と言ってよろしいでしょう」

 ふぅむ……と思わず考え込んでしまった。

 姉と妹の関係からしか分からない部分があるのだろうか、それにしてもまさかレーチェの妹から、こんな話を切り出されるとは……


「いやぁ……やっぱり無理があるな」

「なにがです?」

「レーチェが俺を信頼しているのはあくまで──」

「団長として、ですか? もちろんそうでしょう。そして錬金鍛冶師として旅団や、フォロスハートに対する貢献こうけんなど──そうした活動についても、お姉様はいつも感心してらっしゃいます」

 しかし、と妹は告げた。

「お姉様の態度を見ていれば、あなたに好意をもっているのは明らかだと思いますが? ──いえ、そうですわね。()が旅団の方々の前で──そうした顔を見せる事はないのでしょう。ですが私には分かりますわ、姉の中にある、確かな恋心というものが」


 急に口調までも変わって、そんな事を説明する。恋心……それは本当なのだろうか?

 妹の口から姉の恋愛感情について語られ、その相手が俺だという。思いがけない言葉を聞き、顔が熱くなった気がして手で扇ぐ。


 わっと歓声が聞こえ、レーチェがリトキスを追い詰めたのが見えた。小さな正方形の線の中で闘っている二人、線際に追い込まれたリトキスはレーチェの攻撃を剣で受け流し、なんとか回り込もうとしていた。

「がんばれっ、がんばれっ」と姉を応援するリーティス。

 椅子に座ったまま、拳をにぎって上下に振る。

 妹が見ている所為せいだろうか、今日のレーチェはいつも以上に苛烈な、攻める姿勢を見せている。


 強く、美しい女だと改めて思う。

 そんな相手に想われる──それが事実なら、それ以上に嬉しい事などないだろう。……たぶん、俺もレーチェには、旅団の仲間として以上の想いをもっているだろうから。


 場外を示す線の手前で踏み止まり、盾を構えて突進してきたレーチェの動きを見て、横へ回り込もうとするリトキス。

 だが彼女のその動きは誘いだった。

 反撃にきたリトキスの動きに合わせて剣をぎ払い、相手の攻撃を盾で受けながら、胴体に木剣を叩き込む。

 レーチェがリトキスから、二度目の勝利を勝ち取ったのだ。


 それを見ていたリーティスが手を手を叩いて喜んでいる。

 姉はこちらを見ると剣を振り上げて、妹に応えていた。

レーチェの妹リーティスの予想外な言葉。

オーディスワイアは改めてレーチェを意識しはじめ~

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