表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

356/585

少女の正体と招待

なんだかんだと、毎週投稿してましたが、これから先は毎週というわけにはいかないかもしれません~

応援、よろしくお願いします。


誤字報告ありがとうございました。

 俺の困ったような様子を見て、少女は口元を押さえて品良く笑う。

「ごめんなさい、あなたがオーディスワイア様でしょうか?」

「ああ、……どこかで会ったか? ──いや、そんなはずはないか……」

「さあ、どうでしょうか」

 少女は含み笑いをしながらニコニコと嬉しそうな笑顔を見せる。不思議な事にその笑顔を見ると、なんとなくそうした態度も許せてしまう──そんな少女だった。


「それで、何かご用かな?」

「ええ、まあ……ですがその前に、お仕事を見学させてもらってもよろしいでしょうか?」

 少女は鍛冶場の奥にある炉や錬成台に視線を向ける。

「構わないよ」

「ありがとうございます」

 炉の前ではケベルが金属を溶かし、短剣を打とうとしているところだ。

 彼女はそちらに向かって行ったが、しばらくすると炉の熱気に当てられてこちらに退避してきた。


「す、すごい暑さなのですね」

 あまりの暑さに目を回しているようだ。

「もちろんだ、金属を溶かすんだからな」

 錬成台の横に置かれた冷房装置を使い、冷たい風を送る。

「涼しい……こういった機械も作られているらしいですね? すごい技術力ですわ」

「はは……ありがとう」

 少女のめ言葉を聞きながら、このお嬢様っぽい言葉(づか)いになんとなく覚えがあった。


「あと──これを、ありがとうございました」

 そう言って少女は、首からかけた物を服の中から取り出して見せる。それは銀の鎖に付けられた「生命の天輪護符」だった。

「ああ、そうか。レーチェの妹だったか、どこかで見た覚えがあると思っていたが、姉の面影がある」

 すると彼女はにっこりと嬉しそうな笑顔を見せる。

「この首飾りのおかげで、ずっと体の調子がいいのです。本当にありがとうございました」

 少女──レーチェの妹は改めて頭を下げた。


「それで、ぇえと……名前はなんだったかな?」

「リーティスです、リーティス・ウィンデリアと言いますわ」

 そうだった、レーチェから聞いた記憶がある。

 体の弱い妹の為に生命の天輪護符を作ってほしいと訴えてきたレーチェ、また強壮薬についても有効な物はないかと言われたのだった。

 回復薬や強壮薬については管理局の方でも研究されているが、新しいものが完成したというのは聞いた事がない。

 俺も錬金術を用いての調薬をしてみたが、おそらく管理局の作る薬と大差ないだろう。

 本人に合う薬かどうかを確認しながら調整した方がいい。


「ところで強壮薬を飲用しているという事だが、どんな薬を?」

 突然の問い掛けに首をかしげるリーティス。

「ああ、ごめん、ごめん。君の姉さんに頼まれていた強壮薬の調薬について考えていたんだ。いくつか試験薬を作ったんだが、もし良ければ試してみて、どういった組み合わせの薬がいいのか確認したいと思って」

「ああ、そういう事ですの。……でも最近は、この生命の天輪護符のおかげで、薬を飲むのは週一回くらいに落ち着いてきたのですわ」

 少女はそう言うと、ぽんと手を叩いて肩から下げた小さな鞄から木箱を取り出し、その箱の中から薬瓶を一本取り出した。


「これが服用している強壮薬ですわ、よろしければどうぞ」

「ん、ちょっと失礼……」

 俺はその小瓶を手に取ると、その内容物を確認する。鑑定に掛け、細かい組成を紙に書き込んでいく。

「これを飲んで、副作用とかは無いんだよね?」

「ええ……ですが、昔は一日一回は服用していたので、たまにですけど呼吸が速くなったりして、苦しくなる事もありましたわ」

「なるほど」俺は薬瓶を返すと、強壮薬の成分を書き出した紙を折りたた


「そうだ、宿舎の方に強壮薬の試薬が保管してあるんだが、レーチェの訓練を見学する間に、その試薬の一つを試してみないか?」

 俺が彼女の顔を見ながらそう言うと、少女はにっこりとした笑顔で「はい」とだけ答えた。

 どうもあの姉の妹とは思えないような素直さ、優しげな印象を受ける。──当然といえば当然だ。レーチェとリーティスは別人なのだから。

「では行こう」

 俺は立ち上がり、彼女を連れて宿舎の方へ向かう。




「すぐ近くと聞いていましたが、もしかして……」

 少女は何やら騒がしい壁の向こうを指し示している。

「そう、この向こうだ」

 俺は通りの先にある建物に向かって数歩あるいて行き、扉を開けて中へと入る。

 その庭では十数人の団員達が戦闘訓練を再開していた。木剣や木槍を手に闘う冒険者達、これほど多くの冒険者を見たのは初めてだったのだろう。リーティスはその訓練の気迫に押されている様子だ。


「え──と、あの椅子にでも腰かけていてくれ」

 木製の椅子は休憩用に置かれたものだろう。

 彼女をそこに座らせると、俺は宿舎の方に戻り、食料庫にある冷蔵庫にしまった薬瓶を取りに行く。

 それとコップに入れた水を手にして戻ると、ちょうど訓練は休憩に入るところだった。


「リーティス! どうしてここに⁉」

 レーチェが妹に気づき、駆け寄って行く。

 周りに居た仲間達から「なんだなんだ」と奇異の視線が彼女らに向けられる。

「どうして──と言われましても。一度、旅団でのお姉様の様子を見たいと思っていましたので」

 少女はにこにこと姉に微笑みかけている。

「オーディス団長、どういう事ですの?」

 木剣と盾を芝生の上に置き、彼女はまるで怒っているみたいに眉を寄せる。

「うん、訓練のついでに、強壮薬を試してもらおうと思ってね」

 俺は少女の横に腰かけると、彼女の手を取り、試薬の入った小瓶を開ける。


「いったい、何を……」

 レーチェが何かを言おうとするのをリーティスが制止する。

「大丈夫ですわ、お姉様」

 俺は二つの試薬を少女のてのひらに垂らし、その上に俺の手を重ねて気を流す。


 人体の変化というより、体内の生命維持に直結する気の流れの影響をうかがっていたが、たぶん飲まないと正確な事は分からない──だが、一つの強壮薬の方が効果があるだろうとにらんだ。

「ではこちらを飲んでみてくれ」

 そう言いながら薬瓶と水の入ったコップを小さな木のテーブルに乗せる。

この娘の登場により、旅団に変化の風が吹き込む⁉

次話で、ある人たちの関係に急展開が!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ