少女の正体と招待
なんだかんだと、毎週投稿してましたが、これから先は毎週というわけにはいかないかもしれません~
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俺の困ったような様子を見て、少女は口元を押さえて品良く笑う。
「ごめんなさい、あなたがオーディスワイア様でしょうか?」
「ああ、……どこかで会ったか? ──いや、そんなはずはないか……」
「さあ、どうでしょうか」
少女は含み笑いをしながらニコニコと嬉しそうな笑顔を見せる。不思議な事にその笑顔を見ると、なんとなくそうした態度も許せてしまう──そんな少女だった。
「それで、何かご用かな?」
「ええ、まあ……ですがその前に、お仕事を見学させてもらってもよろしいでしょうか?」
少女は鍛冶場の奥にある炉や錬成台に視線を向ける。
「構わないよ」
「ありがとうございます」
炉の前ではケベルが金属を溶かし、短剣を打とうとしているところだ。
彼女はそちらに向かって行ったが、しばらくすると炉の熱気に当てられてこちらに退避してきた。
「す、すごい暑さなのですね」
あまりの暑さに目を回しているようだ。
「もちろんだ、金属を溶かすんだからな」
錬成台の横に置かれた冷房装置を使い、冷たい風を送る。
「涼しい……こういった機械も作られているらしいですね? すごい技術力ですわ」
「はは……ありがとう」
少女の褒め言葉を聞きながら、このお嬢様っぽい言葉遣いになんとなく覚えがあった。
「あと──これを、ありがとうございました」
そう言って少女は、首からかけた物を服の中から取り出して見せる。それは銀の鎖に付けられた「生命の天輪護符」だった。
「ああ、そうか。レーチェの妹だったか、どこかで見た覚えがあると思っていたが、姉の面影がある」
すると彼女はにっこりと嬉しそうな笑顔を見せる。
「この首飾りのおかげで、ずっと体の調子がいいのです。本当にありがとうございました」
少女──レーチェの妹は改めて頭を下げた。
「それで、ぇえと……名前はなんだったかな?」
「リーティスです、リーティス・ウィンデリアと言いますわ」
そうだった、レーチェから聞いた記憶がある。
体の弱い妹の為に生命の天輪護符を作ってほしいと訴えてきたレーチェ、また強壮薬についても有効な物はないかと言われたのだった。
回復薬や強壮薬については管理局の方でも研究されているが、新しいものが完成したというのは聞いた事がない。
俺も錬金術を用いての調薬をしてみたが、おそらく管理局の作る薬と大差ないだろう。
本人に合う薬かどうかを確認しながら調整した方がいい。
「ところで強壮薬を飲用しているという事だが、どんな薬を?」
突然の問い掛けに首を傾げるリーティス。
「ああ、ごめん、ごめん。君の姉さんに頼まれていた強壮薬の調薬について考えていたんだ。いくつか試験薬を作ったんだが、もし良ければ試してみて、どういった組み合わせの薬がいいのか確認したいと思って」
「ああ、そういう事ですの。……でも最近は、この生命の天輪護符のおかげで、薬を飲むのは週一回くらいに落ち着いてきたのですわ」
少女はそう言うと、ぽんと手を叩いて肩から下げた小さな鞄から木箱を取り出し、その箱の中から薬瓶を一本取り出した。
「これが服用している強壮薬ですわ、よろしければどうぞ」
「ん、ちょっと失礼……」
俺はその小瓶を手に取ると、その内容物を確認する。鑑定に掛け、細かい組成を紙に書き込んでいく。
「これを飲んで、副作用とかは無いんだよね?」
「ええ……ですが、昔は一日一回は服用していたので、たまにですけど呼吸が速くなったりして、苦しくなる事もありましたわ」
「なるほど」俺は薬瓶を返すと、強壮薬の成分を書き出した紙を折り畳む
「そうだ、宿舎の方に強壮薬の試薬が保管してあるんだが、レーチェの訓練を見学する間に、その試薬の一つを試してみないか?」
俺が彼女の顔を見ながらそう言うと、少女はにっこりとした笑顔で「はい」とだけ答えた。
どうもあの姉の妹とは思えないような素直さ、優しげな印象を受ける。──当然といえば当然だ。レーチェとリーティスは別人なのだから。
「では行こう」
俺は立ち上がり、彼女を連れて宿舎の方へ向かう。
「すぐ近くと聞いていましたが、もしかして……」
少女は何やら騒がしい壁の向こうを指し示している。
「そう、この向こうだ」
俺は通りの先にある建物に向かって数歩あるいて行き、扉を開けて中へと入る。
その庭では十数人の団員達が戦闘訓練を再開していた。木剣や木槍を手に闘う冒険者達、これほど多くの冒険者を見たのは初めてだったのだろう。リーティスはその訓練の気迫に押されている様子だ。
「え──と、あの椅子にでも腰かけていてくれ」
木製の椅子は休憩用に置かれたものだろう。
彼女をそこに座らせると、俺は宿舎の方に戻り、食料庫にある冷蔵庫にしまった薬瓶を取りに行く。
それとコップに入れた水を手にして戻ると、ちょうど訓練は休憩に入るところだった。
「リーティス! どうしてここに⁉」
レーチェが妹に気づき、駆け寄って行く。
周りに居た仲間達から「なんだなんだ」と奇異の視線が彼女らに向けられる。
「どうして──と言われましても。一度、旅団でのお姉様の様子を見たいと思っていましたので」
少女はにこにこと姉に微笑みかけている。
「オーディス団長、どういう事ですの?」
木剣と盾を芝生の上に置き、彼女はまるで怒っているみたいに眉を寄せる。
「うん、訓練のついでに、強壮薬を試してもらおうと思ってね」
俺は少女の横に腰かけると、彼女の手を取り、試薬の入った小瓶を開ける。
「いったい、何を……」
レーチェが何かを言おうとするのをリーティスが制止する。
「大丈夫ですわ、お姉様」
俺は二つの試薬を少女の掌に垂らし、その上に俺の手を重ねて気を流す。
人体の変化というより、体内の生命維持に直結する気の流れの影響を窺っていたが、たぶん飲まないと正確な事は分からない──だが、一つの強壮薬の方が効果があるだろうと睨んだ。
「ではこちらを飲んでみてくれ」
そう言いながら薬瓶と水の入ったコップを小さな木のテーブルに乗せる。
この娘の登場により、旅団に変化の風が吹き込む⁉
次話で、ある人たちの関係に急展開が!




