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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第一章 錬金鍛冶の旅団

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旅団名の決定と五人目の団員 ー素材屋再びー

 全員で食事を取りながら旅団の名前を考えようとなったが、ほとんど決まってしまったようだ。

「『黒き錬金鍛冶の旅団』これでいいですわね?」

「団員が増えたり実績を上げる毎に白、黄、赤と変わっていく訳か──なら最後は金だな。哲学者の石で全ての卑金属は黄金に変容するらしいからな──けど、赤系統はフレイマ関係の旅団が多いし、黒や金属系統はゲーシオン(地の神の住む都市)に多いけどな」


 そう言うとレーチェはその考えが気に入ったらしい。「あら、黄金に、いいですわね」と機嫌良くレケット(パイ生地を器状にして中に乾酪チーズや肉や野菜を入れて天火オーブンで焼く料理。この世界のあらゆる所で作られている)を口にする。

 簡単な食事を済ませると、お嬢様は白葡萄酒を飲みながら言う。


「あ、それと団員を一人追加して頂けます? このリーファも団員として登録して欲しいのです」

 俺は実力者が入ってくれた方が助かるが、いいのかと本人に尋ねると「構いません」との返事だった。

「彼女とは三度冒険に行きましたが、実力は私が保証しますわ」

「いや、お前に保証されなくても分かってるから」俺は冷たく言ってレーチェを怒らせると、ユナとメイの宿舎を購入するのをレーチェらに任せ、拠点を鍛冶屋に置く事を決定し、明日になったら旅団の登録を行う事にしてこの日は解散する。


 *****


 旅の疲れも出始めた頃に鍛冶屋に戻って来ると、鍛冶場の入り口前に、猫と大荷物を背負った猫獣人フェリエスが居るのが見えた。

「お、出たな業突く素材屋」

 猫とたわむれていた猫獣人の女は立ち上がり、「誉め言葉をありがとにゃん」と、いらっとくる言い方で返してきた。


 ちょっと汚れた白い猫は、そんな素材屋ナンティルの脚にじゃれついている。

「こらこら、そんなにじゃれつくと体が汚れるぞ」

「どういう意味にゃそれぇ!」

 今日も彼女は元気だった。


「にゃに? 旅団を造るにゃ? オーディスが? へえ──」

 彼女はそう言いながら重い荷物を降ろし、鍛冶場の中までついて来た猫と遊んでいる。

「鍛冶場を開くのも躊躇ためらってたようだったにゃのに、どういう心変わりにゃ?」

「色々とあるんだよ。まあ俺は変わらずここで錬金鍛冶師を続けるからな。今回はどこの都市から仕入れて来た物だ?」


 彼女がテーブルの上に置いていった物は、赤い金属の延べ棒だった。

「重かったにゃぁ──! 『大地の血塊(アウラバルカム)』一本八千ルキに負けとくにゃ」

「いや、それ定価だろう」

「にゃーに言ってるにゃ、運ぶの大変だったにゃ」

「それはそうだろうが」

「あ──脚が疲れたにゃぁ〜~、腰も痛かったにゃぁ~~」

「お前は老人か」

 そんなに脚が疲れたなら揉みほぐしてやろう、と言うと。

「手つきがエロいからダメにゃ」

 速攻で断るナンティル。

「ばっか、屈み込んで下着を覗くだけだよ」

「顔面を蹴る事になるけど問題ないにゃ?」


 こんなやり取りをしつつ、結局四本の大地の血塊を三万ルキで買う事になった。

「毎度ありにゃ~~。それじゃ次の品を……」

「おい、ちょっと待て。先に全部出しておけよ」

 その後も彼女の進行速度ペースに付き合わされて、結局いくつかの金属の延べ棒を購入する事になった。

大地の血塊「アウラバルカム」は創作した金属です。

ちなみに「大地の血塊」は俗称的な呼び名で本来は「真紅鉄鋼」などと表記されている(という設定です)。


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