表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第八章 新たなる指標

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

352/585

若手の戦闘訓練

アプリで小説をダウンロードしている人は、ちゃんとログインしてブックマークをしてください。

よろしくお願いします。

 台車を引いて鍛冶屋まで戻ると、素材屋で購入した商品を倉庫に運び入れる。

 方解石は倉庫の棚にたっぷりと保管されている、これはだいぶ前にナンティルから買い入れた物だ。硝子ガラス製作にと買ったのだが、石英が無くなるとは油断していた。

 作業場ではまだ二人の徒弟が働いていた。

 サリエは接客中で、装飾品の作製依頼を受けている様子だ。テーブルを挟んで椅子に座り、真剣に話し合っている。

「こちらの意匠デザインであれば金と銀を……」

 そんな風に客に話しかけていた。


 台車を片づけると、俺は研究室に入って混沌から得られた情報について考え、監視飛翔体や通信技術についてもう一度、どうするのがフォロスハートの為になるかを考える。

 なんでもかんでも自由に使えるのがいいと言うのは間違いだ。規則がなければ車は危険な物になるし、活動力エネルギーも一部の者に独占されたりもする。通信技術もそうだ、必要な場合にのみ使用できるだけで本来は充分なのだ。

 いくつかの考えをまとめるとそれを箇条かじょう書きにし、俺は宿舎の方に戻る事にした。




 庭ではいくつかの集団に分かれて戦闘訓練をしているが、その中にカムイの姿もあった。今はレオシェルドに指導を受けているようだ。

 木剣を手にした二人の元へ行くと、動きの一つ一つに細かなダメ出しをしているレオ。

「ちがう、そうじゃない」

 レオは鈴木○之の曲名みたいな言葉を口にし、軸足の移動や体移動をするのにも、その先の展開を考えながらおこなうよう指示を出す。

「次の動きがとりにくくなるのは危険だ、あまり大きな動きはするべきじゃない、細かな足運びに体重の移動、そこに注意すべきだ」

 厳しいレオの指摘に「はいっ」と素直に答えるカムイ。


「攻撃の前にフェイントを入れるのも重要だぞ」

 俺が声を掛けるとレオもうなずきながらこちらを見る。

「そうだな、直線的な接近は相手に動きを読まれやすい。必ず横へ移動する意識を相手に植え付け、どこから攻撃が飛んでくるか悟らせない事も重要だ」

 それを逆手に取った戦略もあるが、と言いながら腰帯ベルトに差していた木剣を俺に投げる。

「せっかくだから、フェイントへの対応策を見せてやってくれ」などと言いながら手にした木剣を構えるレオ。

「おいおい」

 俺は慌てて木剣を構える。


 レオは直線的な動きで俺に近づいて来たが、目の前で身体を左右に振る。右に左に地面を蹴って素早い動きで攪乱かくらんする動き。

 足を移動させないで防御する動作を見せろと言うのだろう。

 俺は右手から攻撃してきたレオの攻撃を木剣で弾き、身体の横へ攻撃を受け流す。

「うん、にぶってはいないようだな」

「なんだ、俺を試したかっただけか」

 間合いを取り直したレオの言葉に答えていると、離れた場所から突きを打ってくる。その剣先を木剣で受け流すと、踏み込む動作と共に大きく剣をぎが払ってきた。

 それに対しこちらも半歩踏み込みながら、相手の剣を押し込むみたいに下から上へと斬り上げる。

 レオの胸元の革鎧を叩く木剣。

 レオは攻撃を受け流された瞬間に後方へ下がろうとしたが、俺が踏み込んでいた分だけ攻撃が深くなり、胸を切り裂かれる格好になった。


「さすがだな」

 相手の剣を振り抜く速度よりも速く相手の剣を受け止めながら、外側から剣を振り抜く動きが必要な反撃。咄嗟とっさに行えたのは身体が覚えていたからだろう。

「あっぶねぇな。こっちは鎧を着けていないんだ、少しは加減しろ」

 俺の言葉を無視して今の反撃についてカムイに説明しながら、相手の武器を受け止めつつ、攻撃を押し込む方法について細かな指示を出す。「かなり対人戦闘に慣れていないとこうした動きは出来ないだろう。だがこれをものにすれば多くの戦闘で優位に立てるはず。短期間では難しいかもしれないが、まずは今オーディスワイアが見せた動きを真似する気持ちでやってみよう」

 相手の踏み込みに合わせてこちらも踏み込む……そんな事をつぶやきながら、カムイは頭の中と実際の動きで確かめようとする。


「まあ初めはゆっくりとした動きでやってみればいい。段々と速くしていって慣れる事だな。これが出来るようになれば、白銀騎士の騎士長階級(クラス)も一人で倒せるかもしれないぞ」

 俺の忠告アドバイスに「わかりました」と返事をするカムイ。ずいぶん本腰を入れて武闘大会にのぞむみたいだ。


 庭では他にも、まだ冒険には出られない新人達などが訓練を続けていた。基礎的な木剣と革の盾を使った攻撃と防御の練習、槍を使った練習など。地味だがこうした練習の積み重ねで体力をつけ、筋肉を慣らしていき──攻撃や防御で使える筋肉を育てていくのが大事だ。

 いきなり武器を手に入れたって、それを使いこなす筋肉がなければまともに使えないし、すぐに筋肉痛を起こしてしまうだろう。それでは冒険者にはなれない。




 俺は自室に戻って、まずは武闘大会までの予定と、今後の旅団活動や鍛冶屋の状況、管理局との共同作業や神騎兵シュルトヴァーレンや監視飛翔体などについて考えてみる事にした。

「ウニャァ──」

 玄関で靴を脱いでいると、ライムが近寄って来て俺の体に頭や身体をこすりつけてくる。

「なんだなんだ、かゆいのか」

 床にお腹を付けた彼女の背中をいてやり、首や頭を撫でてやる。するとライムは目を閉じて気持ち良さそうに、じっと動かなくなった。

 背中をさすってやると、今度はごろんと転がってお腹を見せるので、白い腹をくすぐってやると、子猫がするみたいに手で掴んで指をかじろうとする。


「おっと、遊んでる場合じゃない」

 俺が立ち上がるとライムは不満そうな鳴き声を上げた。

「すまんすまん、忙しいんだ。またな」

 そういえば猫が自分で背中を掻けるような、そんな道具も必要かもしれない。

 部屋に戻った俺は机に向かうと、子供達の遊具や猫用の小道具について考え、それの発想をいくつか紙に描き、形や素材について記しておく。


 そうこうしているうちに旅団の仲間達が帰って来たようだ、廊下が騒がしくなり、誰かがドアを叩いて俺を呼ぶ。

 ドアを開けて部屋を出ようとすると、そこにはエウラが立っていた。彼女は「明日から冒険には出ず、訓練をしてもいいですか」と言ってきた。

「冒険に出る出ないは旅団員の自由だが、いったいどうした」

「やはり『斬破』を使いこなせるようになってから冒険に出たいと思います」

 今日の冒険で痛感したのだという彼女は真剣な表情をしていた、魔法剣を使えるカーリアやレーチェとの差を感じたのだろう。

「そうか、まあカムイもしばらくは訓練だけをさせるつもりだったから、訓練を重視するのはいいことだと思うぞ」

 俺は彼女を応援しつつ、食堂へ向かう事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ